Wednesday, March 21, 2007

El-P - I'll Sleep When You're Dead






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間違いなく5年に1つ出るか出ないかレベルの傑作中の傑作(月刊ビートマグロ基準★10個認定)なので、Defnitive Juxを信じて根気よく追い続けていた人たちは今頃揃って桜の木の下で狂喜乱舞していることだろう。

残念ながら今月で休刊となってしまったBLASTのインタビューを読んでみると、「(Mr.Lifなどのクルーの作品を含めた)今までのプロジェクトは俺の実験に過ぎない。本番(自分のソロ作)で実験なんかできるか。(大意)」だとか、「Party Fun Action Committeeはギャグだ。あんなものを本気で批判しているやつはアホだ。(大意)」というツレやリスナーを屁とも思っていない傍若無人な素敵発言が飛び出していて度肝を抜かれたのだけど、本作を聴いてみると成程この発言はマジなのだととても納得し、同時にEl-Pの底知れぬひとでなしっぷりに惚れてしまった。

原点となるCompany Flow "Funcrusher"に、彼が言うとおり、今まで紆余曲折あった彼の全てのキャリア(ロック・ジャズ・エレクトロニカ・ギャグプロジェクトで培った経験)を、考えられる最大限の「創造力」を注ぎ込んだ結果がこの"I'll Sleep When You're Dead"であり、確固たるヒップホップ土台(世界観)と、途方もない音楽経験値の高さがなければ作りえない超快作。"Funcrusher"をひっぱって、叩いて、踏みつぶして、放り投げて、色んな装飾を施して……。"Funcrusher"がWindows95ならば"I'll Sleep When You're Dead"はWindowsVistaみたいなものか。(我ながらダサい例えだ……)

もともと一流だった作品を一流の職人が何年もかけてリメイクすることでしか出し得ないこの味と仕掛けには、USメインストリームにおける瞬発力のあるクリエイティビティや、ボルティモアやグライム、バイレに顕れたマジックとは全く別の次元の「創造力」がある。今までのアングラ物の「創造性」が全て一面的なものに見えてしまうくらいの危うい力強さ。

しかし、こんな作品を作れてしまうのは、やっぱりEl-Pがそうとう執念深い自己中人間だからなのだろうなぁと、別の感動も強く呼び起こされてしまうのである。