tag:blogger.com,1999:blog-267656572024-03-13T09:52:59.045+09:00デブメガネ淀川チキンhttp://www.blogger.com/profile/11499180283302663944noreply@blogger.comBlogger93125tag:blogger.com,1999:blog-26765657.post-11392140993943388912013-07-03T23:51:00.000+09:002013-07-04T00:38:34.050+09:00KID FRESINO - Horseman's Scheme<div class="separator" style="clear: both; text-align: center;">
<a href="http://3.bp.blogspot.com/-l1mQOVXSaB8/UdQ5cR7apHI/AAAAAAAAAY0/Xr7czmoHXTg/s240/kidfresino.png" imageanchor="1" style="clear: left; float: left; margin-bottom: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" src="http://3.bp.blogspot.com/-l1mQOVXSaB8/UdQ5cR7apHI/AAAAAAAAAY0/Xr7czmoHXTg/s240/kidfresino.png" /></a></div>
<br clear="all" />
KID FRESINOの『Horseman's Scheme』が好きでずっと聴いている。ビートとラップの素晴らしいハマり具合には楽曲の大半のビートを手掛けているjjjの勢いとillicit tsuboiのエンジニアリングの手腕を感じさせるけども、なんといってもこのアルバムの良さはKID FRESINOの生意気なカッコ良さにある。<br />
<br />
彼のラップスタイルは、“流れるようなフロウ”というより、”リスナーへ語りかけるようなリズミカルなラップ”と形容したほうがよいだろう。滑舌、間の取り方、緩いbpmにあわせる言葉の置き方……一つ一つの言葉を聴き取り易くて、リスナーに詞を伝える面では理想的なラップなのだけども、そのリリックの内容はリスナーにKID FRESINOの物語(ストーリー)や彼が抱える問題を提示するようなものでは無いところが面白い。ルー語のように英語と日本語がチャンポンされたリリックで語られるテーマは、”俺のラップは如何にカッコいいか”というようなセルフボーストの一点。<br />
<br />
<br />
<blockquote class="tr_bq">
「You bark &watch you die<br />
puffin pocket roll up<br />
本物だけがこのgameに残るなら<br />
2014年は俺が生んだwordだけで埋まるな<br />
Horsemans schemin shitはFlag落とす bowgun<br />
Miss america rap Themeもう既にIm done」 <br />
(KID FRESINO "Horseman's Scheme")</blockquote>
<br />
<blockquote class="tr_bq">
「Just take it 俺はすぐそこにいる<br />
World wide tokaidopeness check rigght?<br />
まぁこれで業界の足も固まる<br />
過ぎるブームに踊るfuckin bitchならpass<br />
限界はとっくに越えたこれが新たなmusicの扉<br />
即効take&over across the street trip everywhere<br />
women in the mirror Uknow<br />
閉じこもったgirlsもノブを捻るniceなrapのskillを持つkiller meets buda」<br />
(KID FRESINO "New Clear Weapon")</blockquote>
<br />
<blockquote class="tr_bq">
<参考><br />
<a href="http://www.dogearrecordsxxxxxxxx.com/artists/kid-fresino/horseman-s-scheme-lyrics/">http://www.dogearrecordsxxxxxxxx.com/artists/kid-fresino/horseman-s-scheme-lyrics/</a></blockquote>
<br />
<iframe allowfullscreen="" frameborder="0" height="250" src="//www.youtube.com/embed/7qgwpe_IzwY" width="444"></iframe><br />
“己のラップのカッコ良さ”を巧みな詞で表現して見栄を切る。それが成功したとき、ラッパーの魅力はリスナーへ効果的にうつる。<br />
<br />
<br />
<blockquote class="tr_bq">
「試行錯誤繰り返し生き残るサバイバル オレにとってオレ最大<br />
宿命のライバル 一冊のライムブック 必殺のバイブル<br />
握る赤目スコープ越し狙い定めるライフル カートリッジには今10発<br />
まず2発射ち放ち両足を止め 残り7発<br />
取り囲むザコを仕留め 1発で勝利の女神始末<br />
いいか オレは能ある鷹の頭上 遥か彼方高く飛ぶ野望ある鷹」<br />
(THA BLUE HERB "RAGING BULL")</blockquote>
<br />
<blockquote class="tr_bq">
「一流のファインダー 見透かす二流のフレーズ 三流の売奴のケツ目もくれず<br />
ガス切れのライター、親指で毎晩こすり上げとぎ上げたペン先は刃<br />
オレはミラーボールの前に居座る、消えたきりの電球にひかれる男<br />
焼きつける視界に入ったら最後眠らない残像が日本中を眠らせない」<br />
(THA BLUE HERB "BOSSIZM")</blockquote>
<br />
<iframe allowfullscreen="" frameborder="0" height="250" src="//www.youtube.com/embed/I4uWJnqgUtI" width="444"></iframe><br />
<br />
上に挙げたリリックはTHA BLUE HERBのものだが、リスナーへ”見栄を切る”セルフボースト物として、KID FRESINOのリリックと本質的には同じもののように受け取ることができる。しかし、THA BLUE HERBとKID FRESINOが異なるのは、先にも書いた通り『Horseman's Scheme』の楽曲はセルフボースト物だけで貫かれているところだ。<br />
<br />
捻りのある詞をつむぐ"リリシスト"として名高いBOSS THE MCではあるけども、このブログでも度々取り上げてきたとおり、彼にとって”ライフストーリー”こそが楽曲を通して届ける主のテーマであって、彼の詞のセルフボースト的な部分はそのテーマをより際立たせるためのスパイスだ。翻って、KID FRESINOのラップの主のテーマはあくまでセルフボーストであって、そこで”ライフストーリー”は語られない。<br />
<br />
思い返せば、SEEDAやSWANKY SWIPEなどのハスリングラップを経由して、2009年当時S.L.A.C.Kの『MY SPACE』がとても新鮮に聴こえたのは、スケートにいったり、彼女と一緒にいることを楽しむような自分の周囲10m程度の出来事をラップしていたようなところだけど、それはS.L.A.C.Kの”ライフストーリー(人生)”ではなくて、”ライフスタイル(生活の営み方)”をリスナーに提示できていたからだったのかもしれない。一人の男の"ライフストーリー"という重たいものではなくて、日々の物事を割り切りながら生活のなかに楽しみを見い出していく軽やかな”ライフスタイル”をラップするS.L.A.C.Kがリスナーにとってクールな存在に見えていたのではないだろうか。<br />
<br />
そんなクールなS.L.A.C.Kのラップと比較してみても、「どんな生活を送って、日々どんなことを考えているのか」すら読み取ることが難しいKID FRESINOのラップは、もはや”ライフスタイル”からも切り離されて”スタイル”だけが残ったもののように感じられる。しかし、かつて様々なラッパーが放ったセルフボースト曲に高揚して共感したリスナーがいたように、KID FRESINOの一貫したクソ生意気な”スタイル”にフィールするリスナーもいるだろう。”ライフストーリー”も語らず、”ライフスタイル”も見せず、一貫したスタイルだけでリスナーを引っ張っていく。セルフボーストへの回帰という点ではさんピン世代のラップへの先祖返りのように思えるかもしれないけども、英語と日本語が入り混じりながら幽かに情景が描写されるリリックには確実にTHA BLUE HERBからSWAGまで行き着くジャパニーズヒップホップの流れとセンスが息づいている。聴き易いKID FRESINOのラップは、彼のスタイルを鮮烈なインパクトと共にリスナーに残す。微熱教授http://www.blogger.com/profile/15083927576509688324noreply@blogger.com5tag:blogger.com,1999:blog-26765657.post-69873355387838984432013-01-19T00:30:00.000+09:002013-01-19T00:40:48.755+09:00RHYMESTER "The Choice Is Yours"の先にあるsoakubeats『Never Pay 4 Music』とtrinitytiny1『log!cmushroom』と"1リスナー1アーティスト1レーベル"の時代について<iframe allowfullscreen="allowfullscreen" frameborder="0" height="250" src="http://www.youtube.com/embed/OmjJWUM8VcA" width="444"></iframe><br />
RHYMESTER "The Choice Is Yours"<br />
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衆議院議員選挙にタイミングをあわせて公開されたRHYMESTERの"The Choice Is Yours"は、震災でダメージを受けた日本を復興していくためにはひとりひとりの行動が必要だという「やるのは君だ!」をテーマにした至極真っ当なメッセージソングだった。<br />
<br />
おそらくは多くのリスナーがこの真っ当なメッセージソングをポリティカルな意味を持つラップ曲だと捉えるのだろうけども、ネットを中心に音楽シーンを追っているリスナーが聴くとそういう政治的な面とはまた別の意味にも聴いて取れるのではないだろうか。つまり、かつてRHMESTERがうたっていた「どんなアマチュアでもラップは作れる」という"ザ・グレート・アマチュアリズム"をもっと先に進めた「オマエひとりでなんでも出来る」というようなポジティブなアマチュア賞賛ソングのように。<br />
<br />
ONE YEAR WAR MUSIC、DREAM BOY、鎖グループ、BULL MOOSE、BLACK SWAN、How Low、rev3.11、あるいはCREATIVE PLATFORMも含めて良いかもしれない。2011年末から2012年にかけて続々と日本のヒップホップレーベルが立ち上がって、いろんなレーベルから若手ラッパーからベテランラッパーまで、さまざまな楽曲がリリースされた。これらのレーベルはアーティストが起こしたものもあれば、プロモーターのようなフィクサーがつくったものもあるし、企業が資本を流しているものもあれば、自分たちの身銭を切って切り盛りしているものがあるけど、そんな中でごく少数の人数だけで音楽の制作から広告、流通までをカバーして機能しているレーベルも多いだろう。<br />
<br />
2010年に刊行された「未来型サバイバル音楽論」で著者のひとりである牧村憲一は"一人1レーベル"という言葉を使って、音楽を制作するには昔ほどの資金、人材、営業力、プレス工場はいらなくなった、ということを書いていた(ちなみに、彼はレーベルを運営するには身近で批評してくれたり、拍手してくれる人は必要と言い最低2人で運営することをすすめている)が、2011年から2012年にかけてフリーでの楽曲リリースが増えていったことからもわかるように、"ただ音楽を作ってリリースする"ということだけを考えるならば、YouTubeやSoundCloudなどでアーティストが1人で音楽をつくってリスナーに届けることが普通になった現在こそ"一人1レーベル"の時代と言い切ってしまえる。<br />
<br />
2012年で、こういった"一人1レーベル"の時代を象徴するエポックメイキングな作品と言えばsoakubeatsとtrinitytinyがドロップした作品、『Never Pay 4 Music』と『log!cmushroom』。これらは"一人1レーベル"の時代をもっと推し進めた"1リスナー1アーティスト1レーベル"の時代をあらわしている。<br />
<br />
<iframe allowtransparency="true" frameborder="0" height="100" src="http://bandcamp.com/EmbeddedPlayer/v=2/album=2978321420/size=venti/bgcol=FFFFFF/linkcol=4285BB/" style="display: block; height: 100px; position: relative; width: 400px;" width="400"><a href="http://soakubeats.bandcamp.com/album/never-pay-4-music">[試聴] Never Pay 4 Music by soakubeats</a></iframe>
soakubeats 『Never Pay 4 Music』<br />
<br />
<iframe allowtransparency="true" frameborder="0" height="100" src="http://bandcamp.com/EmbeddedPlayer/v=2/album=3774027792/size=venti/bgcol=FFFFFF/linkcol=4285BB/" style="display: block; height: 100px; position: relative; width: 400px;" width="400"><a href="http://trinitytiny1.bandcamp.com/album/log-cmushroom">log!cmushroom by @trinitytiny1</a></iframe>
trinitytiny1 『log!cmushroom』<br />
<br />
この2つのどちらもがビートメイカーのアルバムで、どちらのアーティストもトラックを作り始めてからまだ2年くらいしか経っていないというところが共通している。彼らはほんの2年前まではリスナーとして音楽を享受する立場だったけども、例えばsoakubeatsはGRIMEやROAD RAP、LEX LUGERのビートを聴いたことをキッカケにトラックを作り始めたという。<br />
<br />
soakubeatsも、trinitytiny1も、彼らがリスナーとして流行りの音楽を追っていくなかで、他の日本人トラックメイカーがまだ発見できていなかったり、クリエイトできていないものにフォーカスをあてて楽曲を作っているという点で、いま現時点で他のどんなプロのトラックメイカーとも違う新しい音楽の"面白さ"や"独創性"を掘り起こしているカッティングエッジに立つクリエイターだと言っても差支えないだろう。LEX LUGERプロダクションのビート、TRAP、FOOTWORK、GRIMEなど、いろんな音楽を独自に翻訳した彼らのビートを聴けば、その独特さに耳を奪われるはずだ。リスナー/愛好家がその音楽が持つ先端の面白さを、アーティストに立場を変えて翻訳/発表をしているという構図は、"インターネット時代"よりもずっと昔から一般的なものだけども、インターネットで新陳代謝が激しくなり、様々なベクトルを持つ楽曲がタコ壺のように細分化されて出てくるなかで、その最先端のものを追い続けることができるのは"プロ"、"アマチュア"は関係なく鋭い嗅覚をもつリスナーに他ならない。だとすると、いま一番独創的で面白い楽曲を生み出すことができるのはマニアックに音楽を追い続けるリスナーだろう。<br />
<br />
さらにこれらの作品にはゲストラッパーがフィーチャリングされたり、エンジニアが起用されたりしているけども、Twitterが制作のためのツールになっていることも見逃せない。Twitterでファンとアーティストの垣根がなくなったと言われて久しいが、"1リスナー1アーティスト1レーベル"の時代には敷居が低く他のアーティスト、エンジニア、クリエイターと繋がってモノづくりができるコミュニケーションツールは必要不可欠だし(実際、trinitytiny1はタイに住みながら、日本のラッパーと繋がって楽曲制作している)、もし、ラッパーやエンジニア、トラックメイカー、ジャケットを作ってくれるデザイナーなどに支払うお金が必要なのであれば、bandcampやiTunesで"楽曲を売る"のだって簡単だ。CDにしたって10年前よりずっと安く制作することができる。soakubeatsとtrinitytiny1は、ひとりのリスナーが制作者になって、プロモーターになって、商品をマネジメントする"1リスナー1アーティスト1レーベル"を体現する。<br />
<br />
RHYMESTERがスピットする「やるのは君だ!」というメッセージは、リスナーとアーティスト、そしてレーベルまで垣根がなくなった、soakubeatsとtrinitytiny1みたいなアーティストがいる音楽シーンから聴くとまた違った説得力がある。これからきっとどんどん"1リスナー1アーティスト1レーベル"化が進む。10年後にはもしかしたら"島宇宙"なんてものじゃ収まらない、音楽シーンは1人1ジャンル(言い過ぎか)まで細分化されるかもしれない。微熱教授http://www.blogger.com/profile/15083927576509688324noreply@blogger.com8tag:blogger.com,1999:blog-26765657.post-56503440336705578092013-01-04T22:12:00.001+09:002013-01-04T23:25:04.077+09:002012best ~ やる気のないコメント入り<a href="http://s220.beta.photobucket.com/user/debumegane/media/2012_zps1ed4e4de.png.html" target="_blank"><img alt="Photobucket" border="0" src="http://i220.photobucket.com/albums/dd173/debumegane/2012_zps1ed4e4de.png" /></a>
<br><br>
・Kendrick Lamar / Good Kid, M.A.A.D City<br>
・Schoolboy Q / Habits & Contradictions<br>
・Joey Bada$$ / 1999<br>
・SpaceGhostPurrp / Mysterious Phonk<br>
・Future / Pluto<br>
・Chief Keef / Finally Rich<br>
・Iamsu! / Kilt<br>
・TREE / Sunday School<br>
・Ty Dolla $ign / Beach Hou$e<br>
・TNGHT / EP
<br><br>
2012年はKendrick Lamar『Good Kid, M.A.A.D City』、Schoolboy Q『Habits & Contradictions』、Ab-Soul『Control System』とBlack Hippyの活躍が目についた年でした。
<br><br>
クラウドラップ方面にもリーチした2011年リリースの『Section.80』の話題も冷めやらないなか、ケンドリックのストリートライフから彼の思想を反映させた『Good Kid, M.A.A.D City』が名実共に2012年の顔となるべき作品なのではないでしょうか。彼のストラグルライフがいかに巧みにアルバムに描かれているかはYAPPARI HIPHOPに秀逸なまとめがあるので<a href="http://www.yapparihiphop.com/music/special-kendrick-lamar-%E3%80%8Cgood-kid-m-a-a-d-city%E3%80%8D%E8%A7%A3%E8%AA%AC" target="_blank">こちらへ</a>。
<br><br>
LAを拠点としたギャングスタラップの延長にあるBlack Hippy勢の楽曲が非常にクラシカルな方向に落ち着いていることにもあらわれているとおり、サウンド面で聴かせるよりはイーストコーストマナーに則ったオーセンティックで"ラップを聴かせる"ヒップホップに揺り戻っている印象を残しました。
<br><br>
そして、90年代~00年代のアンダーグラウンドヒップホップ回帰という面では、Reflection Eternalの新作だと偽っても違和感がなさそうなRoc Marciano『Reloaded』や17歳注目株<a href="http://www.sharebeast.com/ovq3g0n0lafr" target="_blank">Joey Bada$$の『1999』</a>が象徴的。<a href="http://dopetm.com/2001/06/17/2147.html" target="_blank">『REV MAG vol.2』</a>の"ヒップホップ時評"では、パープが自分の生まれた年まで遡って影響を受けたのであろうラッパー/プロデューサのタイトルに関する言及がありますが、<a href="http://www.youtube.com/watch?v=zECshXD6p6A" target="_blank">Lewis Parker</a>や<a href="http://www.youtube.com/watch?v=ykZHqx84YS0" target="_blank">Freddie Joachim</a>といったマニアックにも程があるビートジャックから垣間見れるJoey Bada$$の原点回帰の視点はSpaceGhostPurrpのソレとまったく同じものだと言えるでしょう。
<br><br>
つまり、記事の言葉を拝借すると"リアルタイムで聴いたからどうこうだとか、当時の評価がどうこうではなく、例えば、リリースから10年後に初めて聴いても、イイと思ったものは、”一般的な”(コレもまた曖昧ではあるけれど)評価なんてまったく関係なく、イイわけだし、そこから強い刺激やインスピレーションを受けることがあることを、自分の音楽を通じて正直に打ち明けている"ということで、更に言えばリバイバルにはパープにしろジョーイにしろ彼ら"若いアーティスト"が過去の音源から受け取るインスピレーションが欠かせないものだと思います。また、この一連の流れで2013年にはアンダーグラウンドヒップホップに注目が戻る可能性も少なからずあるような気がします。
<br><br>
一方、Future『Pluto』、Chief Keef『Finally Rich』、2 Chainz『Based On A T.R.U. Story』あたりはそれまでミックステープで支持を集めていたラッパーのオフィシャルリリースとなっていますが、音が聴き易く整理されてそれまでの荒削りでDIYならではの生々しい迫力が失われているように感じられます。しかし、Chief Keefの『Finally Rich』にはプリミティブな音を詰め合わせて砂利道をゴリゴリ進んでいくようなそれまでのミックステープより一匙のフューチャリスティックなビートを絡めて立体的に組み合わせることで、Lil Durk、King Louieといった同郷の他のラッパー達の作品とは一線を画す独特な出来映えになっているし(それでも<a href="http://www.youtube.com/watch?v=ZQCyhaOt9bc" target="_blank">"Laughin' To The Bank"</a>のセンスはよくわからないが)、Future『Pluto』もDungeon Family直系のプロダクションに擦り寄ることでサウス系ギャングスタラップのフレイヴァ漂わせつつもOutKastの作品群を髣髴とさせるような複雑さと優美さを備えたアルバムになりました。
<br><br>
2012Bestアルバムのリストではオフィシャルリリースが半数以上を占めますが、ミックステープにあったラッパーの魅力を損なわなずに1ステップ押し上げるようなメジャー方面のプロダクションが見れるようになってきたことが2012年のひとつの特色とも言えるかもしれません。
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2013年へ飛躍を感じさせる新進気鋭のアーティストは前述したChief Keef、Joey Bada$$の他にはベイエリアからE-40やWiz Khalifaにもフィーチャーされたハイフィシーンの新人<a href="http://t.opsp.in/l04oJ" target="_blank">Iamsu! 『Kilt』</a>、WeekndからDrakeに回帰したかのような歌物ミックステープをドロップした<a href="http://www.hotnewhiphop.com/tys-beach-house-mixtape.63592.html" target="_blank">Ty Dolla $ign 『Beach Hou$e』</a>、シカゴシーンからはプロデュースからラップまで器用にこなし土臭い"SOUL TRAP"なるものをクリエイトしている<a href="http://www.mediafire.com/?361q29v8vhl3gtb" target="_blank">TREE 『Sunday School』</a>を。
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日本のヒップホップのベストはtogetterにコメント含めてまとめてもらったので<a href="http://togetter.com/li/431009" target="_blank">こちら</a>から。それでは2013年も宜しくお願いします。微熱教授http://www.blogger.com/profile/15083927576509688324noreply@blogger.com3tag:blogger.com,1999:blog-26765657.post-79385597728030247312012-06-06T23:43:00.001+09:002012-06-06T23:43:25.905+09:00コンシャスラップの季節 ~2012年5月の2つの作品~<div color="black" face="inherit">
<span class="yiv1257733796926362703-06062012">2012年は"コンシャスラップの季節"とでもいうか、3.11を意識した政治的なテーマの色が強い作品がいろいろと出ている(このブログでも取り上げたSALU、SNEEEZE、田我流</span><span class="yiv1257733796926362703-06062012">なども含めて</span><span class="yiv1257733796926362703-06062012">)けども、この手のトピックの扱い方1つでそのラッパーの本質があらわれてくるのが非常に興味深い。勿論、それはベテラン勢の作品にも同じことが言える。</span></div>
<div color="black" face="inherit">
<h3>
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<span class="yiv1257733796926362703-06062012">■THA BLUE HERB - TOTAL</span></h3>
</div>
<a href="http://2.bp.blogspot.com/-WRdcv19u9Ck/T834tvZEGiI/AAAAAAAAAXU/bX4VTFmocY0/s1600/total.png" style="clear: left; float: left; margin-bottom: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" height="200" src="http://2.bp.blogspot.com/-WRdcv19u9Ck/T834tvZEGiI/AAAAAAAAAXU/bX4VTFmocY0/s320/total.png" width="226" /></a>
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<br clear="all">
<span class="yiv1257733796926362703-06062012">THA BLUE HERBが日本語ラップ史に名前を刻み、その後多くのラッパーに影響を与えた1stアルバム『Stilling, Still Dreaming』。このアルバムがこれほどまでに大きな作品になったのは、シーンの中心(</span><span class="yiv1257733796926362703-06062012">東京)から遠く離れた地方(北海道)で活動することのフラストレーションが表現の力強さの源となって、THA BLUE HERBという無名な地方のグループが</span><span class="yiv1257733796926362703-06062012">"東京のシーンに対峙して闘う姿"はリスナーへ共感を産むものになっていたからだろう。</span><br />
<br />
<span class="yiv1257733796926362703-06062012">しかし、</span><span class="yiv1257733796926362703-06062012">『Stilling, Still Dreaming』がシーン内外で高い評価を受けて多くのリスナーに受け入れられていくにつれて、"認められないことへのフラストレーション"や"東京のシーンに対峙して闘う姿"をあらわすようなラップの色は薄れていき、その一方で濃く浮かび上がってきたのは"THA BLUE HERBが志向するヒップホップ/ラッパーの理想像"だった。楽曲の中身はその<span class="yiv1257733796463202808-04062012"> "</span>理想像<span class="yiv1257733796463202808-04062012"> "を追求していくTHA BLUE HERBの意気込みと、その"理想像"に近い</span>自分達は優れた表現者だというセルフボースト、</span><span class="yiv1257733796926362703-06062012"><span class="yiv1257733796463202808-04062012">"理想像"</span></span><span class="yiv1257733796926362703-06062012">に当てはまらないラッパー/作品は<span class="yiv1257733796463202808-04062012">「異端だ」</span>と言ってのけるような原理主義的な(BOSSの言葉で言い換えると、<a href="http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20120521-00000302-alterna-bus_all" target="_blank">"シャドーボクシングをしている姿"</a>が延々と映し出されているような)ものへと変わっていった。</span>
