Sunday, July 22, 2007

Tacteel - Je Ne Vous Oublierai Pas & TTC - 3615 TTC





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エレクトロニカのレア盤"Butter For The Fat"からエレクトロディスコEP"La St Etienne"に、TTCの楽曲群からも選抜し、「ベスト盤」と銘打ってパッケージング化したTacteelの意向は良くわからないけども、めちゃめちゃスノッブで音楽の「中味」より新しい「器」の部分にしか興味が無いようなTacteelの意外にも一貫して構築された世界観と、そのメロディーセンスがCherryboy FunctionやDE DE MOUSEに極似であるというフランスと日本の音楽世界の奇妙な相関関係にビックリした。

ゆるゆるのエレクトロニカに聴こえる"Selective Approach"や"GUsh"が、同じエレクトロ音楽としてもかなり遠い位置にあるように見える"Feel It, Feel It"やTTCの"Ebisu Rendez Vous"と並べても全く違和感ないどころか、それらの共通項ばかりが強調されるのだ。5年前に"Butter For The Fat"を聴き、そこから勝手に連想した日本のヒップホップビーツに近い所にある音楽(Riow Arai、DJ Klock、Numb、Force of Nature...)をTacteelの来日時に渡して感想を求めたら、「こういうのは好きじゃない」と一蹴されたことを思い出す。この発言を頭の中で反芻しながらアルバムを聴くと、「Tacteelは同族嫌悪をする人だから、きっとCherryboy Functionのことも嫌いだろう」という思いともう一つ、Tacteelの世界にある「ヒップホップ」とはこのジャケ写に感じる「うさんくさいセレブ臭」のようなのものであり、きちんと「リスペクト」され、型通りまるまんまの形で消化されているものじゃないことを痛感する。Above the LawのトリビュートMixCDなどを作っていても私は騙されない。

一方、毎回カラーを変えてきて、しかもどこの国とのヒップホップとも似ているようでいて、似ているものが一切ないTTCの作品は、「天才的な変態」もしくは「変態的な天才」であるMr. Flashが作った楽曲群を抜いてしまえば、実にわかりやすい。"Ceci N'est Pas Un Disque"ではエレクトロニカに、The OpusやMF Doom的なアンダーグラウンドミドルビート。"Batards Sensibles"ではエレクトロに、米メインストリームビート。"3615 TTC"ではハイフィやボルチモア要素まで組み込んだギャングスタビート。99年作の"Game Over 99"のゲーム音楽・効果音ベースのヒップホップに、毎回彼等が「旬」と感じる音が加えられて、ゲームコントローラ的な気楽なお遊び感覚であさっての方向に捻じ曲がっているだけだ。

彼らと同じように「最新の音楽に興味がある」と答え、ヒップホップに色々な音楽要素を取り入れているトラックメイカーは色んな国にたくさんいるけども、こんなにバラエティが多彩なのにこれほど一貫した独特のオタク臭を放つアーティストもいない。TacteelやPara Oneのように出身ジャンルも異なる4、5人ものトラックメイカーが関わっているにも係らず、毎回一つのテーマカラーに綺麗に収まってしまう不思議にあわせて、今までのアルバムを並べると全てイントロ無しの12曲編成である不思議に気付き、その妙に変質的な潔癖さにムズムズしたのは私だけではないはず。

しかし、"Je Ne Vous Oublierai Pas"上ではTacteelの世界観で統一されている同じ曲が、TTCのアルバムの中にあると見事に捻じ曲がって聴こえるのは一体何故だ? 実はどんなトラックメイカーもリスナーも、この「TTC」という共同体に取り込まれてしまうと、音楽感性が8等身のオトナから皆同じ顔をしたSDガンダムのキャラみたいになってしまうのかもしれない。"Batards Sensibles"のジャケ写のように。

Saturday, July 14, 2007

'07 albums still holding up

□ 気にしておいて損は無い上半期10枚



El-P
"I'll Sleep When You're Dead"

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TTC
"3615 TTC"

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Teki Latex
"Party De Plaisir"

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Tacteel
"Je Ne Vous Oublierai Pas"

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Cherryboy Function
"Something Electronic"

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Dizzee Rascal
"Maths + English"

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Young Dot
"This Is the Beggining"

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Turf Talk
"West Coast Vaccine"

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Devin the Dude
"Waitin' to Inhale"

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イルリメ
"イルリメ・ア・ゴーゴー"

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MP2
"XXX-File"

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Wednesday, July 04, 2007

Hadouken! - That Boy That Girl






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3年前にLil Jonが「次のアルバムはクランク・ロックだぜ!」と言っていたときは、このおっさんはなにを言ってるんだ、と誰もが思ったことだろうが、今や見渡せばUSにはShop BoyzがいてブラジルからはBonde Do Role、日本にもイルリメ、曲単位でエッセンスとしてロックを入れているものもカウントすればDizzee RascalにTeki Latexと世界中のあらゆる方角からのかつてないロック攻め。どうしてこんなことになってるのかはよくわからないが、恐るべき先見の明である。

最終的にはアート的なところを落としどころとしてヒップホップを色々といじくっていたアンティコンや、そこから派生したナードラップが自身のルーツを自然に振舞うためにロックを取り入れたのに対し、なぜか06年以降にロックを取り入れたヒップホップは気軽な目新しさと快活なキャッチーさばかりを追い求める風潮に。これが流行るのはとても不可解だけども、この風潮にあってヒップホップマップの端の端の裏あたりにロックバンドの体裁を取りつつポツンと位置するHadouken!がこの流れに沿うのも極めて自然だと言える。

求められている空気感をピンポイントで読み取り、ロック×グライムという単純明快だが、ちょっと配合をミスると大失敗をやらかしそうな白人的文化搾取調合に果敢に挑戦。ヴォーカリストの旧名Dr. Venomのガラージ/グライムシーンにおけるトラックメイカーのキャリアを生かし、JMEのフロウをパクり、D'Explicitの音をパクり、奇跡の配合を完璧にこなした結果、なぜかニュー・レイヴだとかに括られ大成功。

しかし、そんな安い職人芸で作られたこの作品には、当然のように鬼気迫る生々しいグライムらしさはない。いまや商業的に成功して流通している「グライム」とは、このHadouken!であり、Dizzeeであり、Lady Sovereignであるけども、こういう「グライム」がラーメンの胡椒程度にしか使われていないカラフルな音楽の影で、バッドマンと呼ばれたいがためだけに人を刺す発砲する頭の悪いキッズで溢れるストリートへの置手紙"Playtime Is Over"を残し引退してしまうWileyの姿がチラリと脳裏を横切る。