Sunday, February 03, 2008

らっぷびと






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近所の洋食屋にひさびさに昼ごはんを食べに行ったら、メニューにチャーハンが増えていて思わず白目を剥いた。店主の味覚ではこのチャーハンは洋食的な位置づけなのだろうか? それならなぜギョーザやラーメンが無い? などと、いろいろ考えていたら食後に出されたサービスのコーヒーが冷めていた。チャーハンにもこのランチサービス・コーヒーは付くのだろうか? 今日は眠れそうにない。

WEBマガジン、THE SOURCE JAPAN ONLINEが閉鎖した。まぁそのこと自体には別に何の感慨も無い。多くの人に有用なものが残り、無用なものがなくなる、それだけのこと。潰れゆくレコード屋の件も同様で、レコード屋が潰れていくことに対して何か物言いをするまえに、デスクトップ上にあるMP3ファイルを全て削除して、i-PODを海に沈めて、CDを空に投げた後、全てをレコードに換えれば多くの店が救われる。

話がそれたけども、SOURCE JAPANやAMEBREAKなど、どのWEBマガジンにも大抵存在する「リンク」というもの、これが個人的には本日見た洋食屋のメニューくらいにどうしてもシックリこない。おそらくはユーザへの親切心から何も考えずにアーティストのブログへリンクを貼っているだけなのだろうけども、このリンクに加われる条件って何なのだろう。もしかして「売れていないラッパーは入れません」とか「シーンに属さないラッパーは入れません」とかの条件があるのだろうか。ヒップホップシーンを盛り上げよう! という意図でのWEBマガジンなのか何なのかは知らないけども、盛り上げる前に自分で村の囲いを作ってどうする。この世にはチャーハンが洋食として扱われる店もあるのだ。

この前の対談で、Boss the MCが「ドラマ」を作るのが上手いという話があったけども、今まで話題になった作品は大体その後ろに「ドラマ」があることに気付いた。"証言"然り、Buddha帰国然り、Big Joeの投獄然り、Ill Slangの全国一周然り。中にはショボい物語もあるけども、ある程度のドラマがリスナーに共有されることでヒットが生まれるという見事なこの方程式を見つけた自分を誉めてあげたい。(そういった意味では、Bossが2ndアルバムを作る前に世界へ旅をしに行ったのは必然の行為だったのかもしれない…)そしてこの私の勘が正しければ、わざわざネタ作りの為にニューヨークのゲットーに苦行のようなラッパー修行をしに行ったYing Yangこそがそのドラマの力で「売れる番」だと予想できそうな気もしないではない。

ニコニコ動画にてアニソン上でラップするらっぷびとは、別名義でも曲を作っている。「尊敬する人」をRhymesterとして、「夢」を「Rhymesterと同じステージに立つこと」とする割には、laica breezeを彷彿とさせるラップスタイルと、そのJ-RAP的な曲の嗜好が妙味なのだけども、更にはインターネットを使って人脈を広げ、PC上でマイクリレーをしていくというその次世代思考が、インターネットで全米~カナダを通じてアンダーグランドヒップホップシーンを築き上げたAnticonを髣髴とさせた。そういった意味で、「自分たちはヒップホップ素人だ」という嫉みや僻みを入れながらインターネットの可能性だけをひたすら賛美する別名義曲の客演ラッパーたちのくだりが素晴らしい。

「これが俺たちのビギナーズラップ ユノウ? 聞いてこなかったビギーや2パック
有能無能集まる烏合の衆 玉石混合 そっからスタート」

「有機栽培ラップ土臭ェ 外じゃヘタレ ウェブ内 内弁慶
うち出ねェがまたマイク掴む リプリゼント送るアット自宅自室」

「"現場"以外の"本場"なんてのは存在次第
こいつは"ネットラップ進化論"と題したい
達したい次の開かれたステージ WWW.netイッツイットイージー!」

アニメ~ゲームの音の上で、ラップをのっけていくその姿はマッシュアップ的なイリーガルさも含めてニコニコ動画にこそ相応しいが、そこに流れるコメの応援やらツッコミを眺めていると、彼のスゴさはアニメやゲームが持つ「ドラマ」を韻などのテクニカルな面を押さえつつ、リリックに落とし込めているところにあるとも言える。アニメやゲームの物語が展開されたラップへ大勢のリスナーが共感している様子に、インターネットの可能性の他に、「物語/ドラマを作る」ということに対するもう一つの可能性が見えてくるのだ。

インターネットの可能性とアニソンラップの可能性、そして日本語ラップとJ-RAPを横断するスタイルと嗜好、その全てにおいて今までの価値観から大きく外れたらっぷびとは、中華料理屋になってしまうかもしれないウチの近所の洋食屋以上には「これから先」への期待がもてる。

4 comments:

Anonymous said...

らっぷびとに対してのまともな批評は見たことがなかったのでとても興味深く読ませて頂きました。

今までBOSSなどが現実のドラマで共感を得てきたのに対して、らっぷびとはアニメという虚構のドラマをラップし、それを手に入れているというのは面白いですね。

それと一つお聞きしたいのですが、文中のリリックの曲はどこで聴けるのでしょうか?別名義のサイトの音源にそれらしきものがなかったもので…。

Anonymous said...

別名義の曲が置いてある場所に直リンするのは憚られるのでアルバムタイトルだけ教えます。>「ファーストペンギン」

該当曲はこれに収録されている"Network Perfomance"ですね。

ちなみに最近出た「素晴らしき絶望 零」もFast的な流れまで感じさせる興味深い内容です。

Anonymous said...

お答え頂きありがとうございます!

無事見つけることができました。これからも記事楽しみに読ませて頂きます。

弥勒三千 said...

ヤンキー文化とオタク文化に親和性があるのと同様に音楽の繋がりもあるのではないのか?
と、NORIKIYOの2ndを聞いたり、らっぷびとの動画を見て感じたりします。

ただ、本文にあるらっぷびとのヴァースの一番下は宇多丸さんのヴァースの作り丸出しなのがちょっと引っ掛かりました・・・
これが一番言いたかっただけですが。