<br />
<br />
<div color="black" face="inherit">
<span class="yiv1257733796224371903-04062012"><span class="yiv1257733796926362703-06062012">その"シャドーボクシングをしている姿"が描かれていた2nd、3rdと比較してみると、この</span></span><span class="yiv1257733796224371903-04062012"><span class="yiv1257733796926362703-06062012">4枚目のアルバムとなる本作『TOTAL』は、</span></span><span class="yiv1257733796224371903-04062012"><span class="yiv1257733796926362703-06062012">非常にわかりやすく、共感しやすい内容になっている。ここでうたわれているのは、たとえば<span class="yiv1257733796224371903-04062012"><span class="yiv1257733796794224603-05062012">「時代の流れで音楽の売上げが落ち込んでいくなかで持つ覚悟」("LOST IN MUSIC BUSINESS")であり、「変わっていく周りの評価のなかで感じるフラストレーション」("MY LOVE TOWN")であり、「シーンで勝ち続けることの重圧や、周りに才能のあるラッパーが次々と出てくることに対する重圧を跳ね返そうとする意気込み」</span></span><span class="yiv1257733796224371903-04062012"><span class="yiv1257733796794224603-05062012"><span class="yiv1257733796588064207-05062012">("EVRYDAY NEW DAWN"、"THE NORTH FACE"等々)</span>だったりする。</span></span></span></span></div>
<br />
<div color="black" face="inherit">
<span class="yiv1257733796224371903-04062012">この『TOTAL』の構図は、『Stilling, Still Dreaming』と近い。<span class="yiv1257733796224371903-04062012"><span class="yiv1257733796794224603-05062012"><span class="yiv1257733796588064207-05062012">THA BLUE HERBは </span>『Stilling, Still Dreaming』でかつて<span class="yiv1257733796588064207-05062012">彼らが立っていた</span>"東京のシーンから遠く離れた地方"を、『TOTAL』で"音楽不況"や<span class="yiv1257733796588064207-05062012">"才能のある若手が出てくるシーン"</span>というステージに変えて、『<span class="yiv1257733796926362703-06062012">TOTAL</span>』のなかにいる<span class="yiv1257733796926362703-06062012">BOSSを</span>『Stilling, Still Dreaming』と同様に<span class="yiv1257733796926362703-06062012">"リング(逆境)のなかで闘っている姿"へと仕立て上げる。</span></span></span></span></div>
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<span class="yiv1257733796224371903-04062012"><span class="yiv1257733796224371903-04062012"><span class="yiv1257733796794224603-05062012"><span class="yiv1257733796926362703-06062012">そして、3.11のトピックも本作では大きい意味を持つ。『TOTAL』では3.11のキーワードがところどころに散見される程度(3.11に関連するテーマをそのままうたったものは、先行シングル曲"<span class="yiv1257733796794224603-05062012"> HEADS UP </span>"と特典曲<span class="yiv1257733796588064207-05062012"> "</span><span class="yiv1257733796794224603-05062012">NUCLEAR, DAWN </span>"<span class="yiv1257733796794224603-05062012">くらいで </span>、アルバム全体を覆うほどではない)だが、これらのキーワードがさらに本作にひねりを与えて、わかりやすいものにしている。</span></span></span></span></div>
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<span class="yiv1257733796224371903-04062012">つまり、<span class="yiv1257733796926362703-06062012"><span class="yiv1257733796926362703-06062012">BOSSが3.11のキーワードをスピットしながら、自分自身の闘っている姿をそこに重ね合わせることで、</span></span></span><span class="yiv1257733796224371903-04062012"><span class="yiv1257733796926362703-06062012">"3.11以降の社会"は日本に生きる人間にとって闘って行かなければいけないステージであることを思い起こさせる。嫌な言い方をすると、"3.11以降の社会"をBOSSの"リング(逆境)"に置き換えているのだけど、日本が抱えている問題に対峙して</span></span><span class="yiv1257733796224371903-04062012"><span class="yiv1257733796926362703-06062012">"闘う姿"を示す『TOTAL』は、いまの世の中で"闘っている人"や"闘おうとしている人"、あるいは"フラストレーションを抱えている人"にも響くような、ともすれば</span></span><span class="yiv1257733796224371903-04062012"><span class="yiv1257733796926362703-06062012">『Stilling, Still Dreaming』以上の普遍性を持ってリスナーに共感されるポテンシャルを持つ作品だろう。</span></span></div>
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<span class="yiv1257733796926362703-06062012">■D.O - The City Of Dogg</span></h3>
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<a href="http://1.bp.blogspot.com/-qagia7Pjke0/T834jQHQP9I/AAAAAAAAAXI/dBR7yhl8uA4/s1600/do.png" imageanchor="1" style="clear: left; float: left; margin-bottom: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" height="200" src="http://1.bp.blogspot.com/-qagia7Pjke0/T834jQHQP9I/AAAAAAAAAXI/dBR7yhl8uA4/s320/do.png" width="200" /></a></div>
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<br clear="all">D.Oの4作目『The City Of Dogg』も同じく、3.11をキーにした特徴的な作品だった。<br />
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まず本作に触れる前に、前作『ネリル&JO』を振り返って聴いてみると、大麻取締法違反でD.Oと共につかまった鈴川真一(元力士・若麒麟)がゲストで登場してくるところだけでなく、牢屋のなかで恋人と手紙のやりとりを行う曲や、裁判のなかで抱えていた葛藤を表現した曲等々、D.Oの身に降り掛かったいざこざがアルバム全体のテーマに大きく影響を与えていることがわかる。 すなわち、あの事件がD.Oに突きつけた"世間の常識 "という、D.Oにはハマれない世の中のルールに対する違和感と、そんなルールより自分自身が正しいと思うことを貫こうとする姿勢がこのアルバムの軸になっている。
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<iframe frameborder="0" height="36" src="http://www.youtube.com/embed/Hsl0EawhbGA?rel=0" width="444"></iframe>
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<i>"I'm Back"</i>
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『ネリル&JO』で描かれているこれらのテーマが、ラッパーの持つ"シリアスさ"と"エンターテイメント性の高さ"を如実に顕すギャングスタラップというフォーマットを通して、いかに受け取ることができるかは<a href="http://www.dommune.com/ele-king/review/album/001646/" target="_blank">ele-kingに公開された磯部涼のレビュー</a>に的確にまとめられているが、やはり、1stアルバム『Just Hustlin' Now』から、事件により発売が中止された2ndアルバム『Just Ballin' Now』へと順に聴いていくと、雷の系譜のボースティングのなかでところどころ顔を見せる言葉("良い悪いはいつ誰が決めた?"、"誰がつくったか知らねぇマヌケなルール"というような)が「ネリル&JO」以降、特別な意味をもっているように聴こえてくる。きっと例の事件が起こる前から"世間の常識"と"自分自身の常識"の間に横たわっている溝は、D.Oにとってラップのテーマになるものだったのだろう。<br />
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<iframe frameborder="0" height="36" src="http://www.youtube.com/embed/ksnokp8O76U?rel=0" width="444"></iframe>
<i>"N-WAY"</i><br />
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<iframe frameborder="0" height="36" src="http://www.youtube.com/embed/oFHfUAOWafc?rel=0" width="444"></iframe></div>
<i>"イラナイモノガオオスギル"</i><br />
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先の『ネリル&JO』のレビューが2011年3月11日に公開されているというのもどこか皮肉なものだけども、そもそも『ネリル&JO』のリリース時点では次に世に出てくるはずの作品は『Just Ballin' Now』のはずだった。しかし、3.11を経て発表された作品は『Just Ballin' Now』ではなく、EP『イキノビタカラヤルコトガアル』とアルバム『The City Of Dogg』だったことにはおそらく大きい意味がある。</div>
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<div color="black" face="inherit">
『イキノビタカラヤルコトガアル』は"命がけでサバイブしている兄弟たちへ、未来ある子供たちへ、無責任な大人たちへ"のシャウトからはじまり、原発問題で苦しんでいる人たちへ視線をなげかけながらラップが続いていく。そして、それは↓の"イキノビタカラヤルコトガアル"のPVでも聴くことのできるフックのフレーズのように、D.Oの経験を重ねてラップされているものだからこそ、単なる3.11以降の社会へのメッセージソングではない、D.O独自のメッセージソングとして強い輝きを放つ。</div>
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<div color="black" face="inherit">
<iframe frameborder="0" height="211" src="http://www.youtube.com/embed/4Q3ef4IUBOg?rel=0" width="366"></iframe></div>
<i>"イキノビタカラヤルコトガアル"</i><br />
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<div color="black" face="inherit">
続いてリリースされた『The City Of Dogg』でD.Oは『イキノビタカラヤルコトガアル』の"3.11以降の世界"のうえで更にトピックを広げ、ハスリングでサバイブしていく悪党のストリートライフをうたっていく。もちろん、そのラップの主軸は"自分自身の常識"以外は信じられなくなった世界と、その世界に対峙する悪党(ラッパー)の姿勢について。</div>
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<div color="black" face="inherit">
「コミュニティに向けたラップは怒りなんかに満たされるはずはなく</div>
ラッパーはそれを表現する必要がある<br />
誰でもがそのラップのうえでラッパーのカードをチェックできるように<br />
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誰かがそいつの上にあるカードを引っ張りたいと思えば</div>
<div color="black" face="inherit">
いつでも示して証明できるようにしておくのが本物のラッパー」("BAD NEWS")</div>
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「支離滅裂の例え話 説明もできないバカな大臣
ウソばっかり言う大人たち あれは会議という名の茶番劇<br />
イイ 悪い 間違い 正しい
騒ぎをおこすヤツはみんなおかしい
だまってこのまま死んでほしい
そう聞こえてきそうなお上の動き」("BAD NEWS")
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「イカれてるのは世の中の方 よく見てみろよオレじゃないだろ?」("bye bye")
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3.11以降に突きつけられた"世間の常識"の正体。それは、私腹を肥やそうとする人間の傲慢さ、それを野放しにしていた人間の無関心さ、罪や責任から逃れることに必死な人間の身勝手さ、正解が何かもわからない情報を垂流す人間の無責任さ、垂流される情報におどらされる人間の浅はかさ。悪党D.Oが自分のイリーガルな面をさらけ出してみせるのと同時に3.11で出てきた日本の問題をえぐり出してみせることは、悪党のレッテルの横の"世の中の常識"の底に潜む欺瞞をえぐり出してみせることと同義なのだ。微熱教授http://www.blogger.com/profile/15083927576509688324noreply@blogger.com66tag:blogger.com,1999:blog-26765657.post-46003114661789160072012-05-05T10:04:00.003+09:002012-05-07T21:35:59.878+09:00ヒップホップの"地域性"の話 ~Chief Keefと田我流とUCK Japanese Gangstaと~<h4>■Chief Keef "I Don't Like" & "Bang" </h4><a href="http://s220.photobucket.com/albums/dd173/debumegane/?action=view&current=keef.png" target="_blank"><img alt="Photobucket" src="http://i220.photobucket.com/albums/dd173/debumegane/keef.png" border="0" /></a><br /><h4>download : <a href="http://www.datpiff.com/Chief-Keef-Back-From-The-Dead-mixtape.324584.html" target="_blank">"Back from the Dead"</a>, <a href="http://www.datpiff.com/CHIEF-KEEF-Bang-Mixtape.268181.html" target="_blank">"Bang Mixtape"</a></h4>同郷のよしみかKanye Westが"I Don't Like"をリミックスしたということで、一般的な認知度も高くなってきた2012年ベストハイプのChief Keef。とはいっても、Chief KeefはすでにYouTubeの楽曲が数ヶ月で100万再生を軽く超えるくらいのプロップスをティーンエイジャーを中心に獲得しているので、Kanyeにしてみれば単なるフックアップ以上の"見返り"も見込んでいそうな感じではある。<br /><br />その"I Don't Like"が収録されている2ndミックステープ『Back From The Dead』だけでなく、1stミックステープ『Bang』からChief Keefはシカゴのティーンエイジャーから圧倒的な支持を受けていた。『Bang』のほとんどのビートを手がけたDJ KENNは山形県出身の日本人ビートメイカーで、2005年にニューヨークへ渡った後に、シカゴに流れ着きそこでChief Keefのオジさんに拾われた縁でChief Keefにビートを提供するようになったという逸話があり、しかも彼が手がけた楽曲のひとつ"Bang"が昨年に公開されてからこれまでに130万再生されてアメリカのキッズ達から注目をうけているという話は、ヒップホップでアメリカ人を納得させる日本のビートメイカーが出てきたという部分で日本のリスナーにとっても非常に興味をそそられるものに違いない。<br /><br /><iframe src="http://www.youtube.com/embed/2WcRXJ4piHg?rel=0" width="366" frameborder="0" height="211"></iframe><br /><i>"I Don't Like"</i><br /><br /><iframe src="http://www.youtube.com/embed/bEoDSTBY_Y4?rel=0" width="366" frameborder="0" height="211"></iframe><br /><i>"Bang"</i><br /><br />ただ、そのDJ KENNのビートも、『Back From The Dead』のYoung Chopのビートも巷にあふれかえる"Lex Lugerコピーのビート"と安易にくくってしまうことができるところが、彼らの作風を取り立てて評価するのが難しい部分でもある。Lex Lugerコピーの延長にある作風であればGunplayやFat TrelのほうがChief Keefより優れているという意見も多いだろうし、果たして、Chief KeefはWaka Flockaのようにオリジナルな存在なのか?Odd FutureやA$AP Rockyのように大金を獲得できるのか?<br /><br />しかもビートだけの話でなく、Chief Keefのラップも単調なギャング物なので、なかなかにChief Keefというラッパーの"秀でた部分"を見つけ出すことは難しい。しかし、それでもあえて言えば彼のクリエイトする楽曲の"ミニマルな部分"にあるのではないかと思う。Lex Lugerコピーのビートの中にも見え隠れするシカゴフットワークの断片と、Lil DurkやKing Louieといった周辺の端整なラッパーと比較してみても、ひときわ枯れて平坦で単調に推移していくラップが、どの曲でも同じように何度も何度も繰り返されることで、高い中毒性を生み出す。<br /><br /><iframe src="http://www.youtube.com/embed/TrcLaJ_G7Ts?rel=0" width="444" frameborder="0" height="36"></iframe><br /><i>RP Boo "Off Da Hook"</i><br /><br /><iframe src="http://www.youtube.com/embed/18sx8F1ZCVo?rel=0" width="444" frameborder="0" height="36"></iframe><br /><i>DJ Rashad "Reverb"</i><br /><br />ミニマルなビートとラップが中毒性の高い世界を作り出すというところで、やはりWaka Flockaを彷彿とさせる存在ではあるけども、Rich KidzやTravis PorterといったATLの10代のラッパーと比較すると、Chief Keefの殺伐とした空気感は独特だ。この若いギャングスタラッパーが持つ閉塞感はシカゴハウスやフットワーク、The OPUSやRubber Roomのソレとも非常に似通っているけども、果たしてシカゴという地域が醸し出すものなのだろうか…。<br /><br /><iframe src="http://www.youtube.com/embed/9TPhf-OY5v0?rel=0" width="444" frameborder="0" height="36"></iframe><br /><i>Rubbe Room "Acid"</i><br /><i> </i><br /><iframe src="http://www.youtube.com/embed/uC11NLBi79w?rel=0" width="444" frameborder="0" height="36"></iframe><br /><i>The Opus "Road Seldom Traveled"</i><br /><br /><h4>■ 田我流 『B級映画のように2』</h4><div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="http://1.bp.blogspot.com/-SQ1M_A3AzDE/T6NpZ8EQv5I/AAAAAAAAACo/U6D_zqiJNBw/s1600/dengaryu.jpg" imageanchor="1" style="clear: left; float: left; margin-bottom: 1em; margin-right: 1em;"><img src="http://1.bp.blogspot.com/-SQ1M_A3AzDE/T6NpZ8EQv5I/AAAAAAAAACo/U6D_zqiJNBw/s200/dengaryu.jpg" width="200" border="0" height="200" /></a></div><br clear="all">ここで、話を日本のヒップホップに移す。<br /><br />2011年に公開され、一部の映画ファンからの評価も高かった映画『サウダーヂ』(監督:富田克也)に準主役として登場していた田我流の2ndアルバムがこの4月にリリースされた。『CDジャーナル』の2012年5月号インタビューでは「謎を多くしているんですよ。変なスキット入れたり。その謎について考えてもらいたい」ということらしく、このアルバムの『B級映画のように2』のタイトル名にも意味はあるが、それはリスナーの想像にまかせているようだ。ただ、『サウダーヂ』で富田克也監督との仕事を通して「今までと曲の書き方が180度くらい変わ」ったという発言や、そのアルバムの題名を見ただけでも、映画がこの作品に落とした影響の大きさを窺い知れることができるし、実際に『サウダーヂ』を観たリスナーにしてみると、彼が"ロンリー"や"Resurrection"で見せる鬱屈は、そのまま天野猛(田我流の役名)が甲府のシャッター街の生活のなかで抱えているもののように、より視覚的なリアリティをもって聴くことができるはずだ。<br /><br /><iframe src="http://www.youtube.com/embed/-BA0uIamGP8?rel=0" width="366" frameborder="0" height="211"></iframe><br /><i>"Resurrection"</i><br /><br />"STRAIGHT OUTTA 138"でのECDとの共演曲などで、この作品が3.11以降の世界に住む人間が抱えた怒りも表現しているところもポイントだ。<a href="http://amebreak.ameba.jp/interview/2012/04/002745.html" target="_blank">Amebreakのインタビュー</a>では、「"個"と"社会"、"自分"と"世間"って同じだ」という発言もあるけども、田我流本人が抱える鬱屈が、3.11以降の国家や政治に対する不満や怒りとあわさって、渾然としたより生々しく聴かれるものになっている。パーソナルな感情が"社会の持つ問題"にフォーカスされていくという構造を見ても、2012年ならではの作品と言える。<br />(リリック面では、"ハッピーライフ"で描かれる「普通の人」は、自分たちの隣で生活している人たちであり、3.11以降の問題をつくってきている<怒りの対象にもなりうる>人たちでもあるということを露出させていて面白かったのだけど、話がずれるので割愛する)<br /><br />ただ、『B級映画のように2』は地方都市に住む田我流だからこそ作ることのできた"地方のヒップホップアルバム"ではあるに違いないが、その楽曲に甲府の"地域性"が根付いているかという点に関して言うと、かなり疑わしい。『B級映画のように2』で描かれるものは、これまで書いてきたとおり「地方で活動することに対する鬱屈」や「社会への不満や怒り」だ。その魅力はあくまで田我流のパーソナルな部分にあって、甲府という土地自体はこの作品では他の地方都市にも代替可能なものだろう。<br /><br />さて、では『B級映画のように2』以前ではどうだったか?<br /><br /><iframe src="http://www.youtube.com/embed/jPDbyLGjYFk?rel=0" width="366" frameborder="0" height="211"></iframe><br /><i>"墓場のDigger"</i><br /><iframe src="http://www.youtube.com/embed/nE1nzTE5ESA?rel=0" width="366" frameborder="0" height="211"></iframe><br /><i>"ゆれる"</i><br /><h4>■ Mr.OUTLAW a.k.a. UCK Japanese Gangsta 『SAMURAI SPIRITS』<br /></h4><div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="http://4.bp.blogspot.com/-L76BKkkpfFo/T6PdFFyBb4I/AAAAAAAAADE/uHyXf82tyT8/s1600/UCK.jpg" imageanchor="1" style="clear: left; float: left; margin-bottom: 1em; margin-right: 1em;"><img src="http://4.bp.blogspot.com/-L76BKkkpfFo/T6PdFFyBb4I/AAAAAAAAADE/uHyXf82tyT8/s200/UCK.jpg" width="200" border="0" height="196" /></a></div><br clear="all">日本のヒップホップを対象に、あらゆるインターネット上の音源をアーカイブするサイト『JPRAP.com』が発見したMr.OUTLAW a.k.a. UCK Japanese Gangstaの音源に触れたときは驚いた。元々、2011年2月にYouTubeに公開された悪羅悪羅系をレペゼンする楽曲も、トランス系のビートのうえでの「悪羅悪羅」連呼というこれまでに聴いたことのない異形さを持ったストレートな表現に衝撃を受けていたのだけど(過去には悪羅悪羅系として見られるラッパーが於菟也がいたけどそういえば彼もUCKと同じく埼玉で活動しているラッパーだった)、3.11を経てつくられた2ndアルバム『SAMURAI SPIRITS』に収録されている曲は更にその方向にブラッシュアップかけたような内容になっていた。<br /><br /><iframe src="http://www.youtube.com/embed/RNNs7LRLblI?rel=0" width="444" frameborder="0" height="36"></iframe><br /><i>Mr.OUTLAW a.k.a. UCK Japanese Gangsta "Territory ~悪羅悪羅~"</i><br /><i> </i><br /><br /><iframe src="http://www.youtube.com/embed/UWWqZfO_zhU?rel=0" width="444" frameborder="0" height="36"></iframe><br /><i>於菟也 "forgive me"</i><br /><br />旧車會がバイクの爆音をなびかせる。UCKがトランス系ビートにラップをのせて3.11に亡くなった方への追悼をうたう!ダメージをうけた社会に対するメッセージをささげる!Stop The 原発!!<br /><br />「3.11に大事な人を亡くした方々/<br />なかなか立ち直れなくて当然/<br />あの日以降 ただ呆然と月日は過ぎ行く/<br />いくら泣きじゃくっても帰らないんだ.../<br />俺らが叫ばないか?/心の被災者を忘れてないか?」("For JAPAN")<br /><br />「勤め人が仕事頑張れば 金を使えて経済は潤う/<br />個人や法人が潤う イコール 金が動く/<br />金が動けば国は税収入が増え 凄く立派な社会貢献/<br />テメー事を頑張るのも復興 OK!!」