Monday, June 11, 2007

RUMI - Hell Me WHY??







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何年か前に陣野俊史とかいうライター(最近みねーな)が「日本語ラップはそこらの不良ラッパーが作ったものより、Tha Blue Herbや降神のようなインテリチックな反骨精神を持ったアーティストが作ったものの方が優れている」などと小難しくのたまっていたけども、最近の日本語ラップは「そこらの不良ラッパー」が作ったものにこそリリックのセンスを感じるものが多く(ぶっちゃけすぎなのも多いけど、それはそれで楽しい)、更に「クルー」ではなく「ソロ」でアルバム一枚聴かせることが出来るほどのスキルを持った不良ラッパーが一杯いるので(これは一昔前では考えられないことだと思う)、日本語の「ラップ・アルバム」を聴くのがまた楽しくなってきた。

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単純にラップスキルだけで見れば、邦ラッパーがトップレベルの米ラッパーに敵うことは決して無いように、女性MCがスキルフルな男性MCに敵うことは決して無い、ということを洋・邦問わず最近の女性MCブームや前述のソロラッパーの充実っぷりの中でも再認識するのだけども、そのことを理解している一線級の女性MCが「ラップ・アルバム」のフィールドでは戦わず、音楽知識の引き出しを片っ端から空けて、「王道」を意図的に外した「プロダクションの妙」を聴かせる作品をつくりにいくのは至極真っ当な話だろう。

しかし、RUMIの"Hell Me WHY??"を聴くと、プロダクションの「幅」を意図的に広げているには違いないけども、スノッブなファンを喜ばせる為に無理やりに曲のバリエーションを増やしているというよりも、"Hell Me Tight"から「地つづき」の、彼女の音楽背景を引き伸ばしたつくりになっていて、非常に自分の趣味に忠実な「地に足の着いた」作品に見えたので、プロダクション云々の話とはまた違った点で好感が持てた。

アブストラクトに、ドラムンベースに、エレクトロニカに、ダブステップの使用は"Hell Me Tight"の嗜好と何ら変わらず、「プロダクションの妙」や「新しい音」を作って聴かせているというよりは、おそらくRUMIが大好きな「hot wax系」の音を拡充した形となっている。どんよりした前作の欝っぽいムードから一転、音もラップもはっちゃけまくりの躁状態にふれている感じだけども、意外とピンポイントに前作のファンをそのまま惹きつけているに違いない、と思えるのは案外この「音楽性」がベースにあるからかもしれない。(そういえば、昔hot waxにRUMIの"蛹"が置いてあったな…。)

リリックも、他の国でおこっている戦争を憂いたり、未婚女性の鬱病的生活を描いた"Hell Me Tight"のオバハン臭い視点を10歳くらい若返らせた内容で、「もうこの世はおしまい~だッ。」と突然なげやりに叫んで資産家を罵ってみたり、医者との合コンバトルに必死になったり、所持金が小2以下でテンパったりしている娘のサマが恥らい無く描かれ、この辺も同世代として非常に共感できる。

一見前作からガラリと印象を変えてきたように見えて、実は前作のベースそのままに「素」に近くなった本作では、リスナーとRUMIの距離感が縮まった分、「プロダクションの幅」でリスナーを増やしているというよりは、前作からのリスナーをより惹きつけることの方に成功していると言えるのではないか。