Saturday, April 21, 2007

Twigy - Akasatana & You the Rock★ - Big Vip Hop





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しつこくBLASTからネタを拝借させていただきます。

「UNDERPIN」の記事で磯部涼氏が斬っていたZEEBRAの"The New Beginning"の「原点回帰」は今のタイミングでは当然の志向だと思う。"Tokyo's Finest"を出して叩きに叩かれまくったその次が「原点回帰」だというプロセスには彼の自己防御本能を感じずにはいられないが、"The Rhyme Animal"から向こう全ての作品で「シーンの外」へ与える影響を考えていつづけていたことを踏まえれば、単純な「自己防御作品」という意味合いだけではなく、POPミュージックの中で溢れかえり一般的に認知されしまった「ラップ音楽」へのカウンターの意味合いもあったには違いない。

しかし、もし「シーンの中」を牽引するという考えがあったのであれば、"The New Beginning"を原点回帰作品とするのではなく、Tokona-XやMACCHOがやっていたような音楽をつくるべきだったと確かに思う。BLASTの「THE FUTURE 10 OF JAPANESE HIPHOP」でとりあげられているような方向性にZEEBRAが先鞭をきっておけば、「シーンの中」の方向性も明確になっただろう。(それが良いことか知らんが)

ZEEBRAより下の世代は「シーンの外」に目を向けず「シーンの中」に作品を発信しつづけるきらいがある反面、ZEEBRAの世代は「シーンの中(下の世代)」に目を向けなさ過ぎる、と思ったのも「ゴージャス」は「ゴージャス」なのだけども、Twigyの"Akasatana"とYou the Rock★の"Big Vip Hop"も「シーンの流れ」とは距離がある内容だったからだ。

ベスト盤もほぼ同時期に出したTwigyとYou the Rock★は今回も示し合わせたかのようにほぼ同時期に「外国人プロデューサ」を起用して作品をドロップしたのだが、両者を並べてみると真逆のコントラストを放っているところが興味深い。

Prefuse 73の相変わらず隙間の無い排他的なビートをきめ細かく縫うTwigyのラップは、そのスキルの高さ故かビートと一体化してしまって印象を残さないが、しかしTwigyが合いの手を加えることによって、非常に特徴的なビートの上でゲスト陣を際立たせることに成功している。Prefuse 73との仕事に着目するよりは、多彩なゲスト全ての粒がキチンと立っているところに着目すべき作品。このビートに埋没してゲストを光らせるというラッパーとして一段上のTwigyの仕事を「陰」とするならば、You the Rock★は完全な「陽」、米メインストリームのポップなトラックの上で8曲の間ぶっつづけで独り気炎をはく。「言いたいことや不満はたくさんある!!」とばかりに怒鳴り散らすYou the Rock★は見事に中年病にかかっているのだけども、茶目っ気を感じずにいられないのは己の欲望に忠実すぎるリリックゆえか。「楽して金をもうけてえ!!」という気炎と「イカした女に挿れてえ!!」という気炎の間で「ふざけている場合じゃないんだ!!みんな真面目にやれよ!!」と説教をかまし、格差社会にFUCKサインを送る。その内容には何故か一切共感できないのだけども、テッカテカのコミカルビートの上で己の欲望を高らかにシャウトするその勇姿は前作"No Sell Out '05"より100万倍輝いて見えた。

しかし、ゲストを「ゴージャス」にしているTwigyと、自分の姿を「コミカル」にしてしまっているYou the Rock★。「不良性」の面でもひねくれ具合に磨きがかかったTwigyと、不良というか単にキチガイじみているだけのYou the Rock★は、やはりボタンを掛けちがえている。あと少し意図的にボタンをずらせば「シーンの流れ」にもはまると思うのだが。

Sunday, April 08, 2007

余作2 Dr. Dre presents... The Aftermath

余作とは : 音楽好きな人ならば必ず一枚は持っている「音楽として良くも悪くも無いし、音楽史的にも全く重要でない」アルバムのことである。言葉の使い方としては「このアーティストのこの作品は"余作"だろ」という感じ。アーティストのキャリアには全く必要ない作品を指す。
「アンダーレイテッド」どころか、この先も別段と評価もされずに歴史に埋もれ、押入れの段ボール箱の片隅に眠り続けるであろう余分な作品、きっとそのアーティストも記憶と記録から抹消したがっている作品をフィーチャーしていく企画。「音楽として良くも悪くも無いし、音楽史的にも全く重要でない」けど、思い入れだけは少しある作品へレビューを贈り、その存在を認めていく。






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今でこそ最高の(サウンド・クリエーターとしてだけでなく本当の意味での)プロデューサーとしての名声を完全に確立したDr. Dreだが、Death Row離脱後に設立したThe Aftermath初のリリースとなるこの"Dr. Dre presents... The Aftermath"がリリースされた当時は、「Dre終わったか?」という声が囁かれたりもした。

Snoopを筆頭に多くの新人をスターに育て上げたDREだけに、The Aftermath発足に際しても同じ事をしようとしていて、Death Row組(RBX)や旧友(King T)のような知った顔もいるが、基本的に新人で占められている。まあ、失敗作と言われてるだけあって、新人の中には一人として際立った才能は見当たらず、アルバムのベスト楽曲が、NasやB-Real、KRS Oneを招いたポッセ・カット"East Coast/West Coast Killas"という時点でレーベルの顔見せコンピとしては大失敗といって良いだろう。結局、Dr. Dre、そしてThe Aftemathが浮上するにはEminemの登場を待たねばならないわけだが・・・・。

「Dre絡みのアルバム・ランキング」などというアンケートがあればこのアルバムは確実に最下位だろうし、Dre本人ですら素で忘れてそうなアルバムではあるが、それでも個人的には非常に好きで今でもたまに引っ張り出しては楽しんでいる。Dr. Dre監修のアルバムにしては珍しく「B級感」がそこはかとなく漂っている辺りも捨てがたいし、シングルすら切れずに消えていった名もないアーティスト達のその後を想像しながら聞くのも嫌いじゃない。Dr. Dreのメジャー感バリバリのゴージャスなトラック上で頑張る名も無い新人達。正に余作に相応しい光景だ。

[fuma75]