("For JAPAN")<br /><br /><br /><iframe src="http://www.youtube.com/embed/rcCYfpJ7t4U?rel=0" width="444" frameborder="0" height="36"></iframe><br /><i>"For JAPAN"</i><br /><i> </i><br /><iframe src="http://www.youtube.com/embed/L_ti0KR4xic?rel=0" width="444" frameborder="0" height="36"></iframe><br /><i>"旧車會 ~宮城魂~"</i><br /><br />3.11というキーワードを切り出すと↑の楽曲が特徴的なのだが、リリックも全て直球なので、1stアルバム『MESSAGE』から『SAMURAI SPIRITS』を通して聴くとUCKの人となりがとてもよくわかる。1度目の結婚がDV原因で破局したこと、愛情が強すぎて相手を拘束するヘキがあること、地元の先輩に対してものすごく恩義を感じていること、「Forever」と彫ったタトゥーの意味……。(ちなみに、<a href="http://www.juicemusic.com/clubjuice/1005/03_UCK.html" target="_blank"></a><a href="http://www.juicemusic.com/clubjuice/1005/03_UCK.html" target="_blank">UCK青少年育成を目的としたNPO法人まで立ち上げている</a>。)<br /><br />少し話が変わるけども、『Rev3.11』から発刊した電子雑誌『<a href="http://dopetm.com/2012/04/22/2130.html" target="_blank">REV MAG vol.1</a>』で、靴底というブロガーに"とある地方での音楽シーンのお話"という記事を寄稿いただいた。この記事では「日本の地方で形作られたヒップホップの姿」が実話/フィクションを織り交ぜながら描かれているが、この記事の話で面白いのは、地方の"先輩"が興味を持っているのはカーオーディオでハマる『スーパーユーロビート』のような音楽であって、CDショップでもクラブでもライブハウスでも、勿論PCで聴かれるような音楽でもないというところだ。車の中こそが"先輩"たちの現場だというところに説得力がある。思い返してみると、私が学生のときにも地元の友達から借り出されて夜中ずっとドライブしているときにはカーステレオからユーロビートが鳴り響いていた。<br /><br />おそらくこの記事を書かれたときに靴底氏も意識していたと思われるが、この集団が作り上げたヒップホップの形はこれまで紹介してきたUCKの作り出しているものと近い。勿論それは地方で活動している人間だからこそ作り上げることのできるヒップホップの形に違いないけども、彼らの音楽に影響を与えているのは彼らが生活する地域のなか、もっと言ってしまえば彼らが活動する集団やチームのなかに育まれている"カルチャー"だ。<br /><br />その"カルチャー"は人にとっては、ヒップホップカルチャーであり、日本語ラップカルチャーであり、クラブカルチャーであり、ドラッグカルチャーであり、車文化であり、ゲーム文化であり、アニメ文化だったりする。過去に出会った真新しい(と思えた)音楽を思い返してみれば、それはそれまで自分が知らなかったカルチャーのなかで育まれていたものだったという例が確かにある。カルチャーがローカルな地域のなかで様々に変換され、翻訳/誤訳された果ての表現――それこそを私たちは音楽の持つ"地域性"と呼んでいるのだろう。微熱教授http://www.blogger.com/profile/15083927576509688324noreply@blogger.com34tag:blogger.com,1999:blog-26765657.post-42494132086382557942012-02-02T21:59:00.044+09:002012-02-28T22:27:51.616+09:00SNEEEZE - DEVICE(発売前レビュー)と "ニュータイプ"がつくるリアルについて<a onblur="try {parent.deselectBloggerImageGracefully();} catch(e) {}" href="http://3.bp.blogspot.com/-0PGLN0DaIRA/T0yveMQMFsI/AAAAAAAAACU/lV1dwwT0Kyc/s1600/sneeeze.jpg"><img style="float:left; margin:0 10px 10px 0;cursor:pointer; cursor:hand;width: 160px; height: 160px;" src="http://3.bp.blogspot.com/-0PGLN0DaIRA/T0yveMQMFsI/AAAAAAAAACU/lV1dwwT0Kyc/s320/sneeeze.jpg" border="0" alt=""id="BLOGGER_PHOTO_ID_5675194847833208802" /></a><br /><br clear="all">SEEDAから端を発したハスリングラップの"リアル"という概念についてはこのブログで過去にいろいろ書いてきたけども、今回はJPRAP.comのbenzeezyが主宰するレーベル『rev3.11』からリリースされるラッパーSNEEEZEのアルバム『DEVICE』の発売前レビューやネットから発信される若手ラッパーの音源の紹介を交えながら、ハスリングラップから脱皮して日本のヒップホップに新しく芽吹く"リアル"について書こうと思う。<br /><br />まずは、昨年にミックステープ『Joon In Not My Name』をドロップしたMOMENTの音源から。<br /><br />MOMENT "外人FLOW"<iframe allowfullscreen="" src="http://www.youtube.com/embed/U6r1YsbkPuI" frameborder="0" height="35" width="444"></iframe><br /><br />自らを"外人ラッパー"と名乗るように、韓国から日本に留学してきたコリアンラッパー、MOMENT。↑のYouTubeではリリックが出てくるのでわかると思うが、外人ラッパーといいながらも日本語がとても流暢で、韓国語と英語の3ヶ国語を巧みに操りながらラップをする。この曲でMOMENTは、母国でどんなことを教えられて、どういうポリシーを持ちながら日本でラップをしているのかを丁寧にラップしているが、日本語と英語と韓国語という3つの言語を行き来しながらラップすることで1つの言語でラップするよりMOMENTというラッパーの持つバックボーンの複雑さと、そのバックボーンから生まれるラップに対する想いの強さを効果的にあらわしている。<br /><br />MOMENT "Nation's Best Kept Secret"<br /><iframe allowfullscreen="" src="http://www.youtube.com/embed/6i1JPfM39A8?rel=0" frameborder="0" height="35" width="444"></iframe><br /><br />↑はTwitterから火がついてMOMENTの曲のなかで再生数を最も稼いだ曲。コンシャスなラップという意味では右翼ラッパーとして名を馳せるshow-kの曲もTPP問題やマスメディアへの批判、脱原発への反対論など非常に過激なテーマを扱っていてヒップホップ以外の分野でも物議を醸しているけども、"外人ラッパー"であるMOMENTが日本人の政治への関心の薄さに警鐘を鳴らすという、show-kとはスタンスは違えど同じくらい過激な内容の曲。(余談だけど、日本人を批判するこの曲のことをshow-kが評価していたのはちょっと興味深い)<br /><br />SALU "Taking a Nap"<br /><iframe allowfullscreen="" src="http://www.youtube.com/embed/w8rHyFKBkFw?rel=0" frameborder="0" height="255" width="444"></iframe><br /><br />次の動画はBach Logicが設立したレーベル『ONE YEAR WAR MUSIC』からの契約第一弾アーティストとなったSALUのデビューアルバム『IN MY SHOES』からの1stシングル"Taking a Nap"。SALUはネット上の動画インタビューで「Lil WayneとBob Marleyから影響を受けた」と答えていたけども、実際の曲を聴いてみるとラップスタイルやリリックのスケール感に彼らの影響をたしかに感じさせるところが面白い。<br /><br />このPVを見ると視覚的にわかるけど(実際のリリックは動画下のコメントに記載されている)、国、世界、地球といった規模のレイヤーでSALUの視点が浮かび上がって、自分達の生活のずっと先にどうしようもなく抱える大きな問題へフォーカスしていく。地球規模にまで視界が広がっていくという意味ではShig02や降神あたりも彷彿とさせるが、昨年の年末にリリースされたミックステープ『Before I Singed』の最後に収録された↓の曲も同じように非常にスピリチュアルで、Shig02や降神と同じく熱狂的なファンを生みだしそうな雰囲気を持つ。<br /><br /><blockquote class="tr_bq">「言葉は世界を彩るマジック/ただ文字・音・振動ではない/<br />世界が求めているのは愛/でもSEXに溺れて見える訳ない/<br />ただ無限に続いているまたトンネルくぐっている<br />ことにも気づかず"無限"の意味をググっている/<br />トンネルの外はゼロだけど神の名の下に弔いつづける」("Nightmares of the Bottom")</blockquote><br />SALU "Nightmares of the Bottom"<br /><iframe allowfullscreen="" src="http://www.youtube.com/embed/Mk8UNAFyBnU?rel=0" frameborder="0" height="331" width="444"></iframe><br /><br />自分と音楽業界の状況を"看板に描かれている女の子"になぞらえてラップしたという2ndシングル"THE GIRL ON A BOARD"もアルバムリリースに先駆けて公開されたが、生活の先に潜む深くて大きな問題を描きだすという構造自体は前の2曲と同じで、レーベルがSALUを形容している"ニュータイプ"という言葉のなかにはラッパー個人の生活の話しだけには留まらず、"もっと広い視野をもっている"新しい時代のラッパーという意味合いが含まれていそうだ。<br /><br />"外人ラッパー"ながら日本の国の問題を考えてスピットするMOMENTや、SALUのギミック……私達個人の生活のずっと先にある、いずれは誰も避けることのできないとても大きな問題までマクロに視点が広がっていくという点は、SEEDA『花と雨』から始まったハスリングラップがラッパー個人の生活に対しミクロにフォーカスして鬱屈めいた個々の問題を描き出していたことと対比すると、確かに新しい切り口(ニュータイプ)のようにも思える。<br /><br />……とは言っても、コンシャスな切り口、視点がマクロに広がっていくというギミックは、3年前にSEEDAが引退宣言アルバム『SEEDA』で先駆けて既に使っていたわけでそれ自体が新しいというものではない。しかしもし現在、↑に挙げたMOMENTやSALUの楽曲を聴いて"何か新しいもの"を感じたのであれば、それはいまの日本の状況がMOMENTやSALUのうたっている内容に強度を与えているからなのではないかと思う。<br /><br />SEEDA "DEAR JAPAN"<br /><iframe allowfullscreen="" src="http://www.youtube.com/embed/x_0X5Smw1RI?rel=0" frameborder="0" height="255" width="444"></iframe><br /><br />SEEDA "HELL'S KITCHEN"<br /><iframe allowfullscreen="" src="http://www.youtube.com/embed/vVpdkEO_-Ds?rel=0" frameborder="0" height="255" width="444"></iframe><br /><br />↓の曲は2011年3月11日のわずか2日後、まだまだ混乱が冷めないなかでYouTubeにアップされたものだが、震災の起こるまえまで「何もしないで生きるということに勇気を与えたい」というようなことをインタビューで答え、無意味な日常をただ漂うような作品ばかりをリリースしていたS.L.A.C.K.が混沌のなかでこのラップをせざるを得なかったという状況自体が相当にシリアスにうつった人も多かったに違いない。当時この曲を聴いたとき、TVの前でありえないことが立て続けに起こる状況が"リアル"になって、無意味な日常がどこかに遠いところに行ってしまったターニングポイントのように感じられた。<br /><br />S.L.A.C.K.、TAMU、PUNPEE、仙人掌 "But This is Way"<br /><iframe allowfullscreen="" src="http://www.youtube.com/embed/iz44mzhQO3Q?rel=0" frameborder="0" height="35" width="444"></iframe><br /><br />2011年3月11日を境に意識したくなくても意識しなければならない山ほどの問題が目の前に積まれ、同じように見えるはずの景色が変質した。KLOOZがインタビューで「震災前と震災後でshow-kの見え方が180度変わった」と言っていたことにも象徴的だけど、『SEEDA』がリリースされた2009年当時より"大きな問題"が私達にとってリアルに響くようになったということではないか。<br /><br />JPRAP.comの管理人benzeezyが主宰する『rev3.11』は、日本のヒップホップで起きている"変質"そのもの扱うレーベルとしてネーミングしたものだという。いや応なく、考え方や意識が変わってしまったアーティストとリスナーが繋がる機会を提供するレーベルだということだろう。神戸在住のラッパー、SNEEEZEはネット配信オンリーのそのレーベルからアルバム『DEVICE』をリリースする。<br /><br />SNEEEZEのラップの特徴は"精神的にダメージを食らいながらも、そのプレッシャーを跳ね返して前に進もうともがく姿勢"にあるとbenzeezyは言う。<br /><br /><blockquote class="tr_bq">「諦めない事が強さなら/捨てれるかな自分の弱さ/<br />この世はさ/残酷で無残にも不平等な物でさ<br />妨げたい/今下げられない/ピンチに3分だけ現れない/<br />オレはEvery day Every night/戦いの中 昨日の自分を越えたい<br /><略><br />痛くはないでも/もうここには居たくはない<br />Do or die/やるしかない/ためらっても振られるDice<br />運命 偶然 必然がごちゃ混ぜ/運も味方につけてRun way<br />どこまで行けるかさ/なんてじゃなくて息が続くまで走るだけ」("Get Ready")</blockquote><br />SNEEEZEがあらわすこの種の葛藤は、彼が1995年に起きた阪神淡路大震災で被災して、その頃から抱えているトラウマから生まれているものだ。もしbenzeezyが言うようにそのトラウマにぶつかって"精神的にダメージを食らいながらも、そのプレッシャーを跳ね返して前に進もうともがく姿勢"をSNEEEZEのラップから感じられるのであれば、それは3.11で意識を変えられた人々にも届くものにもなりうるのではないか。<br /><br />たとえば、このアルバムに収録されている"Doubt"は東日本大震災以降の国の政治や東京電力にまつわるメディアや情報に対する不信をテーマにつくられたような、『DEVICE』のなかでも最もコンシャスな曲だけども、そんな中にも少しばかりの希望が描かれる。<br /><br /><blockquote class="tr_bq">「ネット,メディアに人は踊らされ/We can't control/でも人は流れ<br />涙またどこかで枯れても落ちても/Nobody stop that<br />Hard pressure 波に飲み込まれる/現実逃避ドラマのワンショット<br />TV, NEWSにBadな話に/さえない政治に無意味な正義<br />何かを変えれば良くなる/時間はかかるけどまた良くなる<br />喜怒哀楽上手く使い分け/Pressure Pressuer/上手く潜りに抜ける」("Doubt")</blockquote><br /><br />MOMENTの曲は先に挙げたコンシャスなものより大学での生活やモラトリアムや、身の周りの苛立ちや悩みをうたい、『DEVICE』のSNEEEZEの曲は自己の葛藤から生まれる。そういった意味では彼らのラップはハスリングラップでうたわれていた(彼らが自分の身近な物事についてうたっていた)"リアル"にとても近い。<br /><br />しかし彼らの怒りや葛藤(という単語があらわすものより彼らの曲はもっとクールに聴こえるが)が私達の目の前に立ち塞がり、いずれは解決しなければならない"問題"に向かうとき、それらの問題が"リアルなもの"として浮かび上がってくる。SWAGと言われるUSのヒップホップのモードをファッショナブルに着こなしながら、この新しいレイヤーの"リアル"を提示しているラッパーを"ニュータイプ"と呼ぶのなら、なんとなく説得力はある。微熱教授http://www.blogger.com/profile/15083927576509688324noreply@blogger.com13tag:blogger.com,1999:blog-26765657.post-55773318933518764252012-01-01T10:12:00.057+09:002012-01-04T23:49:53.436+09:002011年"ときチェケ"レコード大賞14作品ハッキリ言って、他のどのメディアやブログを見ても同じようなリストになっているので、あまりリスナーの皆様の参考にならないと思われる2011年"ときチェケ"レコード大賞リスト。でもまぁ、どのメディアも同じ作品を挙げているということは、逆に言えばコレだけ聴いておけば2011年は大丈夫ということだ。…とお茶を濁して、2012年もよろしくお願いします。<br /><br /><br /><a href="http://s220.photobucket.com/albums/dd173/debumegane/?action=view&http://www.blogger.com/img/blank.gifamp;current=winners145.png" target="_blank"><img src="http://i220.photobucket.com/albums/dd173/debumegane/winners145.png" border="0" alt="Photobucket"></a><br /><br clear="all">■勝ち組部門<br />・Jay-Z & Kanye West "Watch the Throne"<br />・Drake "Take Care"<br /><a href="http://www.youtube.com/watch?v=BoEKWtgJQAU" target="_blank">"Otis"のPV</a>に出てくる改造車をひと目見ただけでも、私たち一般庶民には「俺らめちゃめちゃ金と持っているぜ」感を存分味わえるが、本作『Watch The Throne』をつくるためにホテルの1フロアを貸しきり、各プロデューサ陣に1部屋ずつ与え、ジェイ御大とカニエ先生が自分たちの部屋に1人ずつ呼び出してビートのダメ出しするという部活合宿のセレブ版制作スタイルを聞き、2012年勝ち組大賞を与えることを決定。毎度、作風を変えながらも決して軸がブレないお2人には頭が下がります。<br />勝ち組部門もう1つのノミネート作品は、Simi Labの"Uncommon"ばりに「非リアって何?非モテって何?」と迫ってくるようなアルバム『Take Care』。愛に飢えてしょうがないモテ男の苦悩(そんなもん知るか!)を色気たっぷりのあま~いコーティングで固めた『Take Care』には勝ち組部門リア充大賞を与える。<br /><br /><br /><a href="http://s220.photobucket.com/albums/dd173/debumegane/?action=view&current=hypes145.png" target="_blank"><img src="http://i220.photobucket.com/albums/dd173/debumegane/hypes145.png" border="0" alt="Photobucket"></a><br /><br clear="all">■ハイプ部門<br />・Tyler, the Creator "Goblin"<br />・ASAP Rocky "LiveLoveA$ap" <a href=http://www.datpiff.com/ASAP-Rocky-LiveLoveAap-mixtape.278798.html" target="_blank"><span style="font-size:85%;">:download</span></a><br />・Main Attrakionz "808s & Darkgrapes II" <a href=http://mishkanyc.bandcamp.com/album/main-attrakionz-808s-dark-grapes-ii" target="_blank"><span style="font-size:85%;">:download</span></a><br />サマソニ出演が決まり日本でもロックファンを中心に広いプロップスを得たODD FUTUREの中核タイラーさんの『Goblin』には日本ベストハイプ賞、アンダーグラウンド感(≒アマチュア感)ばりばりの"Peso"が耳の早いリスナーから支持を集め始めたかと思った次の瞬間には2億3000万円のディールを勝ち得ていたA$APさんに世界ベストハイプラッパー賞を進呈。「Aesop Rockと名前が似ていて紛らわしいね」とか言っていた頃が早くも懐かしい。<br /> ベストハイププロデューサ賞はMain Attrakionz 『808s & Dark Grapes Ⅱ』。『Live Love A$AP』はあくまでラッパーがメインで素材がそれを支えたクラウドラップ作品だけども、『808s & Dark Grapes Ⅱ』はメイン不在のなか、Squadda Bの人脈を手繰り寄せてありとあらゆるトラックメイカーをぶち込んだ闇鍋。それでも、下手糞なラップも含めて見事にハーモナイズしているあたり、さすが時代の寵児といったところか。<br /><br /><br /><a href="http://s220.photobucket.com/albums/dd173/debumegane/?action=view&current=cohesive145.png" target="_blank"><img src="http://i220.photobucket.com/albums/dd173/debumegane/cohesive145.png" border="0" alt="Photobucket"></a><br /><br clear="all">■クオリティ&コンセプト部門<br />・Lil B "I'm Gay"<br />・Kendrick Lamar "Section 80"<br />・G-Side "The ONE...COHESIVE"<br />『I'm Gay』、『Bitch Mob』、『BasedGod Veli』、『The Silent President』、『Illusions Of Grandeur』、『I Forgive You』、『Evil Red Flame』、『Black Flame』、『Gold House』……2011年もいったい何枚のミックステープをリリースしたのか正直その全てを追え切れている自信もないLil Bさんが2010年に引き続きノミネート。しかも、それらすべてのコンセプトや音楽性が微妙に変えられ、違った印象を残すところも流石。それぞれがミックステープの海賊盤っぽさというか、アマチュア感("Based"って"アマチュアリズム"ってことなんじゃない?)を残す中、商業リリースなだけに一番まともでパッケージ感とコンセプト力のある『I'm Gay』に賞を送りたい。<br />あとは、Lil Bとは真逆に隙という隙がなく、純粋に作品的なレベルが高いKendrick Lamar『Section 80』とG-Side『The One』を聴いておけば良いんじゃないでしょうか。この2名には新人賞を与えます。"新人"じゃない?いいんだよそんなの。<br /><br /><br /><a href="http://s220.photobucket.com/albums/dd173/debumegane/?action=view&current=thu145g.png" target="_blank"><img src="http://i220.photobucket.com/albums/dd173/debumegane/thu145g.png" border="0" alt="Photobucket"></a><br /><br clear="all">■ギャングスタ部門<br />・AraabMuzik "Electronic Dream"<br />・Waka Flocka Flame, Trap-A-Holics "DuFlocka Rant (10 Toes Down)" <a href="http://www.livemixtapes.com/mixtapes/13740/waka_flocka_flame_duflocka_rant.html" target="_blank"><span style="font-size:85%;">:download</span></a><br />・Meek Mill, DJ Drama "Dreamchasers" <a href="http://www.datpiff.com/Meek-Mill-Dreamchasers-mixtape.256292.html" target="_blank"><span style="font-size:85%;">:download</span></a><br />実はほとんど毎年「果たしてヒップホップなのか?」と疑問を持たれる作品をリストに入れているのだけども、その"麒麟枠"にAraabMuzikをセレクトイン。他人のヒット曲へアマチュア感丸出しなリミックスを施しただけで、あたかも自分の手柄扱いする姿勢がベストギャングスタということで。<br />あとは、Lex Lugerのビートを用いずとも充分"金太郎飴的なパンクミュージック"を量産するWakaさんと、RickRossからディールを得てヒット作を連発するくらい運気がまわってきた感のあるMeekさんが入賞。Wakaさんはメジャーからディールを得ようとも同じようなパンクミュージックをギャングスタイルで作った前例があるけど、果たしてMeekさんはメジャーからスタンスを崩さず良作をクリエイトできるか?<br /><br /><br /><a href="http://s220.photobucket.com/albums/dd173/debumegane/?action=view&current=loosers145.png" target="_blank"><img src="http://i220.photobucket.com/albums/dd173/debumegane/loosers145.png" border="0" alt="Photobucket"></a><br /><br clear="all">■負け組部門<br />・Danny Brown "XXX" <a href="http://www.mediafire.com/?e32blwd1d8fyq5u" target="_blank"><span style="font-size:85%;">:download</span></a><br />・Mr. Muthafuckin' eXquire "Lost In Translation" <a href="http://mishkanyc.bandcamp.com/album/mr-muthafuckin-exquire-lost-in-translation" target="_blank"><span style="font-size:85%;">:download</span></a><br />・SPVCXGHXZTPVRRP "Blvcklvnd Rvdix 66.6 (1991)" <a href="http://www.mediafire.com/?r7iqvyaki7v8ewu" target="_blank"><span style="font-size:85%;">:download</span></a><br />ドラッグとセックスに塗れながら何の充足感もなく30歳になってしまった絶望と怨念だけがパッケージングされた『XXX』が負け組部門の堂々たる大賞を獲得。成功への道をひた走るMac Millerに対して「(もしMac Millerに会ったら)オマエのことが嫌いすぎて申し訳ないと言いたい」とインタビューで答えるって、どんだけリア充が嫌いなんだ。あとコレをベストラップアルバムに選ぶ批評家各位も相当病んでいると思う。<br />SPACEGHOSTPURRPのビデオ(<a href="http://www.youtube.com/watch?v=xcgHmVgzPzw" target="_blank">http://www.youtube.com/watch?v=xcgHmVgzPzw</a>)とMr.Muthafuckin' eXquireのミックステープジャケは不気味すぎて、「往年のアンダーグラウンドヒップホップからの影響云々」とか多くを語らずも負け組と認定。微熱教授http://www.blogger.com/profile/15083927576509688324noreply@blogger.com1tag:blogger.com,1999:blog-26765657.post-75994126968780779802011-11-14T20:00:00.080+09:002011-11-16T07:41:00.483+09:00Simi Lab - Page 1 : ANATOMY OF INSANE<a onblur="try {parent.deselectBloggerImageGracefully();} catch(e) {}" href="http://3.bp.blogspot.com/-32RQQe0eroA/TsJXpUg5t-I/AAAAAAAAAT4/N5PWCv5-sMY/s1600/similab.png"><img style="float:left; margin:0 10px 10px 0;cursor:pointer; cursor:hand;width: 160px; height: 160px;" src="http://3.bp.blogspot.com/-32RQQe0eroA/TsJXpUg5t-I/AAAAAAAAAT4/N5PWCv5-sMY/s320/similab.png" border="0" alt=""id="BLOGGER_PHOTO_ID_5675194847833208802" /></a><br /><br clear="all">自ら「ヒューストンのヒップホップに影響を受けた」と公言するA$AP Rockyは、様々なラッパーと比較されるようにNYが出自ながらもイーストコーストのマナーに縛られず、西海岸・中部・南部のあらゆるスタイルを吸収して体現する。