Tuesday, May 30, 2006

だるまさん - そんなあなたに








「日本でヒップホップをやるならば、日本土着のポップスに対する影響を無視するのは嘘だろ」というMCUの真横にだるまさんを置いてみる。すると、「ポップス」を土台として実直なラップをハメ込み、存外キチンと組み立て上げていくMCUの「ヒップホップ」とは逆に、だるまさんはオーガナイズされた「日本のヒップホップ」をクソ丁寧に解体しているようにみえる。丸裸にされた「日本のヒップホップ」の中には「日本のポップス(民謡)」がはだけて恥ずかしそうに横たわっていた、というまるで実体はないのだけど、とても胡散臭い説得力があるモノグラフが浮かび上がる。

ビートの上で楽しげにラップを鼻唄のレベルへ解体していくだるまさんは、ラップをイミテートしようとして歪さが前面に押し出てくる「Jラップ」とも全く異なる面白さを持つ。ヒップホップどころかリスナーからも距離を取りまくり、だらだらと隙がありそうでいて全く無い、やっぱり邪道ラップとしても圧倒的にニュースタイル☆なのである。

Friday, May 19, 2006

Twigy - Twig






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誰がなんと言おうがSEXソングである"T.W.I.G.Y"が白眉。この曲の中で登場する"T.W.I.G.Y"とは単にSEXにはげむラッパーではなく、まさに女の欲望を一身に背負い神々しく猛りつづける男根そのもの。曲中で女が"T.W.I.G.Y"を渇望するたびにリスナーである自分も"T.W.I.G.Y" を求めているかのような淫靡で倒錯的な感覚に陥る。女をリスナーのメタファとすれば、じゃあTwigyは人間の枠をも超えてリスナーに快楽を与え続ける神 みたいなものじゃないか。

こんな調子だからゲストを一切排除して、Twigyが一人でアルバムを作り上げていたら、きっとECDがライナーでぶらさげた「天才」の看板の力と相まって、Boss the MCや降神みたく盲目的な信者を増やして教祖の階段でも駆けのぼっていたことだろう。

しかし、あちこちに妖怪変化のごとくわんさと登場するゲストMCたちがバチあたりなまでに俗なヴァースを戸棚に吐きつけてこの聖域を犯しまくった結果、神々しさが相殺されてあいかわらず地に足の着いた「ラッパーの作品」に。もしこのゲストの使い方が計算づくだとしたならば、私はこの"Twig"を実家の神棚に飾ることも 辞さない。

Thursday, May 11, 2006

Wiley - Da 2nd Phaze






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シ ングル単位ではマスには一切受けないような荒ぶり尖った曲が多 いのに、アルバムを製作すると途端にマスにもコアにも受けず目も当てられないような駄作を世に送り出す不思議のシーンのグライム。だからこそ、商業性に譲 歩したくないとの理由からメジャーレーベル3社からのオファーも断り、コアなグライムを広めるため自身のレーベルから世界配給を伺う意気込みまで見せてい たWileyの2ndアルバムには期待せざるを得なかったのだが、いざ発売してみると、
自身のレーベル → 元部下のレーベル(自分もわずかに参加)
世界配給 → 一つのオンラインショップの独占販売(今のところ)
新曲多数 → 過去に発表した曲の寄せ集め
と いうありえないレベルの規模縮小に大鉈を振るう相変わらずの不思議っぷりで戸惑うばかり。アルバムの最後に3曲目でディスっているMore Fire Crewのクラシック"Oi"を配置する自由すぎるパッケージングといい("The Blueprint"のラストがNasの"Half Time"みたいな)、曲よりもシーンそのものがケイオス。

