Sunday, July 24, 2011

ERA - 3 Words My World



ここ数年の間にアーティストの名前で感動したのは"Lil 諭吉"だったけども、最近見かけた"DJ Highschool"という名前には久々にしびれた。DJハイスクール、モラトリアムとボンクラっぽさが同居するイカした名前。そんな名前を持つトラックメイカーが参加しているERAのアルバムはモラトリアムとボンクラっぽさを内包する素晴らしいバイブスに満ちていた。

「WIZ KHALIFAや CURREN$Y、SMOKE DZAやKENDRICK LAMARはHUSTLIN’ではなくSTONERなUSのNEW SCHOOL HIP HOP。ERAが作り出すのはシャラリシャラリなTOKYOのNEW SCHOOL HIP HOP。」――『3 Words My World』推薦文より――

このアルバム販促用の推薦文に書かれている通り、ERAが作る楽曲はストーナーだしシャラリシャラリな東京のニュースクールヒップホップだと思う。日本語ラップファンが聴くと、S.L.A.C.Kの諸作品と、四街道ネイチャーの『V.I.C.TOMORROW』と、GWASHIの『the FIRST CHOICE』と、ALPHABETSの『なれのはてな』を繋げるパズルの最後のピースが『3 Words My World』だという印象を持つのではないだろうか。つまり、脱力した生活感と、フリーター臭のするボンクラっぽさと、ドラッギーな万能感を兼ね揃えた日本語ラップということ。そこに加えて、ILLICIT TSUBOIのミックスの力か、USで行われたというマスタリングの妙か、確かに感じさせるWIZ KHALIFAやCURREN$YやKendrick LamarなどのUSで注目される若手ヒップホップスターとの同時代性。

ここから『3 Words My World』の特殊さをあげつらえて褒め称えることはいくらでもできる。"過去に作られていた不細工な日本語ラップと現在のカッコ良さを追及する日本語ラップを繋ぐ貴重な架け橋"だとか、"どうしてもストーナーな世界に逃げてしまう人の「リアルさ」と、焦点の定まらない妄想が暴走していく「非リアルさ」が奇跡的に同居する"とか。ただまぁ、『3 Words My World』のキーワードを1つ挙げるとすれば"停滞"だろう。

若いラッパーの作るアルバムで、これほど前にも後ろにも向かず、ストーナーな世界にふけっているのも珍しい。昔を懐かしんだりするようなところは勿論、カッコをつけようとするところもない。S.L.A.C.Kにだって他人を勇気付けようとする姿勢があるのに。なにせ他者への視点が大きく欠けているから、ポジにもネガにも向かわずぼんやりと停滞したまま妄想がただただ広がっていくような曲ばかりが蜃気楼の街のように繋がっている。そして、「WIZ KHALIFAや CURREN$Y、SMOKE DZAやKENDRICK LAMAR」にも通じる音楽性は、そんな宇宙のような、スペースコロニーのような、ショーウィンドーの並ぶ渋谷のような、シャラリシャラリな"ERA TOWN"をパーフェクトにアップデートする。