なかなか決め手となる作品が無かった"クラウドラップ"という括りで見ても、Clams Casinoを中心に組まれたミックステープ『LiveLoveA$AP』はその決定打と言い切ってしまえるほどのクオリティを獲得し、A$AP Rockyは爆発的なプロップスを勝ち得たうえで名実共に2011年の顔となった。<br /><br />しかし、「マイノリティがつくる音楽の独自性」というテーマでいえば、マッチョイズムが柱になっているヒップホップ・ジャンルの中であえて『I'm Gay』と銘打った作品をリリースしたり、有料リリースした作品をファンのために無料DL公開したり、ヒップホップマナーに従わないビートにラップしてみせたりしながらLil Bが挑戦しつづけているけども、こと楽曲の"独自性"という面ではLil Bほど積極的にビートやラップのあり方を模索しているアーティストはいないのかもしれない。件のA$AP Rockyにしても、Odd Futureにしても、その存在以上に楽曲のスタイル(ラップスタイルやビート)が例に無いほど斬新かと問われれば、あらゆるラッパーからの影響が垣間見れるだけにどうしても疑問符が付く。(Tyler, the Creatorのラップがどんなものに影響を受けているかについては<a href="http://p.booklog.jp/book/23955" target="_blank">"OMAG! OFWGKTA!!!"</a>に詳しい)<br /><br />こういった海外の旬なラッパーの持つ楽曲そのものを超越した"面白さ"はSimi Labの魅力にも通じるところがある。以下は各メディアのSimi Labインタビュー。<br /><br /><ele-kingインタビュー><br /><a href="http://www.dommune.com/ele-king/features/interview/001545/" target="_blank">http://www.dommune.com/ele-king/features/interview/001545/</a><br /><Queticインタビュー><br /><a href="http://www.qetic.jp/?p=74136" target="_blank">http://www.qetic.jp/?p=74136</a><br />インタビューでも度々話題にあがる"Walk Man"は↓の動画を参照のこと。<br /><br /><iframe width="444" height="276" src="http://www.youtube.com/embed/kWzaJhU1mkY" frameborder="0" allowfullscreen></iframe><br /><br /><br />ひとりひとりが自分達のクルーの実態を把握してないというところ、一見外人のラッパー集団に見えるが実は全くネイティブな日本人だというところ、クルーの関係性や身体的な特徴もふくめてSimi Labは非常にファジーな集団だ。更に↓の動画を観てもらえればわかるとおり、SWAG系のラッパー達が"自分のラップ(スキル)は特別だ"というところにプライドを置いていることに対して、"自分たちの存在はUncommonだ"というスキル以上にファジーな部分に軸があるところが興味深い。<br /><br /><iframe width="444" height="276" src="http://www.youtube.com/embed/C7oCTSf6cuk" frameborder="0" allowfullscreen></iframe><br /><br /><br />Lil BやA$AP達が持つ"とらえどころのない魅力"は、彼らがマイノリティであることに自覚的で、それをあらゆる手段で表現しようとしているからこそ生まれてくるように思える。楽曲だけでなく、ブログやTumblrやYouTubeやTwitterに垂れ流され断片的に山積みされていく情報が、アーティストの"世間からズレた感覚"や、なにか"普通じゃない感覚"を生み出すとき、それはリスナーにとって非常に刺激的なスパイスをもたらす。Wu-Tang Clanがはじめて世に出てきた時代と比べれば、アーティストにとってはより簡易に、リスナーにとってはより視覚的に。<br /><br />Simi Labの楽曲は聴く人が聴けば、単なる90年代後半~00年代前半に数多くリリースされていたローファイなヒップホップの焼き直しに聴こえるだろう。しかも、そこでラップされている内容には彼ら個人個人の"イルで不敵な視点"以上のものは無い。しかし、彼らの作品は決してそれ単体で聴くものではなく、YouTubeに流れる映像、ネット上の情報やイメージにまず触れてみることこそが重要なのだと思う。それらにあらかじめ触れていてこそ、『Page 1 : ANATOMY OF INSANE』での彼らのファジーな存在感が濃くなるのだから。微熱教授http://www.blogger.com/profile/15083927576509688324noreply@blogger.com2tag:blogger.com,1999:blog-26765657.post-69944222684705578242011-09-25T22:45:00.052+09:002011-09-26T21:06:45.374+09:00ham-R - Stay Hungry Stay Foolish & Seven Demos & Milestones & Future Vintage<img src="http://i220.photobucket.com/albums/dd173/debumegane/hamr.png" http://www.blogger.com/img/blank.gifborder="0" alt="Photobucket"><br clear="all"><br />■ ham-R "Stay Hungry Stay Foolish" <a href="http://www.mediafire.com/?52fgs6mew59pffo"><span style="font-size:85%;">:download</span></a><br />■ ham-R "Seven Demos" <a href="http://www.mediafire.com/?a9gg4ddp65y6792"><span style="font-size:85%;">:download</span></a><br />■ ham-R "Milestones" <a href="http://www.mediafire.com/?d8mp4866361oyiy"><span style="font-size:85%;">:download</span></a><br />■ ham-R × Y.G.S.P "Future Vintage" <a href="http://www.mediafire.com/?0lzas38z77kflqx"><span style="font-size:85%;">:download</span></a><br /><br />THA BLUE HERBの"STILLING,STILL DREAMING"、MSCの"MATADOR"、SEEDAの"花と雨"、あるいはキングギドラの"空からの力"でもなんでもいい。ほとんど無名だったなか多くのリスナーから支持されて、歴史に名前を残した作品を見ていると、その特徴は「自分の表現に確固たる自信を持っている」ことと、「それまでには無い新しいアプローチで表現している」こと、更に「自分を取り巻く環境や時代の流れを的確に捉えている」というところにあることに気づく。つまり、リスナーにとって刺激的で新鮮に聴ける作品とは日本語ラップというジャンルの中心からではなく、それまでのシーンの流れから外れたカッティングエッジから産まれ、そういったフレッシュな表現を次々と取り込んでシーンは成熟していくということだ。<br /><br />もちろん、ひとときカッティングエッジにあった表現もシーンに取り込まれていくことで、どんどん古びたありきたりの表現になっていく。だけども、いつの時代であっても「自分の表現に確固たる自信を持」ち、「それまでには無い新しいアプローチで表現」をし、「自分を取り巻く環境や時代の流れを的確に捉え」ることのできたアーティストがシーンに恵みを与え、バリエーションを豊かにすることは疑いようもない。<br /><br />SEEDA、ANARCHY、SIMON、NORIKIYO、般若、TWIGY、KREVA、RHYMESTER、鬼、S.L.A.C.K.、RAU DEF、志人、ICE DYNASTY、ROMANCREW、サイプレス上野とロベルト吉野……こうやって今年アルバムやEPを発表したアーティストの名前を並べると、まだ2ヶ月残しながら2011年は日本語ラップにとって本当に豊作の年だった。それぞれのラッパーの持つカラーがアルバムにきちんと反映されていて、音楽的なクオリティの部分のみでいえば期待はずれとなったものはあまり無かったのではないかと思う。<br /><br />しかしシーンにとって刺激となり、これまでの表現を変えるほどの力を持った作品は「無かった」と、バーチャルアイドルラッパーRANLのミックステープ(Service Time)がネットで一部集中的に話題を呼んでいたことを踏まえて裏から見れば、そう言い切ってしまってもいいのではないか。"リアル"を追求してきた日本語ラップへの皮肉かのようにまったく実体がなく、確かなラップスキルと日本語ラップの知識を楯に半ば自虐的に日本語ラップシーンそのものをアニメ声で揶揄していくこのラッパーが持つ面白さは、日本語ラップのカッティングエッジから産まれていることをこの際強調しておきたい。何にせよ、まるで日本語ラップの文脈を逆流していくようなRANLの"Service Time"が新鮮に聴こえてしまった身からすると、これから先の日本語ラップというジャンルそのもの自体に一抹の不安を感じてしまう。この音楽にはまだカッティングエッジに立てるアーティストが出てくるのだろうか? <br /><br />1年ほど前になるけども、立て続けにミックステープをリリースしていたアーティストがいた。いま彼がリリースした作品群"Stay Hungry Stay Foolish"、"Seven Demos"、"Milestones"、"Future Vintage"から感じ取れるのは、まさしく「自分の表現に確固たる自信を持」ち、「それまでには無い新しいアプローチで表現」し、「自分を取り巻く環境や時代の流れを的確に捉え」る姿勢だった。<br /><br />たとえば、1stミックステープ(Stay Hungry Stay Foolish)に収録されている"Japanese Average Line"や"R-25"といった曲で描かれる現代の若者の視線には社会に出ている人間なら誰でも理解できるウィットに富んだ面白さがあるが、それだけでなく、その目線の先が日本の社会システムあるいは音楽業界の崩壊にまでうつっていったときに、とてもコンシャスな説得力を帯びていくことに気づく。音楽業界や、日本という国だけでなく、アメリカを代表するエネルギー社会全体が沈んでいこうとしている"いまの状況"を捉え、そのなかでサバイブしていく使命を背負わされた若者の視線は、そんな終わっている状況を作り上げた上の世代を痛烈に批判する姿勢にも繋がっていく。ZEEBRAとRAU DEFのビーフでも ham-Rがその裏からビーフを演出していたフシがあったけども「自分の表現に確固たる自信を持」って、古いシステムや考え方をぶち壊して新しい世界をつくっていこうとする姿勢は、そんな "状況分析"のもとでつくられているように見えてくるのだ。いまの"終わっている状況"を作り出した古いシステムとその遺産を押し付けられる若い世代が、新しいシステムの波に乗って、そいつらをぶっ壊していくことを宣言する姿勢には充分すぎるほどの説得力がある。<br /><br /><blockquote>"まずはぶっ壊す腐った地球ってとこの日本って国のしょうもない音楽。ここ東京から最新ってやつを教えてやらぁ"(Knock Knock)</blockquote><br /><blockquote>"いつまで経ったらお前の言うブリンブリンを若いやつらがゲットできるの?はたから見たらやたら陰気くさいしみっともない感じ。ほらオマエだよオマエ。うすうす感じ取っているんだろ?Hi!追い出される前に消えな。じゃなきゃそろそろ血祭りにあげんぞオーライ?"(Hi!)</blockquote><br />古いシステムや考え方を全て破壊してやるという圧倒的な自信、的確な状況分析と視野の広さ、そして何よりもそれらを裏打ちする優れた音楽的センス、それらは全てカッティングエッジに立つことを可能にするエッセンスだ。ham-Rが一連のミックステープで示した上の世代や古いシステムに対してみせる攻撃的な一面は、キングギドラ、THA BLUE HERB、MSCの処女作ではまた別の形で露出していた。いまインターネットから、JPRAP.COMを媒体としてこれまでとは異なる才能を持ったアーティストが次々と出てきているけども、もし彼らがham-Rと同じような姿勢と覚悟を持ってカッティングエッジに立つことが出来るのであれば、きっと日本のヒップホップにとって大きな力の源になるだろう。<br /><br />"When I was young, there was an amazing publication called The Whole Earth Catalog, which was one of the bibles of my generation. It was created by a fellow named Stewart Brand not far from here in Menlo Park, and he brought it to life with his poetic touch. This was in the late 1960's, before personal computers and desktop publishing, so it was all made with typewriters, scissors, and polaroid cameras. It was sort of like Google in paperback form, 35 years before Google came along: it was idealistic, and overflowing with neat tools and great notions.<br /><br />Stewart and his team put out several issues of The Whole Earth Catalog, and then when it had run its course, they put out a final issue. It was the mid-1970s, and I was your age. On the back cover of their final issue was a photograph of an early morning country road, the kind you might find yourself hitchhiking on if you were so adventurous. Beneath it were the words: "Stay Hungry. Stay Foolish." It was their farewell message as they signed off. Stay Hungry. Stay Foolish. And I have always wished that for myself. And now, as you graduate to begin anew, I wish that for you.<br /><br />Stay Hungry. Stay Foolish."(Stay Hungry Stay Foolish)微熱教授http://www.blogger.com/profile/15083927576509688324noreply@blogger.com3tag:blogger.com,1999:blog-26765657.post-58982578648982308762011-07-24T20:49:00.031+09:002011-07-31T09:16:15.218+09:00ERA - 3 Words My World<a onblur="try {parent.deselectBloggerImageGracefully();} catch(e) {}" href="http://2.bp.blogspot.com/-MGd1E_OCFwg/TjSeBWueLbI/AAAAAAAAATw/odsQYHIMlbM/s1600/era.png"><img style="float:left; margin:0 10px 10px 0;cursor:pointer; cursor:hand;width: 160px; height: 160px;" src="http://2.bp.blogspot.com/-MGd1E_OCFwg/TjSeBWueLbI/AAAAAAAAATw/odsQYHIMlbM/s320/era.png" border="0" alt=""id="BLOGGER_PHOTO_ID_5635302779864886706" /></a><br /><br clear="all">ここ数年の間にアーティストの名前で感動したのは"Lil 諭吉"だったけども、最近見かけた"DJ Highschool"という名前には久々にしびれた。DJハイスクール、モラトリアムとボンクラっぽさが同居するイカした名前。そんな名前を持つトラックメイカーが参加しているERAのアルバムはモラトリアムとボンクラっぽさを内包する素晴らしいバイブスに満ちていた。<br /><br /><blockquote>「WIZ KHALIFAや CURREN$Y、SMOKE DZAやKENDRICK LAMARはHUSTLIN’ではなくSTONERなUSのNEW SCHOOL HIP HOP。ERAが作り出すのはシャラリシャラリなTOKYOのNEW SCHOOL HIP HOP。」――『3 Words My World』推薦文より――</blockquote><br />このアルバム販促用の推薦文に書かれている通り、ERAが作る楽曲はストーナーだしシャラリシャラリな東京のニュースクールヒップホップだと思う。日本語ラップファンが聴くと、S.L.A.C.Kの諸作品と、四街道ネイチャーの『V.I.C.TOMORROW』と、GWASHIの『the FIRST CHOICE』と、ALPHABETSの『なれのはてな』を繋げるパズルの最後のピースが『3 Words My World』だという印象を持つのではないだろうか。つまり、脱力した生活感と、フリーター臭のするボンクラっぽさと、ドラッギーな万能感を兼ね揃えた日本語ラップということ。そこに加えて、ILLICIT TSUBOIのミックスの力か、USで行われたというマスタリングの妙か、確かに感じさせるWIZ KHALIFAやCURREN$YやKendrick LamarなどのUSで注目される若手ヒップホップスターとの同時代性。<br /><br />ここから『3 Words My World』の特殊さをあげつらえて褒め称えることはいくらでもできる。"過去に作られていた不細工な日本語ラップと現在のカッコ良さを追及する日本語ラップを繋ぐ貴重な架け橋"だとか、"どうしてもストーナーな世界に逃げてしまう人の「リアルさ」と、焦点の定まらない妄想が暴走していく「非リアルさ」が奇跡的に同居する"とか。ただまぁ、『3 Words My World』のキーワードを1つ挙げるとすれば"停滞"だろう。<br /><br />若いラッパーの作るアルバムで、これほど前にも後ろにも向かず、ストーナーな世界にふけっているのも珍しい。昔を懐かしんだりするようなところは勿論、カッコをつけようとするところもない。S.L.A.C.Kにだって他人を勇気付けようとする姿勢があるのに。なにせ他者への視点が大きく欠けているから、ポジにもネガにも向かわずぼんやりと停滞したまま妄想がただただ広がっていくような曲ばかりが蜃気楼の街のように繋がっている。そして、「WIZ KHALIFAや CURREN$Y、SMOKE DZAやKENDRICK LAMAR」にも通じる音楽性は、そんな宇宙のような、スペースコロニーのような、ショーウィンドーの並ぶ渋谷のような、シャラリシャラリな"ERA TOWN"をパーフェクトにアップデートする。微熱教授http://www.blogger.com/profile/15083927576509688324noreply@blogger.com3tag:blogger.com,1999:blog-26765657.post-72980058811748107362011-06-13T19:16:00.016+09:002011-06-24T22:40:49.392+09:0000年代代表作から見るヒップホップの変遷、特長とか 今回の記事はライターの小林雅明さんを招いて、「00年代ヒップホップの代表作」をネタに対談していく内容となっています。<br /><br /> この企画をつくった理由は2つあって、1つはワタクシ微熱王子がネット上にヒップホップ関連の文章を書くようになって今年の5月で10周年を迎えたので「その節目として何かやりたい!」という自分以外の人にはどうでもいい理由なのですが、もう1つの理由は90年代黄金期のヒップホップに比べて00年代ヒップホップについて分析・評価を行った記事が少ないのではないか?と思い至ったからです。<br /><br /> 90年代黄金期のヒップホップを語り継いでその価値観を残していく必要があるというのであれば、同じように00年代のヒップホップに起こっていた現象や変化を見極め、きちんと整理して語り継ぐ必要があるのではないでしょうか。そこで今回、まずは”体系づくりの1ステップ”として企画してみました。好評であれば、更に次にも繋げていきたいと考えています。<br /><br />例によって少々長い記事となっていますが、お時間があれば読んでいただけると幸いです。<br /><br /><br />■50CENT - 『GET RICH OR DIE TRYIN'』 (2003)<br /><a onblur="try {parent.deselectBloggerImageGracefully();} catch(e) {}" href="http://3.bp.blogspot.com/-zKvxxQTJFGU/TfXkAFOLf2I/AAAAAAAAASg/bN2PVmFdXhk/s1600/50.png"><img style="float:left; margin:0 10px 10px 0;cursor:pointer; cursor:hand;width: 160px; height: 160px;" src="http://3.bp.blogspot.com/-zKvxxQTJFGU/TfXkAFOLf2I/AAAAAAAAASg/bN2PVmFdXhk/s320/50.png" border="0" alt=""id="BLOGGER_PHOTO_ID_5617646800267345762" /></a><br /><br clear="all">微熱:じゃあ 50 CENTの話から順番にやっていきましょうか。50 CENTの代表作といったら1STアルバムである『GET RICH OR DIE TRYIN'』です。これは彼がリリースした作品のなかでも50 CENTの魅力として認知されている”暴力的な描写”に一番フォーカスがあたっているものですね。50 CENTはこの後『MASSACRE』、『CURTIS』、『BEFORE I SELF DESTRUCT』とアルバムをリリースしていく訳ですが、持ち味である攻撃的な側面より段々彼個人の内面に焦点をあてるような作風になっていって、セールスを落としていきます。<br /><br />小林:次回作のタイトルが『2011 GET RICH OR DIE TRYIN'』になるという噂があるみたいだし、セールスを戻すためなのか、ギャングスタな物がすっかりなりをひそめてしまった今のシーンでは、新鮮なものとなる可能性が高いと思っているのか、攻撃的な方向にもどろうとしている節はあるようですけどね。 <br /><br />微熱:50 CENTが出てくる前までに同じように他のラッパーを攻撃してプロップスを得ようとするスタンスのラッパーっていたんでしょうか。暴力的、攻撃的という意味ではN.W.Aみたいなクルーもありましたけど。<br /><br />小林:50 CENTが影響を受けているのは2 PACとかBIGGIE(NOTORUOUS B.I.G.)でしょ。<br /><br />微熱:あぁ。実際に”銃撃されて生き残った”というような物語をリスナーに植え付けていくというような部分ですね。<br /><br />小林:50 CENTの半自伝映画(GET RICH OR DIE TRYIN')には彼の人生のうちの半分しか描かれていない。つまり、ギャングスタだった頃の50 CENTのビーフしか描かれていなくて、ラッパーとしての50 CENTは「さぁこれから」というところで終わってしまうんですよ。そして、50 CENTがこのアルバム『GET RICH OR DIE TRYIN'』でやろうとしたことは、彼がギャングスタだった頃にやっていたビーフの図式をそのままヒップホップゲームに持ち込むということなんだよね。<br /><br />微熱:JA RULEを相手に思いっ切り喧嘩を売るところとか。<br /><br />小林:50 CENTは”JA RULEがストリートと繋がっているリアルなラッパー”だと演出して、JA RULE側がそういう側面を出しやすい環境を作ってあげて、バトルを盛り上げるようなことを企む策略家なんです。それと比べると2 PACは策略とはほど遠い、ほとんど素の状態でビーフに巻き込まれるラッパーだね。逆に策略にハメられてお金を取られてしまうような。<br /><br />微熱:2 PACがヒップホップの世界でもストリートの一住人だったのに対して、50 CENTはヒップホップの世界とストリートを区別してストリートにあったルールをヒップホップに持ち込んでゲームにしてしまったということですね。<br /><br />小林:そう。”ストリートの経済”みたいなものもヒップホップに当てはめようとしたんだよ。彼のミックステープがストリートでウケたのはそういうルールのうえに成り立っていたからなんじゃないかと思うんだけどね。<br /><br />微熱:ミックステープをストリートにばらまくという行為をもドラッグディールの延長線みたいな形で成り立たせていたと。<br /><br />小林:同じノリでやっていたんだろうね。50 CENTの縄張りにミックステープをばらまくことで「みんな聴いている」という印象をリスナーに与えていたんだろうし。<br /><br />微熱:ストリートのルールをヒップホップに持ち込んだというところが面白いですね。実際に50 CENTは銃で撃たれていますけど、そのイメージをそのままヒップホップに使ってしまうという。<br /><br />小林:しかも過去に有名なラッパーが銃撃されているというイメージを上手く使って、リスナーが頭のなかで50 CENTと2 PACをリンクしやすくしている。50 CENTをまったく知らない人でも”銃撃された”という事実を聞いただけで、彼のイメージがつきやすくなって安心感を与えるんだよ。<br /><br />微熱:すごく頭のいいラッパーですよね。インタビューで「酒やマリファナはやらない」という発言がありましたけど、頭を鈍らせるようなことはやらず、ヒップホップ以外のビジネスも手広くやっている。<br /><br />小林:あとは稼いだお金をフッド(地元)に還元したりもしているし。<br /><br />微熱:ただ、この『GET RICH OR DIE TRYIN'』以降は段々角が取れて自己の内面に向かっていきますよね。<br /><br />小林:2 PACやBIGGIEは”銃撃されて死んだ”ラッパーだけど、50 CENTは”銃撃されても生き残っている”というところが強みであって、ラッパーとしてのセールスポイントなんだけど、やっぱりそのネタだけではやっていけないから。<br /><br />微熱:他のラッパーを攻撃することでネタをつくって曲つくりするのも50 CENTの特徴ですけど……。<br /><br />小林:ただそれも50 CENTが相手にしたいラッパーが相手にしてくれなくなるとネタにならなくなってくるんですよ。<br /><br />微熱:「50 CENTの<a href="http://www.youtube.com/watch?v=MuysVCJ7Ito" target="_blank">”HOW TO ROB”</a>は50 CENTがファンの視点でラッパーに喧嘩を売っている」ということを小林さんが昔雑誌に書かれていましたね。”HOW TO ROB”の頃はファンの視点でラッパーに噛みつけていたけど、スターになってしまうとそれだけ喧嘩を売れる相手もどんどん限定されていってしまう。そういった意味でも、『GET RICH OR DIE TRYIN'』には攻撃的で刺激的な50 CENT像が一番良くあらわれているんですね。<br /><br /><br />■CAM'RON - 『PURPLE HAZE』 (2004)<br /><a onblur="try {parent.deselectBloggerImageGracefully();} catch(e) {}" href="http://1.bp.blogspot.com/-PKSjZo98T8c/TfXkWOsh6sI/AAAAAAAAASo/XisJ1P_BspI/s1600/purplehaze.png"><img style="float:left; margin:0 10px 10px 0;cursor:pointer; cursor:hand;width: 160px; height: 160px;" src="http://1.bp.blogspot.com/-PKSjZo98T8c/TfXkWOsh6sI/AAAAAAAAASo/XisJ1P_BspI/s320/purplehaze.png" border="0" alt=""id="BLOGGER_PHOTO_ID_5617647180767685314" /></a><br /><br clear="all">微熱:資料の上だと、DIPSET(CAM'RONのクルー)がミックステープ市場をはじめて切り開いたということになっていますけど……。<br /><br />小林:少なくとも50 CENTよりは先にミックステープを作り出したということになっていますね。<br /> あと、元々ビートジャックは「同じビートの上でラップしても俺の方が上手い」ということをアピールするためにやっていたものだったんだけど、DIPSETあたりをキッカケに最近はそういう側面も薄れてきた。<br /><br />微熱:いまやビートジャックという手段は、”コストを安く作るため”とか、”流行っているから”という理由で使われるようになっています。<br /><br />小林:曲単位ではなくて、ミックステープのコンセプトそのものとして、そういう流行りの物をビートジャックをするようになってきたのがDIPSETや、G-UNIT(50 CENTのクルー)あたりだった気がする。80年代の終わりから90年代初めにかけては、ビーフの相手の曲を文字通りジャックして、同じビートなら自分のほうが上手くラップができるということをアピールするためのものだったんだよね。 <br /><br />微熱:だけど、DIPSETや50 CENTがミックステープでビートジャックをやって根付かせていくことで、その辺の線引きが段々曖昧になってビートジャックの概念が変わっていった。<br /><br />小林:だからそういう意味でもヒップホップではバトルというものが成立しづらくなってきているよね。いまやビートジャックなんてディスでもなんでもないから。<br /><br />微熱:逆にいまはビートジャックしてもらった方が宣伝になりますからね。<br /> あと、DIPSETはヒップホップグループとして売れていたという以上に、ひとつの現象となるくらい流行っていたみたいですけど……。<br /><br />小林:当時、ヒューストンとかサウスの連中がDIPSETを聴いていたかというとそういうわけでもないんじゃないかな。DIPSETはとても都会的なアーティストだし、くどいほどリリカルな面を打ち出すクルーだから。地方のリスナーからしたらもっとわかりやすいほうがいいでしょ。