若手のあいだで「あたればでかく、はずすと悲惨なものになる」という己のパー ソナリティーに完璧にマッチする玉石混合のミックスステープアルバムが氾濫す るなか、一定のプロップスを得たシングルばかりを集めたアルバムにしたのは、堂に入ったWileyのパーソナリティーには見合っているが、その高品質な安 定性と引き換えにスリリングさがほとんどないのが難点か。貫禄ある作品ではあるが、ぶっとんだ発想は少ないがために、西のハイフィー、東のグライムという ような印象 が頭をかすめる曲がひしめく中、唯一グライムのオリジナリティーと革新性をすべて馬鹿さにのみ注ぎ込んだかのような"Eski Boy"だけは、あたったときの若手の曲に太刀打ちできる
得体の知れなさと沸 点の高さをあわせもつベテランの妙技。Roll Deepのアルバムを通過したWileyにしか作りえない馬鹿さ全開のこの曲は、どこを切り取ってもポップでありながら商業性とは完全に切り離されてい て、発表時に「コアなグライムを広めたい」と似つかわない意気込みをみせていたのも納得できる間口の広さがある。何かの間違いで一発屋になる可能性がなくはないくらいには。

Saturday, May 06, 2006

Nitro Microphone Underground

Five Deez - Kommunicator






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真夜中に寺の鐘と木魚がボンボンポクポク鳴っているかのようなDJ Krushの"寂"のノーフューチャーな音を初めて聴いたとき、「安楽死してぇ」と心の底から思った。

世の中には、たとえ享楽的で刹那的であろうが他人に活力を与える音楽や、ヲタ臭くて頭デッカチであってもクリエイティビティを感じる音楽がたくさんあるが、 "寂"にはそういったものの真逆の要素-負のオーラがとことん凝縮されていて、その内容に絶望しつつもDJ Krushの手腕と懐の深さに改めて畏れ入った。この作品の呼称は「寂」というより「三途の川」の方がふさわしい。

Five Deezの"Kommunicator"はそこまで業が深いわけではないが、01年にリリースされたジャジーヒップホップの金字塔"Koolmotor" からむこう「まるでドラムの魔法使いや!」と一部で囁かれていたらしいFat Jonの官能的なビートは、その肉感と実験精神を残してダークサイドにゆっくり堕ちていった。

やたらと複雑でひたすら観念的なプロダクションの瘴気と、決まったレールの上から1mmたりともズレようとしない一本調子なラップが相まって、約1時間にわたり無数のタコ足ライクな肉の触覚に延々と嬲られているかのような気持ち悪さと気持ち良さを体感できる。この作品から「音楽のロマンチシズム/ファンタジー」を感じるには難しいかもしれないが、エロアニメ的なファンタジムというか「音楽のエロチズム」は存分に感じられる。

Thursday, May 04, 2006

Gnarls Barkley - St. Elsewhere






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最近ではGorillazや鉄仮面様と仕事し、プロップスと知名度を上げてきたDanger Mouse氏の次なる相方はアトランタのDungeon FamilyからCee-Lo。しかしこうやってコラボ歴を見ていると、コスプレレイヤーばかりを相方に選んでいるDanger Mouseのコスプレフリークっぷりの見事なものよ。(※ちなみに今回のコスプレは「ナポレオンダイナマイト(バス男)」)

Cee-LoにしてもDanger Mouseにしても出自が正しくヒップホップのはずなのに、Gnarls Barkleyでは2人そろって夢中になって好き勝手なことをやりすぎたせいで、ヒップホップたらしめる要素をどこかに置き忘れてしまい、もはやジャンルの原型もとどめずひたすら彼等の世界観だけが膨張の一途をたどる結果に。コスプレマニアは綿密にポップでヲタ臭いビートを練り固め、肉塊は黒く切れ味のある歌声を自由奔放に放つ。そこに生じるナーディズムとフリーキズムに交差点はなく、全14曲の間に各々のマニアックな魂だけが発散しつづけた。

しかしこういう作品を聴いて「どうあってもこんなの"ヒップホップ史"に残らなそうなところが素敵!」だとか「ポップなのになんか歌も音もキモい!」だとか「コスプレ最高!」といって手をたたいて喜んでいる自分もそうとう不健全だと思うが、Streetsやこんな作品がチャート上位にランクインするイギリスでは国家規模の不健全化が深刻になっている気がしてならない。