いまでこそあらゆる地域で色んなスタイルが受け入れられているけど。<br /><br />微熱:CAM'RONは”リリカル”っていうより”ナンセンス”というイメージのほうが強いのでは?<br /><br />小林:いや、基本はナンセンスだよ。ナンセンス過ぎてシュールでリリカルに聴こえるっていう。韻を踏みすぎて全く意味が通じないから。90年代だとGHOSTFACE KILLERが思いついたままに韻を踏みまくっていたけど、CAM'RONは彼に近いスタイルではあるよね。<br /><br />微熱:確かにGHOSTFACE KILLERはリリックの面白さで評価されていますけど、CAM'RONってちょっと違いますよね。言葉選びのセンスの差なのかな。<br /><br />小林:そうでしょ。CAM'RONのラップを聴いていると、ありえない言葉使いのセンスでピンポイント的な衝撃を受けている間に曲が終わってしまう。GHOSTFACE KILLERはフリースタイル的な部分を多分に残しながら曲全体に通じるうねりみたいなものを生み出しているけど、CAM'RONは曲の中でも明らかにウケを狙っているポイントがあるんだよね。 <br /><br />微熱:そういう意味だと、そのシュールなラップスタイルを確立したのがこの『PURPLE HAZE』です。98年の『CONFESSIONS OF FIRE』、00年の『S.D.E.』はまだどちらかといえばイーストコーストマナーに忠実なトラックのうえにタイトなラップをのせていたんですけど。<br /><br />小林:その頃は普通に真面目なんだよね。もともとはBIG LやMASEと一緒にCHILDREN OF THE CORNをやっている人だから、いくらなんでも一定以上のレベルがないとやっていけないよ。<br /><br />微熱:それがROC-A-FELLAからリリースされた『COME HOME WITH ME』あたりからおかしくなってくる……。<br />1STアルバムの『CONFESSIONS OF FIRE』をリリースするときにBIGGIEが手助けしたという話もあるみたいですけど、仲間内からの評価はもともと高かったみたいですね。ただ、リスナーとしてCAM'RONのラップを聴いたときにそんなに高い評価を下せるかというと別の話なわけで。<br /><br />小林:別にBIG Lを神格化するわけじゃないけど、彼と一緒にラップをしていてこんなスタイルに辿り着いたというところがスゴい。イーストコーストにも上手いラッパーはたくさんいるから、そのなかでスタイルを模索してここに辿り着いたんだろうね。50 CENTがCAM'RONをイジる理由がよくわかります。<br /><br />微熱:あと、『PURPLE HAZE』はコークラップ(ドラッグディールをネタにしたラップ)として有名ですよね。この辺、この後取り上げるCLIPSEの『LORD WILLIN'』から影響受けていたりするんですかね?<br /><br />小林:いやJUELZ SANTANAの影響でしょ。JUELZ SANTANAがやっていた”コーク馬鹿ラップ”のアイデアを使って、CAM'RONの持つナンセンスなラップスタイルと噛み合わせることで面白く聴かせようとしたんだと思いますよ。<br /><br />微熱:『COME HOME WITH ME』の頃はコークラップ色は無いですよね。<br /><br />小林:その頃は寧ろ女の子ネタが大半を占めている。DIPSETというか、CAM'RONが50 CENTなみの勢いでドラッグディールをやっていたかどうか怪しい……。だからG-UNITに絡まれたりするんだよね。 <br /><br />微熱:でも50 CENTもあまりドラッグディーリングのイメージないですよね?<br /><br />小林:50 CENTは説明しないから。ドラッグディールをやっていることが前提だから一々言う必要がないんだよ。<br /><br />微熱:なるほど。あと、DIPSETはキッズ人気が凄いイメージがありますよね。ミックステープのバックナンバーを買い集めるようなマニア的な人気が高いような。そういったところを見るとNO LIMIT(MASTER P主催のレーベル)とも近いかなと思うんですけど。<br /><br />小林:そうですね。実際にNO LIMIT勢と一緒に曲作ったりもしていますからね。ただ、DIPSETの場合はNO LIMITほど”帝国”的なイメージではないよね。クルーのメンバーもNO LIMITはよくわからないメンバーをよくわかるようにして売り出していくけど、DIPSETはもともとよくわからないメンバー構成のうえに「あいつはクルーじゃない」みたいなことを平気で言うから。全然わからないやつを「クルーじゃない」って言われても全く意味わからない。<br /><br />微熱:売り出し方という面では、ファッションセンスも独特ですよね。『PURPLE HAZE』のジャケ見てもわかりますけど、ピンクとか紫の目立つ服を着るという。<br /><br />小林:これっていうかモーヴはゲイの色だしね。だけど、このワザとらしい色使いがいまのヒップホップファッションにも影響を与えてもいる。やっぱりウケ狙いが凄い人なんだよね。ツッコまれるところが異様に多い。例えば、つい最近VADOと演ってる<a href="http://www.youtube.com/watch?v=-xWPh7z_gbI" target="_blank">”Hey Mumma“</a>でも「And you so fine, it's so sad Still riding coach, need aCoach bag Let me coach you, no Coach tags」 って、CAM'RONとしては「俺とつきあえばコーチのバッグなんか持たせなくてもすむぜ」と言っているけど、ギャルたちは「どうせあたしは安物のコーチのバッグしか持ってませんよ~」とツッコむわけ。 <br /><br />微熱:根っからのイジられキャラという。<br /><br />小林:そういう人もあんまりいないから人気があるのかもね。<br /><br />微熱:ちょっとリリックの話に戻すと、CAM'RONのナンセンスなリリックもファンに言わせると「MF DOOMと何が違うんだ?」ということみたいですけど。<br /><br />小林:そうそう。それはGHOSTFACE KILLER、MF DOOMと繋がっていく系譜にCAM'RONがいる。彼らの作品を聴いている人は全く同じ路線だということに気づくんだよ。<br /><br />微熱:GHOSTFACE KILLER、MF DOOM、CAM'RONってなんか三段オチみたいな並びだな……。<br /><br />小林:ただ、MF DOOMの場合は言うほどナンセンスでもないんだけどね。アブストラクトと言われているわけで、小難しい言葉の選び方はCAM'RONとは真逆だし、それこそ何度も聴いていくと意味がなさそうに聴こえるラインも実は裏の意味があるように解釈できるんだよね。CAM'RONには、ダブル・ミーニングはあっても解釈の余地もクソもない。 <br /><br />微熱:CAM'RONがGHOSTFACE KILLERやMF DOOMを参考にした可能性っていうのはあるんですか?<br /><br />小林:ないでしょ。CAM'RONのライムはMF DOOMみたいに高尚に響くことはないし、聴けばわかると思うけど、明かにワルノリで意図的なスタイルとはいえ幼児っぽい韻の踏み方だしね。ただ、CAM'RONのファンはMF DOOMを聴かないだろうけど、MF DOOMのファンでCAM'RONをチェックしてる人は多いと思う。稚拙でもフリースタイル的な魅力が絶対的にあるから。まぁ、どっちもマニアックなファンがついてるという意味では同じ。 <br /><br />微熱:計算なのか天然なのかよくわからない人ですよね。ミックステープを定着させたり、新しいラップスタイルを編み出したり、ファッションの源流をつくったり、功績だけで見るとすごいんですけど。<br /><br />小林:ありえない韻の踏み方やありえないファッションセンスをしているのに、カッコつけているところとか。マニアにはたまらない人だろうね。<br /><br />微熱:ビート面ではどうです?<br /><br />小林:DIPLOMATS(DIPSET)の『DIPLOMATIC IMMUNITY』なんて、KANYE WESTがいないのに全曲KANYE WESTみたいなビートなのがスゴいよね。その辺りからそうだったけど、ポップ・ヒットしたロックのネタの使い方とか、最近の<a href="http://www.youtube.com/watch?v=CKuWozzEhao" target="_blank">"Salute"</a>とか臆面もなくヘンなビートを奇天烈なライムにぶつけている。 <br /><br />微熱:ビートはKANYEみたいだし、ラップは上手いのか下手なのかもよくわからないし……。当時評価が低くても仕方がない……。<br /><br />小林:まったく煮え切らないね。ただ、『DIPLOMATIC IMMUNITY』はミックステープの曲をはじめてオフィシャルアルバムとしてリリースした作品だからね。そういうアプローチはヒップホップ史上初だったと思うよ。そういえば、DIPLOMATSのメンバは全員ファッションが変だよね。<br /><br />微熱:JUELZ SANTANAのバンダナとか……。でもKANYEみたいなビートも含めて、すごくわかりやすいグループですよ。やっぱりそこが大事なのかなぁ。CAM'RONの『CONFESSIONS OF FIRE』を聴いても全然ピンとこないですけど、『PURPLE HAZE』には引っかかりまくりますから。<br /><br /><br />■CLIPSE - 『LORD WILLIN'』 (2002)<br /><a onblur="try {parent.deselectBloggerImageGracefully();} catch(e) {}" href="http://3.bp.blogspot.com/-sbl06pR0d6I/TfXkcmcp3lI/AAAAAAAAASw/6LIMjEKYNG4/s1600/lordwillin.png"><img style="float:left; margin:0 10px 10px 0;cursor:pointer; cursor:hand;width: 160px; height: 160px;" src="http://3.bp.blogspot.com/-sbl06pR0d6I/TfXkcmcp3lI/AAAAAAAAASw/6LIMjEKYNG4/s320/lordwillin.png" border="0" alt=""id="BLOGGER_PHOTO_ID_5617647290222763602" /></a><br /><br clear="all">微熱:今回取り上げる6アーティストのほとんどに共通するのがドラッグディーリングですけど、そういうネタってストリートのプロップスと直結するもんなんですかね?<br /><br />小林:ドラッグディールにまつわるスラングがウケている部分はあるかもね。たとえば、G-UNITのLloyd Banksは正にそういう部分を打ち出しているわけで。CLIPSEもそういうドラッグディールに携わる人同士がジャーゴンを楽しむ感じなんでしょうね。<br /><br />微熱:MALICEとPUSHA TからなるCLIPSEとしての活動は90年代中盤からスタートしていて、キャリアとしては結構長い。元々、NEPTUNESと同郷で仲間だったということもあって、97年にNEPTUNESプロデュースでシングル(<a href="http://www.youtube.com/watch?v=P8NnDbfd4yc" target="_blank">”THE FUNERAL”</a>)を切っているんですけどそれが全く売れず、2002年の<a href="http://www.youtube.com/watch?v=laOZ7HPu9yU" target="_blank">”GRINDIN'”</a>までヒットに恵まれなかった。ただ、MALICEとPUSHA TにAB-RIVAを加えたRE-UP GANGとしての活動はストリートでも評判が高かったみたいです。ラップとしてはあまり華がなくて、どちらかといえばNEPTUNESのビートのほうに注目がいってしまいがちなグループだと思うんですけど。<br /><br />小林:KANYE WESTが<a href="http://www.youtube.com/watch?v=Bm5iA4Zupek" target="_blank">”RUNAWAY”</a>でPUSHA Tを引き入れたということに象徴的だけど、ラップを評価している人も多いと思うよ。<br /><br />微熱:2002年に『LORD WILLIN'』が出て、2006年に『HELL HATH NO FURY』がリリースされるまでの間の活動はRE-UP GANGのミックステープ(<a href="http://www.datpiff.com/The-Clipse-We-got-it-4-cheap-Vol-2-mixtape.819.html" target="_blank">『WE GOT IT 4 CHEAP』</a>)がメインだったわけですよね。<br /><br />小林:RE-UP GANGの『WE GOT IT 4 CHEAP』はリアルタイムでシリーズ全部聴いていたけど、当時ネット上でもすごく盛り上がっていた記憶がある。<br /><br />微熱:ミックステープだとビートも借り物だから、ビートよりもラップにフォーカスがあたりますからね。何がウケていたんでしょう?<br /><br />小林:この人たちはコークラップという1テーマだけでアルバムやミックステープを作っていたというところが新しいんだよね。他のラッパーだと1曲だけドラッグディールを扱うということがあるけど、CLIPSEは全曲コークについてラップしていて、表現も洗練されている。<br /><br />微熱:正規アルバムがリリースされるまで約4年もの間が空いてしまっているなかで、ミックステープを出し続けていたのは、単なる活動の穴埋めだけではなくてミックステープの実績を作っていって、メジャーにその実績をアピールするための狙いもあったと思うんですよね。<br /><br />小林:そうだね。”GRINDIN'”のヒットだってヒップホップリスナーがメインだったから、それだけで次作につなげていくのは大変だったと思う。<br /><br />微熱:『HELL HATH NO FURY』までは明確にコークをテーマにしていますけど、その後ってどうなんです?<br /><br />小林:3枚目の『TIL THE CASKET DROPS』はコークラップから離れて逡巡している感じが滲み出ちゃっているね。少なくともMALICEはもうコークラップはやりたくなくて、最近本を出したりしている。まだPUSHA Tは(コークラップを)やっているけど、こないだKANYEと曲を作ったときにKANYEに「一番バカなリリックを書け」って指示されて書いたらしいし……。<br /><br />微熱:インタビューでも「コークラップとカテゴライズされたくない」とか言っていますからね。<br /><br />小林:そんなこと言いながら”プッシャー”って名前につけられてもね……。アメリカにそんな名前の人いないよ。<br /><br />微熱:しかも、アルバムでは頭からケツまでドラッグディールの話をしているという。<br /><br />小林:意味わかんないよね。<br /><br />微熱:彼らのミックステープを聴くと良く判りますけど、ラップがすごく上手いんですよね。正規アルバムだとNEPTUNESのビートの個性が強すぎて印象が薄れてしまいがちなんですけど。<br /><br />小林:NEPTUNESがあまり参加しなかった『TIL THE CASKET DROPS』よりミックステープの方がクオリティが高いという意見は根強くありますね。ミックステープを聴く人は”ラップを聴く”ことがメインだったりするから、ミックステープの評判が高いというのは彼らのスキルの高さを証明している。<br /><br />微熱:これからYOUNG JEEZYやT.I.の話に移っていきますけど、YOUNG JEEZYやT.I.がつくる”トラップ”もコークラップと同じようにドラッグディールに基づいたラップのフォーマットです。YOUNG JEEZY達のつくるトラップとCLIPSEの表現するコークラップの違いって何なんでしょう?<br /><br />小林:サウスの連中がやっているトラップは、CLIPSEやCAM'RONみたいに直接的にドラッグを主眼に置いてラップするようなものじゃなくて、もっと緩く日常的なテーマのひとつとして扱うといった感じなんだよね。<br /><br />微熱:CLIPSEはより直接的にコークそのものについてラップしているということですか。<br /><br />小林:そう。YOUNG JEEZYはドラッグディーリングを精神的、社会的なテーマにまでしているけど、CLIPSEはコークにまつわる言葉遊びみたいに扱う感じ。<br /><br />微熱:”日常生活の中のドラッグディール”をテーマとするのかトラップですかね。トラップを日本語ラップに置き換えると初期のSEEDAに近い感じ。<br /><br />小林:そうだね。YOUNG JEEZYやT.I.は生活している環境のなかにドラッグディールがある。で、CLIPSEの方はドラッグディールそのものについてラップをしているんだけど、自分が犯罪をしている姿を見せつけて「それでよし」とかいうのでは全くなくて、そこから自分の身を一歩引いたところから捉えたり、いちいち凝っていて、要するに、リスナーがいちいちうけてくれるようなライムで表現することに拘りまくっているわけですよ。例えば、その”GRINDIN'”では「I'm the neighborhood pusher/Call me subwoofer/'Cause I pump "base" like that, Jack/On or off the track」と、プッシャーであるPUSHA Tが「自分をサブウーファーと呼べ」って言ってるんだけど、なぜかと言えば、低音をガンガン出しているから。で、”低音をガンガン出している”ってとこが、ダブル・ミーニングで、コカインを売りまくっている、という意味でもある。そんな感じで、とにかくこの人はそんなパンチラインしか考えていないと言ってもいい。 <br /><br />微熱:なるほど。CLIPSEはがっつりコークのことをラップしているけど、YOUNG JEEZYやT.I.は日常生活のアイテムの1つとしてコークを扱っているだけってことですよね。<br /><br />小林:そうそう。言ってしまえば、ドラッグが身近にある環境なんていうのは昔からあったわけで、ドラッグをテーマにしたヒップホップも昔からあるんだけど、表現の幅をより広げたのがCLIPSEなんだよね。ドラッグディールに足をどっぷり突っ込んでいたからなのかもしれないけれど、ドラッグを表現対象として客観的に捉えているところがCLIPSEの特徴であり、変なところでもある。<br /><br /><br />■YOUNG JEEZY - 『LET'S GET IT: THUG MOTIVATION 101』 (2005)<br /><a onblur="try {parent.deselectBloggerImageGracefully();} catch(e) {}" href="http://1.bp.blogspot.com/-z6ewT91jsVY/TfXkt9Tqv-I/AAAAAAAAAS4/n3AVWlAbZIw/s1600/101.png"><img style="float:left; margin:0 10px 10px 0;cursor:pointer; cursor:hand;width: 160px; height: 160px;" src="http://1.bp.blogspot.com/-z6ewT91jsVY/TfXkt9Tqv-I/AAAAAAAAAS4/n3AVWlAbZIw/s320/101.png" border="0" alt=""id="BLOGGER_PHOTO_ID_5617647588416864226" /></a><br /><br clear="all">微熱:この 『LET'S GET IT: THUG MOTIVATION 101』はYOUNG JEEZYの1STアルバムで、それこそ200万枚以上売れたアルバムなんですけど、YOUNG JEEZY自身は結構遅咲きなアーティストで28歳にしてようやく成功をおさめています。それまでは、LIL Jという名前で活動していたり、BOYZ N DA HOODというクルーに所属して活動していたんですけど、DJ DRAMAのミックステープ『TRAP OR DIE』をキッカケにプロップスを得るようになります。<br /><br />小林:2002年から2006年の最初の方までのDJ DRAMAの影響力は本当に凄かった。T.I.だけじゃなく、CLIPSEだってDJ DRAMAがミックステープを手がけているからね。<br /><br />微熱:なんでDJ DRAMAにそんなに影響力があったんですかね?<br /><br />小林:元々、DJ DRAMAはサウスにいるんだけどイーストコーストマナーでラップするような人たちが好きで、最初はそういうアーティストを盛り上げるDJだった。だけど、LA FACE(音楽レーベル)がブレイクするのを見て、アンダーグラウンドから離れて売れそうなラッパーをフックアップするスタンスに切り替えたんだよね。<br /><br />微熱:YOUNG JEEZYをフックアップしたのもその一環ということですか。<br /><br />小林:そうそう。丁度、DJ DRAMAが活動拠点としていたアトランタのアーティストを中心に取り上げてそれが上手くヒットに結びついたんだよ。<br /><br />微熱:なるほど。DJ DRAMAの『TRAP OR DIE』や、YOUNG JEEZYの諸作を聴くと結構どの作品も同じカラーなので、掴みづらいイメージがあります。3枚目の『THE RECESSION』は政治色が強くなってきていますが……。<br /><br />小林:「ちょっと社会のほうに目を向けてみました」って感じなんだろうね。『LET'S GET IT: THUG MOTIVATION 101』は彼のワークのなかでもトラップ色が強いんだけど、YOUNG JEEZYの特徴は感情を曲に込めるタイプのアーティストだというところです。単にドラッグをテーマにうたうだけではなくて、メンタル的なテーマをそこに織り込んでいく。<br /><br />微熱:T.I.の場合は『T.I. VS T.I.P』で自己のメンタルを追求する方向に行きましたけど、それとはニュアンスが違います?<br /><br />小林:YOUNG JEEZYは最初の頃から”自分の感情を曲のなかに表現したい”というタイプのラッパーなんですよ。一番最初にヒットした<a href="http://www.youtube.com/watch?v=gczBgNB-p1w" target="_blank">"Soul Surviver"</a>でも、自分自身が白い粉を扱う売人という立場で、「神様どうか今夜は俺がムショにブチ込まれないようにしてくれ!イーエァーー!」みたいな”YOUNG JEEZY節”を聴かせる人だから、リリックの解釈云々よりも、その感情に共感できるかどうかというところで勝負している。だから、あまりリリックを掘り下げて分析する意味のある人では無いですね。もちろん、それなりのウィットやユーモアはあるんだけど。<br /><br />微熱:それこそCAM'RONやCLIPSEのラップは話として聴いていても面白いけど、YOUNG JEEZYのラップは感情移入できないとそもそも聴けないということですか。<br /><br />小林:キツイかもしれない。生きザマを聴かせて、感情移入させるという面だけとってみると50 CENTに近いかな。<br /><br />微熱:あと、YOUNG JEEZYはアトランタのラッパーですけど、サウスの音が東海岸にも受け入れられるようになった変遷が知りたいんですよね。サウスの音のベースといったらMANNIE FRESHやNO LIMITの音になるんでしょうけど。<br /><br />小林:サンプルのネタ感が強い方が東海岸にウケるんでしょうね。初期のサウスは打ち込みで、しかもささくれだっているビートじゃない? 考えようによってはミニマルで無機質なビートのほうが都会的なんだけど……。<br /><br />微熱:YOUNG JEEZYはサンプリングのネタ感を作品の中で強く打ち出していったということですか。<br /><br />小林:この人はラップに抜くところがたくさんあるから、ささくれ立ったビートには合わないスタイルなんですよ。メロディがある程度聴こえるようなビートじゃないとダメだから、段々東海岸にも受け入れられるようなネタ感が強くなっていったんじゃないかと思う。<br /><br />微熱:確かにこの後の『THE INSPIRATION』から更にメロディアスになっていきますね。<br /> あと、東海岸ウケという面では、ミックステープのビートジャックも絡んでいる気もします。DJ DRAMAがサウスの中でもイーストコーストサイドのラッパーを好んでいたというところも象徴的ですけど、サウスのラッパーが東海岸のビートをジャックしていくことで、段々受け入れられていったという構図はあるんじゃないでしょうか。<br /><br />小林:そうだね。あと、T.I.なんかは”ラップの聴こえの良さ”を追求していたラッパーだったから、そういうラップの創意工夫も影響しているんじゃないかな。そして、YOUNG JEEZYは圧倒的に声がカッコいい。00年代に色んなラッパーが出てきたけど、YOUNG JEEZYほど声に恵まれているラッパーもいないでしょ。LIL WAYNEは特徴的な声だけど、つぶれてしまって”良い声”というようなものではないし。<br /><br />微熱:確かに今回取り上げているアーティストの中でも群を抜いて良い声しているもんなぁ。<br /> リスナーからしてみれば、サウスの持つミニマルな凶暴性に惹かれる人はこの『LET'S GET IT: THUG MOTIVATION 101』に惹かれるでしょうし、イーストコーストマナーに忠実なものが好きな人にとっては3枚目の『THE RECESSION』に惹かれるんでしょうね。<br /><br />小林:内容もリリースを重ねるごとにストリートから身を離していくような流れになっているしね。<br /><br /><br />■T.I. - 『TRAP MUZIK』 (2003)<br /><a onblur="try {parent.deselectBloggerImageGracefully();} catch(e) {}" href="http://1.bp.blogspot.com/-0B9OrZpqoss/TfXk_RuUygI/AAAAAAAAATA/vi-Ur5VJQrw/s1600/trapmuzik.png"><img style="float:left; margin:0 10px 10px 0;cursor:pointer; cursor:hand;width: 160px; height: 160px;" src="http://1.bp.blogspot.com/-0B9OrZpqoss/TfXk_RuUygI/AAAAAAAAATA/vi-Ur5VJQrw/s320/trapmuzik.png" border="0" alt=""id="BLOGGER_PHOTO_ID_5617647885955156482" /></a><br /><br clear="all">微熱:さっきも話に出てきましたけど、T.I.の<a href="http://www.datpiff.com/TI-Down-with-the-king-mixtape.453.html" target="_blank">『DOWN WITH THE KING』</a>はDJ DRAMAがプロデュースしたもので、T.I.とビーフのあったLIL FLIPディスのために作られたミックステープですね。<br /><br />小林:個人的に『DOWN WITH THE KING』は一番聴いたミックステープだけど、あまりT.I.のスタイルが反映されているものではないような気がするな。ビーフのために作られたミックステープだからアルバムみたいにリラックスしたムードじゃなくて、気合が入り過ぎているんだよね。<br /><br />微熱:同じくDJ DRAMAが関わった『IN DA STREETS』は、1STアルバムである『I'M SERIOUS』のセールスが思ったより芳しくなくて、2NDの『TRAP MUZIK』までの”繋ぎ”のために作られたものです。このミックステープが、ストリートのプロップスを獲得して今のT.I.の地位を確立するキッカケになりました。<br /> アルバムの変遷で言うと、『I'M SERIOUS』と『TRAP MUZIK』はハスラーとしての日常を描いた作品でしたけど、『URBAN LEGEND』、『KING.』に至る過程で「自分こそがキングだ」ということをグラマラスに誇示するようになっていった。セールスやメディアへの露出で”キングオブサウス”という地位を不動のものにすると、今度は『T.I. VS T.I.P』や『PAPAER TRAIL』、『NO MERCY』で自己の内面に没入しはじめるんですね。作品を重ねる毎に初期にあった能天気さが段々失われていく。<br /><br />小林:そうですね。<br /><br />微熱:小林さんが昔書いていた記事で興味深かったのは、「T.I.は自分がキングだと言い続けることで周りにそれを認めさせてキングの地位を確立した」というところでした。<br /><br />小林:2003年ごろはPALL WALLやSLIM THUGとかも含めてミックステープがたくさん出ていた時期だったんだけど、まだまだアンダーグラウンドなものだったし、一般的にはKANYE WESTの時代だったから動きがあまり見えなかったんだよね。そういう背景を考えると、キングだということも言いやすい時期だったのかもしれない。いままではSCARFACEがサウスのキングとして君臨していたけど、00年代になって世代が変わってくる節目でもあったし。<br /><br />微熱:「俺がキングだ」と自分で言うのもすごいですけどね。<br /><br />小林:それがヒップホップだからね。まずキングだと言ってみて、それをリスナーに問う。無視されたら終わりだけど、うまいこと受け入れられたらそれが事実になるわけだから。……ただ、個人的にT.I.は『KING.』で終わってしまっている感じがするな。<br /><br />微熱:自分がキングだと言い続けることでラッパーとしてのT.I.はキングになることができたけども、客観的な視点を持ったT.I.Pという別人格を作り出してしまったことで、それまでキングになることをモチベーションにしていた”T.I.”というラッパー像が崩れてしまったというようなことを『T.I. VS T.I.P』の記事で小林さんが指摘されていて、なるほどなと思いました。<br /><br />小林:この人がそんなことを難しく考える必要無いのにね。<br /><br />微熱:まぁ本当にキングになってしまってラップで扱うテーマがなくなってしまったんでしょうね。<br /><br />小林:何度も捕まっているから、これから刑務所から出てきても、あきれている人のほうが多そうだし……。レコード会社も、あれだけ儲けさせてもらったわけだから、今後のセールスがかなり気がかりだろうし、もうギャルにウケるネタをメインにマジメにラップするしか道は無いんじゃないかな。というか、そっちの方向を勧められてしまうかもね。<br /> LIL WAYNEは銃を持っていて捕まって、ムショに入ったのに、出てきて数ヶ月後に出した<a href="http://www.youtube.com/watch?v=pGVfC3X7G50" target="_blank">"That's What They Call Me"</a>のサビで、「あの一件以来、俺は自分の銃はオフクロの名前の中にいれている」と繰り返している。「”LIL WAYNEのオフクロの名前”って……? つまり、すぐにはわからないところに隠してあるんだな!」と、リスナーの耳を思いきりひきつけて、面白おかしく聴かせられるようなネタに昇華できるけど、T.I.はそういうキャラじゃないから。「I'M SERIOUS」な人だから仕方ないんだろうけど。<br /><br />微熱:シリアスなキャラ設定が足を引っ張っているという……。<br /><br />小林:『T.I. VS T.I.P』は相当きつい状況をあらわしているでしょ。ただ、一度刑務所から出てきたリリースした『PAPER TRAIL』で持ち直してひとつネタができたのが救いだよね。<br /><br />微熱:『PAPER TRAIL』の良さって何なんでしょう? T.I.の作品のなかでは一際異色というか、ポップミュージックの感触すら感じさせるバリエーション豊かなアルバムではありますけど。<br /><br />小林:内容も一番トラップ臭くはないところで敢えてやっているよね。自分の気持ちの整理をテーマにしているアルバムだから刑務所に入っていなかったら『PAPER TRAIL』は絶対にできていない。そういう意味では、刑務所に入ったおかげで本当に良い作品が出来たと思うよ。<br /><br />微熱:この時期でしか作れない作品だし、リスナーも最も興味が惹かれる内容ですからね。<br /> ……あと、T.I.はイーストコースト主流だったヒップホップをサウスの流れに切り替えるキッカケになったアーティストですよね。イーストコーストの視点で見ても上手いラップであったり、あらゆるヒップホップ雑誌の表紙になったり。<br /><br />小林:この人はルックスも優れているから。<br /><br />微熱:まぁそういう部分も含めて、T.I.が徐々にヒップホップシーンにサウスの価値観を根付かせたが故に、この後のLIL WAYNEやGUCCI MANEの評価に繋がったところもあると思うんですよ。<br /><br />小林:T.I.以前にもSCARFACEやBUN Bあたりも評価されていたけど、彼らのラップこそイーストコーストマナーにとても近いからね。更にT.I.はセールス面でも彼らと比較にならないほど売っているところを考えても、これまでサウスのラッパーでこの地位まで昇りつめた人はいなかったよね。<br /><br />微熱:808サウンドをヒップホップに根付かせた張本人とも言えると思うんです。LIL JONも売れていましたけど……。<br /><br />小林:あれはもうヒップホップどうこうではないところまでいっちゃってるからね。まぁT.I.は全てにおいて洗練されていますよ。ビートの加工のされ方も含めて。<br /> 例えば、”SNOOP DOGGの『DOGGUMENTARY』のジャケの椅子とT.I.の『NO MERCY』のシングルのジャケの椅子の違いを並べて考えてみるとわかるけど、T.I.は本当にああいう玉座にわかりやすく固執する人なんだよね。でも、西洋の考え方だとああいう椅子は”神のための椅子”なんですよ。座ってしまうとただの”王の椅子”になってしまう。SNOOP DOGGのジャケ(を考えついた人)はそれをわかっているからあの椅子に誰も座らせていないし、わかる人にはその意味がわかって”王なんかよりも上の審級にあるもの”をあの椅子のジャケットに幻視するんです。<br /><br />微熱:その話をきくと、いまのT.I.の立ち位置が限界に来ているということも本当によくわかります。SNOOP DOGGはキャリアも本当に長いですからね。<br /><br />小林:それこそSNOOP DOGGは出だしがどん底で「刑務所から出れないんじゃないか?」という感じだったけど、そこからいままで一度も刑務所には入っていない。それに引き換えT.I.はもう4回も刑務所に入っている。ジャケットの椅子ひとつ取って見ても、そのアーティストの思慮の深さが垣間見れるんだよね。<br /><br />微熱:逆に王座に固執し続けたからこそ短いキャリアの中でサウスの音楽性を認めさせるほどの存在になれたというところは否定できないですけどね。<br /><br />小林:そうね。でも、彼は”T.I.”であり続けるためにはこれからも王座に固執し続けなければならない。<br /><br /><br />■LIL WAYNE - 『THA CARTER II』 (2005)<br /><a onblur="try {parent.deselectBloggerImageGracefully();} catch(e) {}" href="http://2.bp.blogspot.com/-iivtnbLbHS4/TfXlH7-PHrI/AAAAAAAAATI/_VjpAgKDhqY/s1600/carter2.png"><img style="float:left; margin:0 10px 10px 0;cursor:pointer; cursor:hand;width: 160px; height: 160px;" src="http://2.bp.blogspot.com/-iivtnbLbHS4/TfXlH7-PHrI/AAAAAAAAATI/_VjpAgKDhqY/s320/carter2.png" border="0" alt=""id="BLOGGER_PHOTO_ID_5617648034735136434" /></a><br /><br clear="all">微熱:ラッパーって転換期があると思うんですよ。GUCCI MANEもある時期から突然ミックステープでのラップが評価されはじめましたし、CAM'RONも『PURPLE HAZE』でスタイルを確立しました。LIL WAYNEの転換期としての作品が『THA CARTER II』だと思うんです。LIL WAYNEはHOT BOYS(かつてLIL WAYNEが所属していたグループ)の頃からかなり売れているラッパーでしたし、それこそ彼の1STアルバムである『BLOCK IS HOT』は100万枚以上売れていますけど、『THA CARTER II』や<a href="http://www.datpiff.com/Lil-Wayne-The-Dedication-2-mixtape.799.html" target="_blank">『DEDICATION 2』</a>を発表した時期の前後でファン層が全く異なると思うんですよね。<br /><br />小林:<a href="http://www.datpiff.com/Lil-Wayne-The-Prefix-mixtape.1800.html" target="_blank">『THE PREFIX』</a>はその『THE CARTER II』の1年前に出ているミックステープで、JAY-Zの『BLACK ALBUM』のビートをジャックしたものだけど、あの頃から意図的にラップスタイルを変えているんですよ。<br /><br />微熱:JAY-Zのアルバムをジャックしたということ自体が、イーストコーストの偏見を打ち破る意図があったということですね。<br /><br />小林:LIL WAYNEが偉いのは、『THE PREFIX』で「サウスをバカにするな」と言っただけではなく、そこからちゃんと努力してラップスタイルを変えていったというところだよね。個人的には『THE PREFIX』以前のLIL WAYNEにはピンと来ない。というか、CASH MONEYの中で特に彼だけがすごいという風に思ったことは正直一度もなかった。<br /><br />微熱:そういう人は多いと思いますよ。いまでこそ『LIGHTS OUT』が評価されたりしていますけど、それも『THA CARTER II』や『DEDICATION 2』でイメージを一変させて、ラップの実力を認めさせたが故のものでしょうし。ただ、それまでのCASH MONEY軍団の一員だった頃もちゃんとしたキャリアがあったわけで、そのイメージを覆して全く新しいラッパーイメージを作り出すのって本当に大変だったんじゃないかな。<br /><br />小林:もう全く別人だもんね。<br /><br />微熱:ただ、『DEDICATION 2』はLIL WAYNEの転換点となった作品には違いないんでしょうけど、かなりとっちらかっているので良さが伝わりづらい……。<br /><br />小林:それは、LIL WAYNEがスタイルを変えていこうと模索している時期のものだし、何より2006年のミックステープだから商業レーベルから出ているアルバムと比較するのは酷だよ。ただ、『THE PREFIX』と比べるとだいぶ整理されてきている。<br /><br />微熱:これまで取り上げてきたラッパー達はミックステープをメジャーディールを勝ち取るための、アルバムの前哨戦の位置づけとして扱っているんですけど、LIL WAYNEの『DEDICATION 2』はミックステープなのにビルボードの69位まで行っているんです。勿論、LIL WAYNEの正規アルバムに比べたらそんなに売れていないですけど、それでもミックステープの”価値”が正規アルバムに追いついてきています。<br /><br />小林:これまで取り上げてきたラッパーのなかでもLIL WAYNEは圧倒的にフリースタイルが上手いから。即興で作品がつくれてしまうところも関係しているかもね。<br /><br />微熱:”作品をつくるためにラップをする”のではなくて、日常の延長線でラップをしているものを集めたら作品になってしまうんですよね。何よりその中で生まれるラフさが魅力になっている。LIL WAYNEはそういうミックステープの魅力や価値観をリスナーに植えつけて、いまのミックステープムーブメントを作り上げた張本人と言ってもいいと思います。<br /> あと、イーストコーストへの意識の強さという面では、NASに影響を受けているとも言われますよね? LIL WAYNEの曲はフリースタイルの一発録りなので、NASのリリシズムから影響を受けているというのが意外なんですけど。<br /><br />小林:NASになってもしょうがないし、NASになろうともしてないでしょ。ただ、LIL WAYNEは言葉選びのヒントをNASから得ている。元々はノリだけでラップを聴かせていたんだけど、言葉でイーストコーストのリスナーを認めさせる力を身につけていったんだよね。<br /><br />微熱:でもシロップ飲んでフラフラになりながら、妄想なんだかなんだかよくわかない有象無象についてラップするのがLIL WAYNEのスタイルの特徴だと思うんですけど。<br /><br />小林:酩酊状態のラップばかりしていたのは『THA CARTER III』のちょっと前くらいまでかな。保護観察の関係かもしれないけど、最近はそんな酩酊状態のラップではない。『THA CARTER III』には少しそういう曲があるけどね。<br /><br />微熱:いままでドラッグでフラフラになりながらラップしているようなアーティストっていなかったですよね。<br /><br />小林:そうだね。ドラッグをやってハイになるということをテーマにラップしている人はいままでたくさんいたけど、明らかにドラッグをやりながらラップしていることがわかるようなラッパーはいなかった。もしかすると、LIL WAYNEにとってはシロップを飲んでいるときだけが本音でラップをできるのかもしれない。言葉で遊んでいるようなラップは寧ろシラフの状態な感じがするな。例えば、『THA CARTER III』の一番最後に入っている<a href="http://www.youtube.com/watch?v=rxz3E34yQaY" target="_blank">"Misunderstood"</a>ではおそらくかなりグダグダになった状態なのにもかかわらず”LIL WAYNEとDwayne Michael Carter, Jr(本名)とはイコールで結ばれるべきものなのか”という問題点を諸々の社会問題を絡めて検討している。敢えて意図的にシラフではなく、酩酊状態で録ってみたのかもしれないけどストレートな表現ばかり。<br /> それが出所後には、さっき挙げた”That's What They Call Me"の例やニッキーとの<a href="http://www.youtube.com/watch?v=27pj028I1Bw" target="_blank">"Roman's Revenge 2.0"</a>での"I like a big wet pussy with a fork and a spoon"……これは意味的にはそれくらい大好物ってことなんだろうけど、出所直後の曲だからまだかなりシラフな状態で録ったんじゃないかと思ってみたり……。 <br /><br />微熱:なるほど。ラップにLIL WAYNEのリリシズムが出ているときはシラフだってことですか。<br />LIL WAYNEって一時期客演王と呼ばれるくらい色んなアーティストのゲストに参加したり、曲もスタジオにフラっと入ったかと思ったら一発で録り終えて、すぐまた別のスタジオでラップするようなところも独特なスタイルとしてよく知られていますよね。そういう流れの速い曲作りの中でリリックやラップスタイルの着想が沸いて、しかもそれを次から次へと色んな曲で実験してしまえるところが彼のラッパーとしての幅を広げているんじゃないかと思うんですよ。<br /><br />小林:この人の場合は客演がかなりプラスに働いているよね。例えば、KANYE WESTなんて客演はどう聴いてもやっつけなのがあるけれど、LIL WAYNEは客演の多さの割にあまり手を抜いていない。というか、雑だとしても、フリースタイルな感触が確かに残っている。<br /> リリックもすごく特徴的なものがあったりするんですよ。例えば、女の子との絡みをテーマにしたラップでも、自分の一人称視点ではなくて、第3者の視点で自分と女の子とのやり取りを描いていて、しかもそのリリックを文字に起こしてみるとドラマの台詞のト書きみたいになっていたりする。こういうラップの着想は、あらゆる曲の中で実験的に色々やってみて培ってきたものなんです。『THA CARTER III』にはそういうミックステープや客演を経た成果が詰まっている。<br /> <br />微熱:『THA CARTER II』はイーストコーストに対して挑戦していく姿勢を出していった作品だったけど、それが『THA CARTER III』まで来ると”表現”の仕方を模索してラップやリリックの深みを出す方向に行っているんですね。<br /><br />小林:<a href="http://www.youtube.com/watch?v=c7tOAGY59uQ" target="_blank">”6 FOOT 7 FOOT”</a>では“real G's move in silence like lasagna”なんだかワケのわからないラインをヴァースの最後のほうに持ってきている。lasagnaのgは発音しない、つまりsilenceだから「リアルな奴らは黙って行動する」ってことなんだろうね。一回聴いてすぐわかるラインと、何度も聴いてさらに頭を働かさなくては意味がわからないラインとを混在させている。今回取り上げたアーティストのなかでも一番リリックを練りこんで、ひらめきを最大限に活かして”表現”というものを模索している人ですね。<br /><br />微熱:シロップで酩酊している状態でラップをしているようなイメージが強いので、この中で一番ラップというものを考えているラッパーだというのが意外ですよね。<br /><br />小林:言葉だけではなくて、ラップの聴こえ方から、リリックの構成まで全てを考えていますからね。しかもリリックを書かないで即興一発録りだというから本当に天才ですよ。<br /> あと、EMINEMは最近までドラッグをやっていて、こないだの『RECOVERY』がドラッグ抜きでつくったアルバムだったけど、楽曲そのものは完全に魅力にかけるものばかりだった反面、ライムだけ取り出してみると前作からまだまだ進化しているところが見受けられる。で、それを聴いたLIL WAYNEがもうひとひねりさせてライムを書いたと思しきものもあるから、ドラッグを介在させて、EMINEMとLIL WAYNEを比較して考えてみるのも面白いかもしれない。<br /><br />微熱:EMINEMも含めて”本音を出す”という部分だとドラッグは良い方向に作用するけど、表現を進化させるという部分で考えるとドラッグは抜いた方がいいということですね。まぁ当たり前といえば当たり前ですけど。<br /><br /><br />■まとめ<br /><br />微熱:今回取り上げたアーティスト達はそれぞれがそれなりにストリートのプロップスを得て知名度を上げてきた人たちです。ただ、彼ら00年代のラッパーが持つ”ストリート感”と90年代のラッパーが持つ”ストリート感”ってどうも印象が違うんですね。90年代のラッパーはそれこそNASやBIGGIEを想像してもらえればわかるように”ストリート=コミュニティ”の図式があって、そのコミュニティに根ざして反体制的なメッセージであったり、コミュニティに起こるドラマを描いていたんですけど、今回取り上げたようなラッパーが表現しているのはストリートでのハスリングであったり、ストリートから成り上がる自分自身なんですね。彼らが描く”ストリート”は自分自身を表現するための単なる”場”になってしまっているんです。<br /><br />小林:しかも、インターネットがその”ストリート”に取って代わるものになってきている。”ラッパーが自分自身のことを表現するようになってきている”というけども、インターネットで全然違う地域に住む人が共感できる内容のラップというものが”コミュニティのドラマ”ではなくて”ラッパー個人のドラマ”に変わってきているという見方もできるね。そのわかりやすい例がODD FUTUREであったり、LIL Bであったりするわけだしね。<br /><br />微熱:インターネットがヒップホップを発信する場として主流になってきているし、ヒップホップ愛好家が集うコミュニティとしても成立しているという点からしてもストリートの意味そのものが変容してきています。<br /><br />小林:僕が2002年にアメリカにいたときに、インターネットでミックステープがアップロードされているのを見て、店にそのミックステープを買いに行ったらまだ売っていなくて、しばらく待ってから店頭にそのミックステープが並んだんだけど、もうその頃から徐々にストリートというものが変わりつつあったんだと思うんですよ。<br /><br />微熱:ビートの変遷の話もしましたけど、ラップが扱うテーマも変わってきているし、それだけでなくストリートやコミュニティの意味合いまで変わってきている。そもそも、00年代のヒップホップは90年代のヒップホップの価値観を崩すような動きをずっとしていたわけです。サウスのアーティスト達がイーストコーストの価値観にも通じるような表現を模索してきたような動きであったり、50 CENTやCAM'RONのようにヒップホップゲームのルールやスタイルを一新して覆していくような動きであったり。<br /><br />小林:そうだね。だからヒップホップメディアもこういうものをきちんと取り上げて、評価しなければいけない。<br /><br />微熱:現在のヒップホップは90年代のヒップホップの価値観を打ち破ってきた00年代ヒップホップの延長線にあります。だから、90年代ヒップホップばかり再評価して、00年代ヒップホップに対する評価をきちんと行わないのは、現在のヒップホップを否定して新しいリスナーを排除しているのと同じだと思うんです。小林さんとのこの対談を通して、少しでも00年代ヒップホップや現在のヒップホップの背景や動きに興味を持ってくれる人いたら良いなと思いますね。ときチェケ♪http://www.blogger.com/profile/13241747281300382653noreply@blogger.com5tag:blogger.com,1999:blog-26765657.post-31058256551517274592011-05-06T21:02:00.034+09:002011-05-07T10:05:53.339+09:00RAU DEF - ESCALATE<a onblur="try {parent.deselectBloggerImageGracefully();} catch(e) {}" href="http://2.bp.blogspot.com/-q-DCYNUIOyA/TcSYKEInQCI/AAAAAAAAASU/2ufu0awh7B0/s1600/ESCALATE.png"><img style="float:left; margin:0 10px 10px 0;cursor:pointer; cursor:hand;width: 120px; height: 120px;" src="http://2.bp.blogspot.com/-q-DCYNUIOyA/TcSYKEInQCI/AAAAAAAAASU/2ufu0awh7B0/s320/ESCALATE.png" border="0" alt=""id="BLOGGER_PHOTO_ID_5603771135031722018" /></a><br /><br clear="all">半年以上前の話になるけども、RAU DEFの『ESCALATE』を聴いたときの得体の知れない気持ち悪さはいまもよく覚えている。あの作品を聴いたときの感想は「何を表現したいのかサッパリわからない」というもので、軽妙なラップの聴き心地の良さとワードの聴き取り易さに反して、うたっている内容に意味を見出すことが出来ず、いったい彼は何を目標に何を表現したくてラップしているのかわからなかった。RAU DEFのラップは、手元に転がっているペンでそこらにある紙にテキトーに落書きをしているような印象で、それでもラップが落書きを描くために使われるくらい身近な道具になっているというところは興味深く受け取ることができたのだった。<br /><br />しかしいま、2011年3月11日の東日本大震災を経て、この作品を聴くとまた違った側面に気づく。それは、RAU DEFのラップには明らかにフラストレーションが込められているのだけども、そのフラストレーションの矛先が定まっていないところで、怒りや焦燥や諦念がただボンヤリと混乱して露出している部分だ。<br /><br />理解しようとしないコミュニティ、東京中心のシーン、格差社会をつくりだしたバビロン、価値観を縛りつけようとするモラル、あるいはポップチャートのJ-RAPにいたるまで、日本語ラップの仮想敵はその時代その環境にあわせて幾度も作り上げられて、ラッパーとリスナーのフラストレーションの捌け口になっていた。しかし、そういった仮想敵すらも見出すことができなくなってしまった状態が『ESCALATE』の持つ「得体の知れない気持ち悪さ」の大元なのかもしれない。RAU DEFのフラストレーションはスキルの無いワックラッパーだけに向けて発せられるが、私たちには顔の見えないワックラッパーだけが彼にとって一番目に見えている敵なのだ。<br /><br />同じように、去年のS.L.A.C.KやQN(SimiLab)のアルバムが持つ日常感はその"敵のいない状態"の延長線にあるし、AKLOやKLOOZたちのようにヒップホップをゲーム(遊び)と捉え、時代のモード(流行)に乗っかって上昇することを目論むアーティストが受け入れられつつあるのも、"日本のヒップホップが敵を見失っている"ことの裏返しだろう。仮想敵となるものが見出せないからこそ何気ない日常をうたうことがリアルに響くし、競争相手となるラッパー以外の敵を作り出すことが出来ないからこそセルフボーストをテーマにラップゲームでスキルを競い合う。そうやって切り取っていくと、S.L.A.C.Kのように"敵のいない日常"にも、AKLOのように"(敵がいないが故の)ラップゲーム"にもフラストレーションをぶつけられずに混乱している居心地の悪さがこの『ESCALATE』にはある。<br /><br />つまり、「敵を見出すことのできない状態にどうやって折り合いをつけているか?」という点こそが2010年の日本のヒップホップを整理するうえで見落としてはならない一番重要な切り口なのだ。………ただ、その"ルーズさ"が特徴だった<a href="http://www.youtube.com/watch?v=iz44mzhQO3Q" target="_blank">S.L.A.C.Kが"But This is Way"</a>でこれまでにないシリアスなラップを放ったように、その"敵のいないまったりとした日常"も2011年3月11日を境に大きく変わってしまったのだけども。微熱教授http://www.blogger.com/profile/15083927576509688324noreply@blogger.com2tag:blogger.com,1999:blog-26765657.post-5686079529207256912011-02-05T10:10:00.056+09:002011-02-12T11:28:51.898+09:00G-Side - The ONE...COHESIVE<object data="http://bandcamp.com/EmbeddedPlayer/album=1473066087/size=venti/bgcol=FFFFFF/linkcol=4285BB//" type="text/html" classid="clsid:D27CDB6E-AE6D-11cf-96B8-444553540000" width="400" height="100"><param name="movie" value="http://bandcamp.com/EmbeddedPlayer/album=1473066087/size=venti/bgcol=FFFFFF/linkcol=4285BB//"><param name="quality" value="high"><param name="allowNetworking" value="always"><param name="wmode" value="transparent"><param name="bgcolor" value="#FFFFFF"><param name="allowScriptAccess" value="never"><object data="http://bandcamp.com/EmbeddedPlayer/album=1473066087/size=venti/bgcol=FFFFFF/linkcol=4285BB//" type="text/html" width="400" height="100"></object></object><br />いままでほとんど眼中になかった地方のヒップホップをYouTubeやミックステープから手軽に視聴できるようになって耳にする機会も増えたお陰で、俄然その魅力に取り付かれてしまった。その興味の穴埋めで90年代後半から00年代前半のギャングスタラップを中古屋で掘り起こしているのだけども、地方の吹き溜まりのラップを聴くにつれて、「インターネットの発達に伴い、音楽には距離の概念が薄れて地域性が無くなりつつある」という考え方に疑問を持つようになってきた。<br /><br />昔のマイナーギャングスタラップから聴き取れるのは「当時流行っていたスタイルや音楽性」に他ならず、とどのつまり、10年前だろうが、20年前だろうが、インターネットが無い時代に地方のヤンキーがつくっていたヒップホップに地域の持つ独特な空気を感じられることのほうが稀だった。彼らが作るヒップホップはそれぞれが忠実にNO LIMITや、Cash Moneyや、Timbalandや、Dr.Dreや、2Pacのパクリであって、その参照元の違いが"地域性"のように見えているだけだった。一部の才能あるアーティストが作るヒップホップの影響力を"地域性"の源と見なしてしまえば、「インターネットが音楽の持つ地域性を失わせつつある」という言葉をそのまま地方のヒップホップへ当てはめることに抵抗を覚えてしまう。<br /><br />G-Sideが"The ONE...COHESIVE"のあらゆる曲の中で「俺達はインターネットから有名になった」と強調するように彼らのファンの大半は、インターネットという"地域"の中にいる。ハンツビルのような過疎地にファンを集めることの難しさを考えると、インターネットをひとつの地域と見做してしまって、そこで自らのファンを集める方法を模索するほうが簡単なのかもしれない。インターネットを、世界を繋ぐ架け橋として見るのではなく、ファンを獲得するための"ひとつの地域"として見てしまえば、そこで活動するアーティスト達の「地域性の無さ」にも合点がいくし、一部の才能あるアーティスト達がインターネット上に築きつつある独特なムードに注意がひきつけられる。<br /><br />G-Sideの作品群、"Starships & Rocketz"(08年)、"Huntsville International"(09年)、"The ONE...COHESIVE"(11年)を並べてみると、Wiz Khalifa周りやクラウドラップともシンクロする90年代回帰的なローファイヒップホップの流れを聴き取ることができる。チョップされた上ネタを再構築してスペーシーな曲を作り上げていた"Starships~"と、上ネタは原曲をそのままにドラムだけを足したような楽曲が目立つ"The ONE~"を対比してみると、"Starships~"の方がよりヒップホップマナーに近いところにあるように聴こえるのが面白い。原曲そのままのメロディラインが強調された楽曲群は、ヒップホップの枠組みからも解放されたような"自由さ"を持って2010年以降のムードを形作っている。<br /><br />言ってしまえば、Lil Bを筆頭にクラウドラップの面々がつくっている独特な"自由なムード"こそが、いまインターネット独自の"地域性"と呼べるものだろう。特に、今回レビューの対象にあげたG-Sideの"The ONE~"は、ヒップホップマナーから解き放たれ、箍が外れたような部分が強調される反面、それを理性で押さえつけた折り目正しいスタイルがアクとなってせめぎ合い、微妙なバランスで成立していて、そこが大きな魅力となって出てきている。インターネットで培った"自由なムード"のなかにも、どうしても生真面目さが抜けきれない感じというか。<br /><br />また、地域性云々の話は置いておいたとしても、いままで雑誌やラジオやTVがリスナーに届けていたヒップホップと、インターネットがリスナーに届けるヒップホップの質は変わってきているとは思う。Odd FutureのTyler, the Creatorがありとあらゆるメディアに取り上げられたことや、Wiz Khalifaの"Black and Yellow"が全米ヒットチャートの1位になったことや、Lil WayneやGucci Mane、Nicki Minajiの成功を見ればわかるようにインターネットは彼らの"キャラクター"を前面に押し出し、そのイメージを波及させる。それこそ"音楽性"よりアーティストの持つ"キャラクター性"の方に注目が集まっているような印象をも与えるのは、旧来のメディアに接するときには自ら音楽の情報を得ようとする意識や姿勢があったのに対して、インターネットから垂れ流される情報を受け身で得る人が増えたせいかもしれない。何にせよ、パッと見てわかりやすいイメージや興味を惹くキャラクターは、「楽に他人に伝える」という目的のもとに利用されるインターネットメディアとの親和性が高いようだ。<br /><br />つまり、インターネット上での評価は、まずアーティスト個々のキャラクター性ありきで行われる。ここ数年で大きくプロップスを上げてきた先のアーティストの面々を見ても、彼らのつくる曲のクオリティの良し悪しだけでなく、曲のなかで表現される"キャラクターの強さ"こそが鍵になっている。だから、Curren$yよりわかりやすいキャラクターイメージを持つWiz Khalifaのほうが評価されたし、The Packのなかでは言うまでもなくLil Bなのだ。<br /><br />G-Sideを振り返ってみてみると、彼らのつくる楽曲自体の面白さやクオリティは他のアーティストと比較してもまったく引けをとらないし、アンビエントなローファイヒップホップのクリエイターとしては先駆者のアドバンテージもある。しかしそれでも、ムーブメントの顔にもなれず、いまいちブレイクし切れないのは彼らのキャラクターが決定的に弱いせいだろう。もし彼らが自分達の言うように"インターネットで成り上がる"と腹を決めたのであれば、曲の中で「俺達はインターネットから有名になった」という他にもっと何か表現することがあったはずだと思うのだけど……。この"The ONE...COHESIVE"だけでなくこれまでリリースされてきたアルバム/ミックステープの出来は全て申し分無く、時代の先端を行っているグループだけに、その波及力の無さがなんとも口惜しい。<br /><br /><img style="margin: 8px 0px 15px 0pt; float: left; cursor: pointer;" src="http://i220.photobucket.com/albums/dd173/debumegane/hr-2.png" border="0" /><br /><br />□ 2010<br /><br /><a onblur="try {parent.deselectBloggerImageGracefully();} catch(e) {}" href="http://1.bp.blogspot.com/-KMjjXmNTYvE/TVXcfAglkYI/AAAAAAAAAQ0/OvO0e7VosR0/s1600/Waka%2BFlocka%2BFlockaveli.png"><img style="float:left; margin:0 10px 10px 0;cursor:pointer; cursor:hand;width: 120px; height: 120px;" src="http://1.bp.blogspot.com/-KMjjXmNTYvE/TVXcfAglkYI/AAAAAAAAAQ0/OvO0e7VosR0/s320/Waka%2BFlocka%2BFlockaveli.png" border="0" alt=""id="BLOGGER_PHOTO_ID_5572602539211592066" /></a><br /><br />Waka Flocka Flame<br />"Flockaveli"<br /><br /><br /><br /><br /><a onblur="try {parent.deselectBloggerImageGracefully();} catch(e) {}" href="http://1.bp.blogspot.com/-bI3edEpZFfc/TVXcPT9wcdI/AAAAAAAAAQk/nYlj5Y_lquY/s1600/my_beautiful_dark_twisted_fantasy_kanye_west_526x526.png"><img style="float:left; margin:0 10px 10px 0;cursor:pointer; cursor:hand;width: 120px; height: 120px;" src="http://1.bp.blogspot.com/-bI3edEpZFfc/TVXcPT9wcdI/AAAAAAAAAQk/nYlj5Y_lquY/s320/my_beautiful_dark_twisted_fantasy_kanye_west_526x526.png" border="0" alt=""id="BLOGGER_PHOTO_ID_5572602269556306386" /></a><br /><br />Kanye West<br />"My Beautiful Dark Twisted Fantasy"<br /><br /><br /><br /><br /><a onblur="try {parent.deselectBloggerImageGracefully();} catch(e) {}" href="http://3.bp.blogspot.com/-nCgKSTcY6oA/TVXcYVH-MXI/AAAAAAAAAQs/zAE-Tbp4Hfk/s1600/kushoj.png"><img style="float:left; margin:0 10px 10px 0;cursor:pointer; cursor:hand;width: 120px; height: 120px;" src="http://3.bp.blogspot.com/-nCgKSTcY6oA/TVXcYVH-MXI/AAAAAAAAAQs/zAE-Tbp4Hfk/s320/kushoj.png" border="0" alt=""id="BLOGGER_PHOTO_ID_5572602424486408562" /></a><br /><br />Wiz Khalifa<br />"Kush & OJ"<br /><br /><br /><br /><br /><a onblur="try {parent.deselectBloggerImageGracefully();} catch(e) {}" href="http://2.bp.blogspot.com/-CZ1GjcRejG0/TVXcmdpBysI/AAAAAAAAAQ8/i0ZCxrlnKa0/s1600/6kiss.png"><img style="float:left; margin:0 10px 10px 0;cursor:pointer; cursor:hand;width: 120px; height: 120px;" src="http://2.bp.blogspot.com/-CZ1GjcRejG0/TVXcmdpBysI/AAAAAAAAAQ8/i0ZCxrlnKa0/s320/6kiss.png" border="0" alt=""id="BLOGGER_PHOTO_ID_5572602667290708674" /></a><br /><br />Lil B<br />"6 Kiss"<br /><br /><br /><br /><br /><a onblur="try {parent.deselectBloggerImageGracefully();} catch(e) {}" href="http://4.bp.blogspot.com/-OKRTJb2tRiU/TVXcqsFSaXI/AAAAAAAAARE/hz-QLlZ_JWI/s1600/len.png"><img style="float:left; margin:0 10px 10px 0;cursor:pointer; cursor:hand;width: 120px; height: 120px;" src="http://4.bp.blogspot.com/-OKRTJb2tRiU/TVXcqsFSaXI/AAAAAAAAARE/hz-QLlZ_JWI/s320/len.png" border="0" alt=""id="BLOGGER_PHOTO_ID_5572602739886811506" /></a><br /><br />Young L<br />"L-E-N"<br /><br /><br /><br /><br /><a onblur="try {parent.deselectBloggerImageGracefully();} catch(e) {}" href="http://1.bp.blogspot.com/-AntfRqpoGXk/TVXq1PS16KI/AAAAAAAAAR8/oh5OaJm7WEs/s1600/stunnaman.png"><img style="float:left; margin:0 10px 10px 0;cursor:pointer; cursor:hand;width: 120px; height: 120px;" src="http://1.bp.blogspot.com/-AntfRqpoGXk/TVXq1PS16KI/AAAAAAAAAR8/oh5OaJm7WEs/s320/stunnaman.png" border="0" alt=""id="BLOGGER_PHOTO_ID_5572618314300385442" /></a><br /><br />Stunnaman<br />"Legendary"<br /><br /><br /><br /><br /><a onblur="try {parent.deselectBloggerImageGracefully();} catch(e) {}" href="http://2.bp.blogspot.com/-_vSgupGbedY/TVXcxi5wf-I/AAAAAAAAARM/rrnqMODHhNQ/s1600/bastard.png"><img style="float:left; margin:0 10px 10px 0;cursor:pointer; cursor:hand;width: 120px; height: 120px;" src="http://2.bp.blogspot.com/-_vSgupGbedY/TVXcxi5wf-I/AAAAAAAAARM/rrnqMODHhNQ/s320/bastard.png" border="0" alt=""id="BLOGGER_PHOTO_ID_5572602857681616866" /></a><br /><br />Tyler, the Creator<br />"Bastard"<br /><br /><br /><br /><br /><a onblur="try {parent.deselectBloggerImageGracefully();} catch(e) {}" href="http://4.bp.blogspot.com/-qamlT2Qq4X4/TVXduro-sXI/AAAAAAAAARs/7MrsbUzJIQM/s1600/earl.png"><img style="float:left; margin:0 10px 10px 0;cursor:pointer; cursor:hand;width: 120px; height: 120px;" src="http://4.bp.blogspot.com/-qamlT2Qq4X4/TVXduro-sXI/AAAAAAAAARs/7MrsbUzJIQM/s320/earl.png" border="0" alt=""id="BLOGGER_PHOTO_ID_5572603907999183218" /></a><br /><br />Earl Sweatshirt<br />"Earl"<br /><br /><br /><br /><br /><a onblur="try {parent.deselectBloggerImageGracefully();} catch(e) {}" href="http://4.bp.blogspot.com/-v14y1leCKD8/TVXdl2epvQI/AAAAAAAAARk/aYSuZofuFh0/s1600/mellowhype.png"><img style="float:left; margin:0 10px 10px 0;cursor:pointer; cursor:hand;width: 120px; height: 120px;" src="http://4.bp.blogspot.com/-v14y1leCKD8/TVXdl2epvQI/AAAAAAAAARk/aYSuZofuFh0/s320/mellowhype.png" border="0" alt=""id="BLOGGER_PHOTO_ID_5572603756289834242" /></a><br /><br />Mellowhype<br />"Blackendwhite"<br /><br /><br /><br /><br /><a onblur="try {parent.deselectBloggerImageGracefully();} catch(e) {}" href="http://3.bp.blogspot.com/-E79VkpcAJ5g/TVXstCCf8gI/AAAAAAAAASM/1NuaEOos3iY/s1600/roach.png"><img style="float:left; margin:0 10px 10px 0;cursor:pointer; cursor:hand;width: 120px; height: 120px;" src="http://3.bp.blogspot.com/-E79VkpcAJ5g/TVXstCCf8gI/AAAAAAAAASM/1NuaEOos3iY/s320/roach.png" border="0" alt=""id="BLOGGER_PHOTO_ID_5572620372326478338" /></a><br /><br />Roach Gigz<br />"Roachy Balboa"<br /><br /><br /><br /><br /><a onblur="try {parent.deselectBloggerImageGracefully();} catch(e) {}" href="http://2.bp.blogspot.com/-oVWRCUGreEg/TVXc32tDlPI/AAAAAAAAARU/y5N7rZ6ZzSY/s1600/lito.png"><img style="float:left; margin:0 10px 10px 0;cursor:pointer; cursor:hand;width: 120px; height: 120px;" src="http://2.bp.blogspot.com/-oVWRCUGreEg/TVXc32tDlPI/AAAAAAAAARU/y5N7rZ6ZzSY/s320/lito.png" border="0" alt=""id="BLOGGER_PHOTO_ID_5572602966076265714" /></a><br /><br />Starlito<br />"Renaissance Gangster"<br /><br /><br /><br /><br /><a onblur="try {parent.deselectBloggerImageGracefully();} catch(e) {}" href="http://1.bp.blogspot.com/-SlUEhH2GYtY/TVXfpZgkL1I/AAAAAAAAAR0/_8fJbuREshQ/s1600/litosway.png"><img style="float:left; margin:0 10px 10px 0;cursor:pointer; cursor:hand;width: 120px; height: 120px;" src="http://1.bp.blogspot.com/-SlUEhH2GYtY/TVXfpZgkL1I/AAAAAAAAAR0/_8fJbuREshQ/s320/litosway.png" border="0" alt=""id="BLOGGER_PHOTO_ID_5572606016255962962" /></a><br /><br />Starlito<br />"Starlito's Way 3"<br /><br /><br /><br /><br /><a onblur="try {parent.deselectBloggerImageGracefully();} catch(e) {}" href="http://4.bp.blogspot.com/-6vbLc2k0xEY/TVXdB83tNXI/AAAAAAAAARc/XD30mZ38XNM/s1600/bigboi.png"><img style="float:left; margin:0 10px 10px 0;cursor:pointer; cursor:hand;width: 120px; height: 120px;" src="http://4.bp.blogspot.com/-6vbLc2k0xEY/TVXdB83tNXI/AAAAAAAAARc/XD30mZ38XNM/s320/bigboi.png" border="0" alt=""id="BLOGGER_PHOTO_ID_5572603139530241394" /></a><br /><br />Big Boi<br />"Sir Lucious Left Foot: The Son of Chico Dusty"<br /><br /><br /><br /><br /><a onblur="try {parent.deselectBloggerImageGracefully();} catch(e) {}" href="http://2.bp.blogspot.com/-rkSNErllKC0/TVXr0GoWBrI/AAAAAAAAASE/73K_F8vetJQ/s1600/gunna.png"><img style="float:left; margin:0 10px 10px 0;cursor:pointer; cursor:hand;width: 120px; height: 120px;" src="http://2.bp.blogspot.com/-rkSNErllKC0/TVXr0GoWBrI/AAAAAAAAASE/73K_F8vetJQ/s320/gunna.png" border="0" alt=""id="BLOGGER_PHOTO_ID_5572619394306410162" /></a><br /><br />Gunna Dee<br />"Hustler By Nature"<br /><br /><br /><br /><br /><a onblur="try {parent.deselectBloggerImageGracefully();} catch(e) {}" href="http://3.bp.blogspot.com/_hvnQVUZYThc/TBoOnzl7aSI/AAAAAAAAAPo/HnBxJvwdBrg/s1600/tenyears.png"><img style="float:left; margin:0 10px 10px 0;cursor:pointer; cursor:hand;width: 120px; height: 120px;" src="http://3.bp.blogspot.com/_hvnQVUZYThc/TBoOnzl7aSI/AAAAAAAAAPo/HnBxJvwdBrg/s320/tenyears.png" border="0" alt=""id="BLOGGER_PHOTO_ID_5483711573303978274" /></a><br /><br />ECD<br />"Ten Years After"微熱教授http://www.blogger.com/profile/15083927576509688324noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-26765657.post-66844409334056560262010-11-23T21:39:00.053+09:002010-11-28T22:49:20.341+09:00Waka Flocka - Flockaveli & Kanye West - My Beautiful Dark Twisted Fantasy<a onblur="try {parent.deselectBloggerImageGracefully();} catch(e) {}" href="http://2.bp.blogspot.com/_hvnQVUZYThc/TPJbosW_jwI/AAAAAAAAAQI/2cIzguWa0bQ/s1600/my_beautiful_dark_twisted_fantasy_kanye_west_526x526.png"><img style="float:left; margin:0 10px 10px 0;cursor:pointer; cursor:hand;width: 120px; height: 120px;" src="http://2.bp.blogspot.com/_hvnQVUZYThc/TPJbosW_jwI/AAAAAAAAAQI/2cIzguWa0bQ/s320/my_beautiful_dark_twisted_fantasy_kanye_west_526x526.png" border="0" alt=""id="BLOGGER_PHOTO_ID_5544594845906996994" /></a><a onblur="try {parent.deselectBloggerImageGracefully();} catch(e) {}" href="http://4.bp.blogspot.com/_hvnQVUZYThc/TPJbscvqDFI/AAAAAAAAAQQ/dPViYIWCzdE/s1600/Waka%2BFlocka%2BFlockaveli.png"><img style="float:left; margin:0 10px 10px 0;cursor:pointer; cursor:hand;width: 120px; height: 120px;" src="http://4.bp.blogspot.com/_hvnQVUZYThc/TPJbscvqDFI/AAAAAAAAAQQ/dPViYIWCzdE/s320/Waka%2BFlocka%2BFlockaveli.png" border="0" alt=""id="BLOGGER_PHOTO_ID_5544594910434954322" /></a><br /><br clear="all">あまりに退廃的で狂った世界をつくりあげるLex Lugerのビートと、荒削りという以上にその荒々しさがオーラとなって降りてきているWaka Flockaのラップ。そのコンビネーションは、"まったく中身がない"暴力賛歌をベースに進行しながら、どうしようもないゲットーで生きるどうしようもない若者がどんづまりで拳銃を振り上げなら行進する姿そのものを照らし出す。<br /><br />アルバム中、「唯一テーマがある」と言われる"Fuck This Industry"ではWakaが銃撃に倒れて病院に運ばれたときにも一切関知しようとしなかった音楽産業を徹底的にこき下ろしているし、質も内容もいままでのミックステープとほとんど変わらない。そんなレーベル側からまったくコントロールを受けないままリリースされた『Flockaveli』には、 Wakaが溜め込んだフラストレーションだけがパッケージングされているので、ミックステープの持つ"猥雑さ"に魅力を感じるリスナーにとって、これほど生々しく心に響いてくる商業作品は他に見当たらないだろう。<br /><br />しかし、メッセージ性の欠片もない『Flockaveli』に限らず、アンビエントから浜崎あゆみまでをジャックしてしまうLil BのBasedを聴いていても、ウィッチハウスとも微妙にシンクロするOdd Futureなどのローファイムーブメントを見ていても、もはや「ヒップホップとは何か?」という命題に取り組む姿勢には何の意味も無いように思えてしまう。ヒップホップの様式や美学に捕われている人間はいないんじゃないかと錯覚してしまうほど、若手のアーティストは皆が皆、DIYの精神を持って自由な解釈でヒップホップを作るようになった。<br /><br />2年前の『808s And Heartbreak』はチープなサウンドと歌唱を軸に添えながら、ルサンチマンを溜め込んで自己の内面に没入していく、それまでのラップミュージックの枠組みから外れたとても先鋭的な作品だった。「内省的なイメージで売ろうとする黒人アーティストはポップフィールドではいなかった」という指摘も当時あったように、『808s And Heartbreak』はDrakeのような黒人ラッパーがナーヴァスな世界を展開しながらもヒットチャートにランクインする時代の先駆けとなった作品とも言えるし、それこそ、このチープな音と歌で彩られたイビツなヒップホップが自由な発想のもと作られるその後のヒップホップの形を大きく変えたのは明白だ。<br /><br />Kanye Westの『My Beautiful Dark Twisted Fantasy』は『808s And Heartbreak』の延長に位置するアーティスティックな作品で、製作に3億円かかったというスケールも含め全く引けを取らない。膨大な量のサンプリングと、元ネタを華やかに演出するオーケストラの迫力だけでも充分物凄いが、クラップ音だけのためにハンドクラップ奏者を4名も雇い入れ、RihannaやAlicia Keys、The-Dreamといった大物シンガー達にコーラスだけさせてゲストクレジットも残さないという起用には「無駄遣い」という言葉までよぎる人も多いだろう。しかも、そこまで金をかけて奏でられる音にはチープなコーティングや質の悪い低音がのっけられ、ひずんだ音像になるようにミックスされていて、インディペンデントミュージックの持つ"チープ感"とシンクロした現時代性までもを獲得している。ここで凄いのは、DIYでつくられるヒップホップとは真逆に、金と人材と手間をかけまくることでつくりあげた"チープなヒップホップ"が、インディペンデントミュージックの持つイビツさをより立体的に浮かび上がらせているところだ。<br /><br />意図的であるにしろないにしろ、『808s And Heartbreak』が「ヒップホップとは何か?」という問いを突きつけたからこそ、いまの新たな表現――ポップフィールドで見かけるアーティスティックで内省的なヒップホップやインディペンデントシーンに広がるプリミティブなヒップホップ――が出来上がった。『My Beautiful Dark Twisted Fantasy』はチープで90年回帰的な"いまのヒップホップの姿"を屈折させることで「ヒップホップとは何か?」を改めて問いかける。もはやヒップホップの様式や美学に捕われることはナンセンスに思えてしまうこんな時代でも「これからの時代のヒップホップはどうあるべきものなのか?」を考えさせ、さらに"次の時代の扉"を開こうとする Kanye Westのビジョンと貪欲さには感動を覚えずにいられない。微熱教授http://www.blogger.com/profile/15083927576509688324noreply@blogger.com16tag:blogger.com,1999:blog-26765657.post-55153349900163306942010-09-12T19:25:00.002+09:002010-09-12T21:33:21.201+09:00Odd Future Wolf Gang Kill Them All<img src="http://i220.photobucket.com/albums/dd173/debumegane/ofwgkta.png" border="0" alt="Photobucket"><br clear="all"><br />00年前後に支持を集めてムーブメントを起こしていたアンダーグラウンドヒップホップが03年ごろを境に失速し、廃れていってしまった原因は幾つも考えられる。アマチュアの増加に伴う粗雑な作品の乱立。方向性を見失ったプロダクションのマンネリ化。ファンコミュニティや通販サイトの閉鎖etc...<br /><br />何より、メインストリームの"カウンター"であったはずのアンダーグランドヒップホップが、その意味を持ちえなくなってしまったことが失墜の最大の原因だろう。アーティストの意向よりも、金儲けが優先され、クリエイティビティを失った商業主義的なヒップホップに対するアンチテーゼ。それこそが、アンダーグラウンドヒップホップの最大のモチベーションで、最大の存在理由だったはずなのに、Jay-Zの"The Blueprint"あたりを皮切りにメインストリームヒップホップは矜持を取り戻し、アンダーグラウンドヒップホップはアマチュアの手垢にまみれた多くの駄作と一緒に沈んでいった。<br /><br />思い返せば、アンダーグラウンドヒップホップの金字塔"Hip-Hop Music for the Advanced Listener EP"がリリースされたのが98年。当時、Anticonが「オルタナティブヒップホップのさきがけ」として注目を受けたのは、ポストロックに影響を受けたその独特な音楽性に拠るところが勿論大きいけども、"Anticon"というクルーそのものの特異さが引き金となっていたところも見逃せない。<br /><br />東海岸、西海岸、中西部、カナダの各地方のヒップホップオタクがインターネットで繋がって97年に結成されたAnticonは、ポストロックやエレクトロニカを混ぜ合わせたり、ラップではなく鼻歌をビートにのせたりしながら、これまでにない斬新な発想のヒップホップを作り出していた。しかしながら、彼らが同時代の他のグループと比べてさらに変わっていたのは、その独特な音楽だけでなく、デザイン画や風景写真でつくられたジャケットや、Tシャツやキャップなどのファングッズ、広告/流通を含めて全て自分達の手でクリエイトしていたところだ。<br /><br />「Independent As Fuck」という言葉はその数年前にCompany Flowが使っていたものだけど、DIYで音楽を作りながらヒップホップ概念を覆し進んでいくAnticonというクルーは、まさに商業の流通にのってパッケージ化されていくヒップホップに対するカウンターそのものだった。「ヒップホップとは何か? 本当のクリエイティビティは何か?」を問いかけていたAnticonの影響力はすさまじく、ナードラップと呼ばれる同じ音楽性を持つ作品がたくさんリリースされた。その後の失墜は先に書いたとおり。<br /><br /><br />話はここで少し変わるけども、以前にレビューでも取り上げたLil Bの影響を受けたアーティスト達が増えてきているらしい。たとえば、Tyler, the Creatorを中心として、Earl Sweatshirt、Domo Genesis、Hodgy Beatsといったラッパー/トラックメイカー~イラストレーターまでが集うOdd Future。<a href="http://oddfuture.tumblr.com/" target="_blank">Tumblr</a>からいままでにリリースされたアルバムやミックステープをダウンロードできるが、彼らの音楽にはLil BやWaka Flockaなどの新進気鋭アーティストの影響だけでなく、MF DoomやNecroやAesop Rockに比較されることからもわかるように往年のアンダーグラウンドヒップホップと同種の雰囲気をまとっているところが大きな特徴だ。<br /><br />それこそ、猟奇的なレイプを妄想してつくった曲や、世の中に対する不満を「FUCK」で埋め尽くす曲、自分を見捨てて去っていった父親に対する怨みをぶつける曲など、10代のラッパーならではのフラストレーションが噴出したラップが多く、描かれる"世界"の捉えどころのなさも00年アンダーグラウンドヒップホップに近いものがあるが、彼らはまだ10代のキッズであること、そして過去のヒップホップ知識をそれほど持っていないことを考えても、00年アンダーグラウンドから影響を受けたわけではないところが興味深い。あくまでOdd Futureは、"いまの時代のヒップホップ"をインターネットツールだけでなく、動画編集ソフトやアートツールを駆使しながらクリエイトしている。<br /><br />Tyler, the Creatorは古臭い中年ラッパーをDISったりしているけども、実際、CD媒体や金をかけたPVや広告/流通とのコネクションなど既存の枠組みに捕らわれながら窮屈にヒップホップをつくっているアーティストや組織すべてに対する"カウンター"となっているのがOdd Futureというクルーだ。過去のヒップホップが持っていた"DIY精神"が、インターネットで手軽に広げられる流通やアートワークや映像の分野まで範囲を広げ、20代をこえたインテリやナードだけでなくストリートの子供にまで根を下ろすようになってきた。<br /><br />いまの時代、キッズだけでも集まれば自由にヒップホップをクリエイトできる。いままで様々なアーティストが商業主義のヒップホップへ自主制作精神で対抗してきたが、Odd Futureの存在は"商業主義"だけでなく大人たちの作ってきたヒップホップ自体に問いを投げかけている。<br /><br /><img style="margin: 8px 0px 15px 0pt; float: left; cursor: pointer;" src="http://i220.photobucket.com/albums/dd173/debumegane/hr-2.png" border="0" /><br /><br /><object width="444" height="276"><param name="movie" value="http://www.youtube.com/v/fk68dCUQjzE?fs=1&hl=ja_JP"></param><param name="allowFullScreen" value="true"></param><param name="allowscriptaccess" value="always"></param><embed src="http://www.youtube.com/v/fk68dCUQjzE?fs=1&hl=ja_JP" type="application/x-shockwave-flash" allowscriptaccess="always" allowfullscreen="true" width="444" height="276"></embed></object><br /><br /><object width="444" height="276"><param name="movie" value="http://www.youtube.com/v/78_loMbmKJ8?fs=1&hl=ja_JP"></param><param name="allowFullScreen" value="true"></param><param name="allowscriptaccess" value="always"></param><embed src="http://www.youtube.com/v/78_loMbmKJ8?fs=1&hl=ja_JP" type="application/x-shockwave-flash" allowscriptaccess="always" allowfullscreen="true" width="444" height="276"></embed></object><br /><br /><img style="margin: 8px 0px 15px 0pt; float: left; cursor: pointer;" src="http://i220.photobucket.com/albums/dd173/debumegane/hr-2.png" border="0" /><br /><br /><a onblur="try {parent.deselectBloggerImageGracefully();} catch(e) {}" href="http://2.bp.blogspot.com/_hvnQVUZYThc/SW1tAzk_GzI/AAAAAAAAAMA/UmrNy4-a62k/s1600-h/usa.png"><img style="float:left; margin:0 10px 10px 0;cursor:pointer; cursor:hand;width: 42px; height: 21px;" src="http://2.bp.blogspot.com/_hvnQVUZYThc/SW1tAzk_GzI/AAAAAAAAAMA/UmrNy4-a62k/s400/usa.png" border="0" alt=""id="BLOGGER_PHOTO_ID_5291004997842967346" /></a>西海岸ローファイ新世代<br /><br />■ Tyler, the Creator "Bastard" <a href="http://www.zshare.net/download/70331848bbb9597a/" target="_blank"><span style="font-size:85%;">: download</span></a><br />■ Earl Sweatshirt "Earl" <a href="http://www.megaupload.com/?d=YYA2TD94" target="_blank"><span style="font-size:85%;">: download</span></a><br />■ Domo Genesis "Rolling Papers" <a href="http://limelinx.com/files/19c6c0722c3bf0d8429899da2775d896" target="_blank"><span style="font-size:85%;">: download</span></a><br />■ Odd Future "Radical" <a href="http://www.megaupload.com/?d=V42298AH" target="_blank"><span style="font-size:85%;">: download</span></a><br /><br />■ The NRK Compilation <a href="http://limelinx.com/files/22541ddfa2d663f712938c2b56063f99" target="_blank"><span style="font-size:85%;">: download</span></a><br />■ Δ Vritra/Walter Flowers "The Story Of Marsha Lotus/Technicolour Pyramids" <a href="http://limelinx.com/files/35a01cd92f212334ed5a9423685a1a1d" target="_blank"><span style="font-size:85%;">: download</span></a><br /><br />■ Main Attrakionz "808s & Dark Grapes" <a href="http://limelinx.com/files/d2cd711f79d58db85cbf1067bebb9796" target="_blank"><span style="font-size:85%;">: download</span></a><br /><br />■ Issue "The E" <a href="http://limelinx.com/files/9cd16aeb64e2f7e38c800bc2284c365c" target="_blank"><span style="font-size:85%;">: download</span></a>微熱教授http://www.blogger.com/profile/15083927576509688324noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-26765657.post-32685159475865251072010-07-19T10:00:00.005+09:002010-09-12T19:57:05.211+09:00『日本語ラップ.com』管理者にインターネットから産まれる日本語ラップシーンについて訊いてみたアーティストが自らの曲をリスナーに簡単に視聴してもらえるようにYouTubeやMySpaceを活用する。それだけではなく、誰でもすぐにiTunesに入れて楽しんでもらえるようにオンラインストレージサイトに作ったばかりの音楽ファイルやミックステープをアップロードする。他のアーティストがつくった"イケてる"曲をジャックして、新しい曲に作り変えて自分のスタイルをアピールする。そして、ジャックした曲のコンセプトにのっかってラップで遊ぶ。2010年に入り、インターネットをベースとしたムーブメントが少しずつ広がりを見せていますが、それはフリー音源やYouTubeリンクなどの情報をリアルタイムで発信する一部のTwitterアカウントやニュースサイトにアクセスできている人たちの間で"一般的"になっているものに過ぎず、「いまインターネット上で起きていること」を私たちに紹介してくれるメディアはほとんど存在しません。<br /><br />今回の記事は、『<a href="http://nihon5rap.com/" target="_new">日本語ラップ.com</a>』の管理者である<a href="http://twitter.com/benzeezy" target="_new">Benzeezyさん</a>に声をかけさせていただき、実現した対談形式のインタビュー記事です。日本語ラップの若手アーティストを中心に広がりを見せるこのムーブメントを追って、ホットな情報を届けてくれる数少ない貴重なニュースサイト/Twitterアカウントを更新されているBenzeezyさんがこの新しい時代の日本語ラップをどのように捉え、そこから産まれてくるものの未来をどう見据えているのか。インターネットから産まれるアーティストの才能やシーンに関する考察を交えてインタビューを取らせていただきました。<br /><br /><日本語ラップ.com><br />(HP)<a href="http://nihon5rap.com/" target="_new">http://nihon5rap.com</a><br />(Twitter)<a href="http://twitter.com/benzeezy" target="_new">http://twitter.com/benzeezy</a><br /><img style="margin: 8px 0px 15px 0pt; float: left; cursor: pointer;" src="http://i220.photobucket.com/albums/dd173/debumegane/hr-2.png" border="0" /><br /><br />――現在の日本語ラップシーンで、特に若手のアーティストの情報を得られる場というものがなかなかありません。それこそTwitterを見てみても若手アーティストの情報がほとんどない。SEEDA以降、ハスラーラップ以降の日本語ラップシーンのなかでもスキルや高いクリエイティビティをもったアーティストはたくさんでてきているはずなのに、そこに目を光らせて情報を発信しているメディアが皆無なのが現状なわけです。一番フックアップできていたのがSEEDAの『Concrete Greeen』という。そういった中で、Twitterを上手く活用しつつ、こういうポータルサイト(日本語ラップ.com)で若手アーティストの情報や楽曲をアップして、明確に若手フックアップに力を注いでいるメディアはとても貴重だと思い、声をかけさせてもらいました。そこでまず、Benzeezyさんが『日本語ラップ.com』を立ち上げることとなったきっかけを教えてもらいたいのですが。<br /><br />Benzeezy:僕自身1997年頃まではUS、日本を問わず聴き漁る相当なヒップホップヘッズだったのですが、ビッグビート等の新しいと言われていた音楽に出会ってからは、日本のヒップホップから遠ざかっていました。2007年頃、人づてに聴いたSEEDAさんの『花と雨』で日本語ラップのレベルが向上していた事を体感し、再び日本語ラップに興味を持ちました。SEEDAさんやその周辺の方々をDIGして、過去作品はもちろん、シーンで「ドープ」と言われているアーティストも全てチェックしてましたね。また、当時良い意味でMySpaceがとんでもない事になっていたので、ドープなアーティストをひたすら探し回り、チェック(視聴)出来る作品はほぼ全て聴かせて頂きました。そしてそれ以降、僕のアンテナに引っ掛かるアーティストの作品がリリースされれば購入したり、試聴する事を繰り返していました。特に、シーンから音楽性もアティテュードも頭二つ程飛び抜けていたSEEDAさんの動向は気になりましたし、常に追い掛けていました。<br /><br />――なるほど。USメインストリームを意識したラップのスタイルやビート、リアル志向のリリック、若手のフックアップなども含めてSEEDAが日本語ラップにもたらしたものは非常にたくさんあります。BenzeezyさんはSEEDAのどういった部分を注目していたのですか。<br /><br />Benzeezy:2009年2月にSEEDAさんとOKI(GEEK)さんの『TERIYAKI BEEF』がSEEDAさんのブログ上で発表されましたが、これが特に面白かったですね。SEEDAさんが当時MySpaceに『TERIYAKI BEEF』映像をアップロードし、<a href="http://www.youtube.com/watch?v=Kncxufz05Nk" target="_blank">東京ブロンクスさんがYouTubeに同映像をアップロードされていました</a>。過去、日本語ラップシーンでも幾つか"DIS"が存在していたのを認識していましたが、初めてエンターテイメントとして昇華出来たDISという感じで、ヘッズとして単純に面白かったです。SKY BEATZさんのビートをこのタイミングで持ってきたSEEDAさん、映像最後のSDPのDVDリリースPR映像を入れてくる東京ブロンクスさん。そういったセンスも含めて当時感じた事の無い、かなりフレッシュな印象を受けました。こんなフレッシュなシットをもっと世間に広めてみたいと思い、YouTube経由で東京ブロンクスさんにコンタクトをとって、同氏の許可を頂き僕のアカウントへ同映像をアップロードしました。同映像のアップロード後、僕は知り得る限りのネットプロモーション方法を利用し、結果的にSEEDAさんや東京ブロンクスさんがアップロードされた映像よりも僕のアップロード映像が世間には『TERIYAKI BEEF』のムービーとして認知されました。映像の視聴数も含めて。<br /> そして、それをきっかけとして、『TERIYAKI BEEF』関連の動きがあれば、そのムーブメントを”リーク”という形でYouTubeへ映像や音源をアップロード、PRしていました。SEEDAさんが出演した<a href="http://www.youtube.com/watch?v=pTP_rU9_CTI" target="_new">VERBALさん(TERIYAKI BOYZ)のポッドキャスト番組</a>、同番組内での本人(VERBAL)の前でフリースタイル、同番組収録後のSEEDAさんのコメント映像、そしてフリーダウンロードの"no title"(後の"DEAR JAPAN")などですね。SEEDAさんのアップデートをひたすら追い掛けていました。<br /><br />――DISといえば、2004年にDev LargeとK DUB SHINEのバトルがあって注目を受けていましたけども、SEEDAとTERIYAKI BOYZのバトルも同じように日本語ラップをあまり聴いていない人にも注目を受けたものですね。この2つのバトルは両方とも"インターネット発"で無料で聴けて、しかもビッグネームというところで色んな人に聴かれていました。ラップで喧嘩するというエンターテイメント性と手軽にコミットできる敷居の低さが、日本語ラップを世間に広めた。そういう意味でも、インターネットで音楽を発信するということの可能性をいち早く示していたものです。しかもSEEDAとTERIYAKI BOYZのバトルはBenzeezyさんが言うとおり、MySpaceやYouTubeやPodCastといったツールを駆使ししたエンターテイメントでしたからね。あたらしい時代の音楽の形が端的にあらわれているものだったという見方もできます。<br /> そしてこのビーフがあった時期は、SKY BEATZやSDPという名前も出てきましたが、SEEDAの『Concrete Greeen』を皮切りに新しいラッパーやトラックメイカーも次々と出てきた時期でもあります。当時、SEEDAのアップデートを待っていたと言いますが、そのアップデートをフォローするような立ち位置でいたということでしょうか? 当時もWEBZINEやブログなどを含めて色んなメディアがあったと思いますが、他のメディアとのスタンスをどう切り分けていたのかが気になります。<br /><br />Benzeezy:SEEDAさんの『TERIYAKI BEEF』が『日本語ラップ.com』開設のトリガになったのは間違いありません。微熱さんの仰るように『MySpace~YouTube~Podcast』で情報が発信されている流れが新しく面白くて。ただ、この新しい流れを落としこむ受け皿が無いなと感じていたのもありますね。『日本語ラップ.com』をFeedリーダーに追加してくれているようなヘッズならわかると思いますが、僕は新しいものが好きで、"クラシック"よりも"フレッシュ"先行型なんです。<br /> 日本語ラップから離れていた時分、Dev LargeさんとK-DUB SHINEさんのビーフは耳にしたのですが、それは僕にとって"フレッシュ"な印象を持ちませんでした。このビーフに半ば参戦したSEEDAさんのシットにもそれは感じなかったです。現在もそう思うのですが、関係メディアは情報の量、新鮮さ、そして「ドープさ」みたいなものの扱いには物凄くルーズだった気がします。振り返ってみれば、あのビーフはアーティストはエンタテインしていたのにメディアが追い付いていませんでしたね。完全にアーティストを殺していました。<br /> 『日本語ラップ.com』と他メディアのスタンスの差異は物凄く明解で、『日本語ラップ.com』はひらすら情報をリリース、リークしていくというスタイル。「これドープだからチェックして下さい」という事をただただポストしていく。それも早い段階で。それと、あまり理解されていませんがコミュニティ型のサイトなので、実は誰でもサイトにはポスト出来る仕様です。その為、癒着も可能な限り減らした運営を目指しています。僕のアンテナに引っ掛からない「ドープでないもの」は掲載対象にはなりませんが。<br /><br />――これはブログだとか、フリーペーパーだとか、金銭の取引や関係者の協力が無い小さなメディアに絞った話になるんですが、以前から「管理者自らの情報の更新には限界がある」ということを感じているんですね。理由はいたって明快で、自分のブログなり、サイトなりを運営していく原動力って"管理者のモチベーション"しかないんですよ。管理者がそのブログやサイトを更新していることに意義を見出して、モチベーションを維持していないと、運営をつづけていくことは難しい。まぁ、お金が発生していても、書き手のモチベーションが低ければ提灯記事ばかりになるとも思いますけどね。<br /> そこを踏まえると、サイトを継続的に運営していくのに大切なのは、やはり「情報の発信者と受信者が同じ立場にいる」ことだと思うんです。言い古された話かもしれないけども、wikipediaとかニコ動みたいな、発信者と受信者が相互で保管しあえる関係性をサイトの中で持てることが継続的に情報を発信しつづけるためのキーなんです。だから、『日本語ラップ.com』が情報を「誰でもポストできる」という仕組みを持っているのってすごく大事な点だと前から思っていて。<br /> ただ、だからこそBenzeezyさんの発言で、「"ドープでないもの"は掲載対象にはならない」というところがひっかかるんです。「このアーティスト(曲)が"ドープ"か、否か」という判断って、個人の趣味嗜好に基づくものじゃないですか? 私が"ドープ"だと思っていても、Benzeezyさんがそう思わないものもあるはずで。いままでのメディアも結局そういうフィルターをかけていたからこそ、新しい情報が出てこなくなってしまった面があると思うんです。勿論、ある程度フィルターをかけないと、有象無象の訳のわからない情報ばかりになってしまって、読者を混乱させるだけかもしれませんし、フィルターをかけることでそのサイトの信頼性が保たれる部分もあるので、そのバランスをどうやってとっていくかというのは大きな課題だと思うのです。「誰でもサイトに情報をアップできる」ということと、「ドープな情報しかアップさせない」という相反することをどうやってバランスを取ればいいのか。<br /><br />Benzeezy:サイトの更新に関しては本当にそう思いますね。モチベーションが無いとまず更新を怠ります。そして、「日本語ラップ」を扱う場合、そもそも情報が少ないという現実もあります。USと比べるとアップデートされる情報量が物凄く少ないですよね。昨日は7件ポストできたけど、今日は1件しかポストするものがないとか。<br /> また、微熱さんの「情報の発信者と受信者が同じ立場にいる」という発言に付いてですが、情報発信者がそれをRAWな状態で提供出来るかなと思い、『日本語ラップ.com』を構築したというのもあります。ただ、情報発信者が自身でその情報をポストする事が容易ではないのかなとも感じています。情報発信者が『日本語ラップ.com』にログインして、自身の情報をポストするというのは、僕からしたら物凄くシンプルな作業だし、テキストをコピー&ペーストする程度で済みますから、とても簡易的だと思っていたのですが、現実どうもそうではないようで。<br /> 僕は『日本語ラップ.com』の利用方法をイチからレクチャーするのはちょっと違うなと思ってるんです。システム自体も物凄く汎用的なものを利用していますし。現在、『日本語ラップ.com』に投稿者(ライター)として登録されている方は70名程いらっしゃいますがこの数はあくまでも登録しただけの数で、実際動いている数ではありません。本当に『日本語ラップ.com』を毎日支えているのは実質2名。それも僕を含んだ数です。もともとは『日本語ラップ.com』にユーザ登録した各人が日々情報をポストし、それを僕がフィルタリング(精査)するという運用スタイルを意図してつくっていました。この「フィルター」は確かに僕のただのエゴですから非常に独裁的であると思います。当初『日本語ラップ.com』は趣味の延長レベルだと思っていたのでこの点はそこまで気にしていませんでした。<br /> いまは、「フィルター」を介さないと本当に「ドープな情報」は、それ以外の「ワックな情報」に埋もれてしまうと思っています。情報自体が少ないからこそ、逆に「ワックな情報」が目立ってしまったりも有りますし。投稿者が増え、「誰でもサイトに情報をアップできる」本来の運用形態がとれた際、改めてこのフィルターに関しては議論する必要がありますね。<br /><br />――アーティスト本人がツールをつかって世間に情報を発信していくというスタイルはブログやMySpace、Twitterなんかのおかげですごく一般的なものになってきています。ただ、それらのツールから発信される情報は、そのアーティストに興味があるリスナーにしか届きづらいというところが難点なんですよね。こういうポータルサイトに投稿することへの"敷居の高さ"ってやっぱり感じるものだと思いますけど、アーティストの立場で考えてみると、自分のブログやTwitter以外の場で、自分の曲を色んな人に知ってもらえる機会がつくれる貴重な場という見方はできるんじゃないでしょうか。実際、私もこの『日本語ラップ.com』やBenzeezyさんのツイートで知ったアーティストや曲もありますし。おそらくBenzeezyさんが言うようなやり方での理想的なかたちは、アーティストや関係者の方がポータルサイトにどんどん情報を投稿して、そこにドープなアーティストや曲が出てきたら特別に記事などを設けて更にリスナーを惹きつけるような仕組みなんでしょうね。<br /><br />Benzeezy:本来は微熱さんの仰るように、各人が日々情報をポストして貰えると嬉しいんですけどね。例えばポストするのがアーティスト自身だったらたっぷりとアピール出来ると思いますしね。『日本語ラップ.com』でとりあげている情報は一部を除き、ほとんどがインターネットで手に入る情報です。ブログやMySpace、最近であればTwitter等の情報を日々DIGしてネタを集めています。<br /><br />――へぇ。ということは普通に私達もインターネットで探せば手に入る動画や曲が中心だということですね。Benzeezyさんから発信されている情報は知名度のあるアーティストの情報もありますけど、結構若手中心というかあまり聞いたことの無いアーティストが多いですよね。<br /><br />Benzeezy:そうですね、『日本語ラップ.com』が吐き出す情報は基本インターネットで探せると思います。ドープなアーティストに若い方が多くなってしまうのは、彼らは動きも頻繁なので必然ですよね。僕が思うドープなアーティストは大抵インターネットを多用していますから、そこにあるドープな情報をピックしているだけです。アーティストから直接情報を聞いたりという事も多少は有ります。中には音源を公開していないアーティストも居ますし、そうなると口コミ以外で情報は入りませんからね。ただ、情報の入手元は基本インターネットですよ。ドープなアーティストを見つけ、その情報をDIGする事で別のドープなアーティストに辿り着く。ドープな方々って結局繋がっていますからね。<br /><br />――いま、「若い方のほうが動きがある」という話がありましたが、情報をDIGしていて、特に面白いと思うアーティストってどんな人がいますか? <a href="http://aklo.bandcamp.com/" target="_blank">AKLO</a>や<a href="http://klooz.bandcamp.com/" target="_new">KLOOZ</a>はそれまでほとんど誰もやっていなかった「無料でミックステープアルバムを出す」ということをやっていて、そこは勿論面白いのですが、やはりUSヒップホップのビートをジャックしたり再解釈しながらラップしているところが今までの日本語ラップにはない面白さを生んでいると思うのですが。<br /><br />Benzeezy:僕が面白いと思うアーティストさんは本当に沢山います。そして、その方々に共通しているのは「新しい事を実践している」点かなと。全員ではありませんが、微熱さんの仰るフリーミックステープ配信やフリーダウンロード等。これらをこなし、その先で何かのプロジェクトを持っているアーティストさんは本当に面白いですよ。<br /> 名前を挙げると、AKLO、KLOOZ、MATCH、RICK(CRIXX)、U2K、PRIST、MoNDoH、show-k、FRG、YAMANE、BAN、ELOQ、EGO、RAKABEE、YAN-MARK、Mic、あるま、和み、B.T.REO、SKY BEATZ、ham-R、TND…といった人たちですかね。<br /> ビートジャッキン、そしてフリーダウンロード配信。ここまでは、メジャーとディールが無いアーティストであればもうやらない理由が無いと思うんです。ここまでスマートに自身を売り込めるフロウって何処にもないと思いますし。ただ、「最終的にヘッズの向こう側に届けることができるか?」という部分が重要だとは思いますけどね。<br /><br />――ミックステープにかかわらず、無料DL曲の配布はあまり名前が知られていないアーティストが周囲に自分の存在をアピールするのにとても適していますよね。ビートジャックも、ラッパーにとってはとても手軽な方法ですし、低予算のなかでクオリティの高い曲をつくるとしたら不可欠な方法でしょう。この先にお金に結びつくのどうかは置いておいて、おっしゃるとおり「やらない理由が無い」と思います。Benzeezyさんが挙げられたアーティストは確かにどの人もオリジナルなセンスがや視点を持っていると思うのですが、「何かのプロジェクトを持っている」というのはどういうものを指しています?<br /><br />Benzeezy:ただ作品をドロップするだけでは誰にも届きませんよね。フリーダウンロード音源の配信含め、その先に具体的なスキームを持って行動されているかが重要だと思うんです。その先のスキームというのは各人異なるとは思いますが、例えば正規作品のリリース。フリーダウンロード音源が正規作品を手にとるための足掛かりとなる、とか。あくまでも一例ですけどね。<br /> でも、何かの足掛かりになるからこそフリーダウンロード音源の配信は本当にドープな事をやっていないとダメですよね。誰もがやっていない事をやるべきだと思いますし、速度が本当に重要です。それが現在の流れだと思いますから。最近だとKLOOZさんの"Like A Game"一連のリミックスは新しさを感じました。速さで言ったらmikE maTidaさんの"Power Remix"とか。あのタイミングでの<a href="http://www.megaupload.com/?d=SB3BHUPQ" target="_blank">YAMANEさんのMIXTAPE"Drink It"</a>も驚きましたけど。<br /><br />――ここでいう「速さ」というのは、ムーブメントが起きたらすぐにのっかってレスポンスするようなスタンスですよね。このみんなが共有できる”リアルタイム感”は、インターネットが発達したいまの時代独特のものです。ただ、Benzeezyさんの言う「ドープさ」というところをもう少し聞いてみたいのですが、センスみたいなものでしょうか。<br /><br />Benzeezy:僕が惹かれるアーティストの「共通の何か」という事に関して、実は僕自身も疑問だったんです。ある時、あるアーティストに直接尋ねてみたんです。「ドープなアーティストをDIGしていると結局あなた方に行き着く」みたいな事を。そのアーティストの回答では「共通の何か」を僕はわかりかねたのですが、一つわかった事は、僕がドープだと思っているアーティストは自身で相当情報をDIGしているという事です。<br /> そして彼ら自身のDIGがドープなアーティストさん同士を繋げている。例えばMySpaceでドープなアーティストをDIGしたらフックアップしたり。ネットワークというテクノロジーを有効活用しています。また、彼らが素晴らしいのは「コア」で終わろうとしていない所なんですよね。屈折して「コア」に進むのではなく、様々なものを巻き込んで大きい動き、ムーブメントを造ろうとしている。それは彼らを知らない人さえも巻き込む力を持っていると思います。<br /><br />――非常に興味深い指摘だと思います。<br /> 確かに貪欲に他人のスタイルやトレンドを吸収して作品に"SWAG"として落としこめているアーティストがさっき挙げられた中にも多い。それはつまりどういうことかというと、彼らに「DIGの姿勢」があるということだし、「色んな人と楽しめる"トレンド"としてのヒップホップ」をつくっている姿勢にもあわらわれている。<br /> 中でも私がとても参考になったのは、「自身のDIGがドープなアーティスト同士を繋げている」という部分です。インターネットはパソコンのディスプレイの中に広がっているものだから、「”現場”はインターネットにはない」というような意見を持ち出して、そこで育まれるシーンや人の成長を否定する人もいたけど、その意見は説得力の欠けるものでした。なぜならインターネットそのものは単なるツールに過ぎないし、そこでの"繋がり"や"発見"は人間によって実現されるものなのだから。<br /> そういうネットによって広がるシーンの可能性やアーティストの繋がりを否定する意見は特に4~5年くらい前まで、いま30歳を超えるような人たちから発せられることがありましたけど、ここ1年くらいはそういうものもあまり見なくなってきましたね。逆に、若い子を中心にインターネットにある様々な"ツール"を利用して、自分のネットワークを発展させながら、他人と繋がって、その影響を自分のスタイルに取り込んでいくアーティストが増えてきたと思います。これは、世代間の「インターネットに対する見方の違い」なのかもしれません。<br /><br />Benzeezy:非常に現場主義というか、RAWな物をRAWな状態で聴くのがヒップホップだと僕は思っていますが、これだけネットワークが成長し多様化してしまうとそれにも変化が生じて、クラブへ足を運ばずともRAWなものに接することが出来る訳で。アーティストが自身のPCから発信する音源が、その時点で最もRAWで、フレッシュであり、リスナーはそれを直ぐに体感出来てしまう。そうすると「現場感」みたいなものは外にも中にも無いボーダレスな感覚になってきたような気がするんですね。<br /> そして、ネットワークを「ただのツール」として切り分けられるかどうかは、物凄く重要な感覚だと思います。Twitterやmixi、Facebook等の所謂バーチャルなツールでも、それこそ現場と同じように「しがらみ」がある訳で、アーティストたちは本音を吐露する場が無いのではないかと思います。これではネットワーク、インターネットの可能性を物凄く狭めていると思いますし、それはやはりただのプロモーションツールでしかない。だから僕が一番好きなツールはMySpaceなんですね。馴れ合いのない不親切でドライな感じが好きなんです。ドープなアーティストは「繋がっている」という感覚が。<br /> また、微熱さんの仰る"世代間の「インターネットに対する見方の違い」"は僕も感じています。これは所謂「SWAG」の解釈の違いだと思っているんですよね。僕たちヘッズはアーティストが「今日何を食べた」かには全く興味は無い訳で。それはドープではない。ただ、ある世代は自身を魅せる事を推しますよね。でも、それは「SWAG」とは思えないんです。あくまでも「ライフスタイル」でしかないと言うか。僕等貪欲なヘッズが求めているのは最新のドープなSWAGなんです。若いアーティストはこれを無意識に理解しています。僕はあるアーティストに「ヒップホップを意識して制作している訳ではない」と言われたことがありますが、その時に改めてSWAGが何たるかを理解した気がします。<br /><br />――ファッションやスタイルのトレンドを自分なりに解釈して、自分独自のスタイルに作り上げたものが"SWAG"と呼ばれるものだと思います。そうするとやはりそのSWAGが流動的に次々と進化していくには、最新の情報がどんどん生まれてくるインフラが必要で、現在はインターネットがその役割を担っているということだと思います。インターネットのなかにも色々なツールが生まれて、いままでになく"情報を生み出す場"として機能しているから、USのアーティストも勿論そうですけど、日本のアーティストのSWAGもすごい速さで進化しはじめている印象を持っています。<br /><br />Benzeezy:そうですね、インターネットの存在がSWAGの提唱を後押ししたでしょうし、現在SWAGをうたうのならば不可欠なインフラだとは思います。しかしUSに比べ、日本のSWAGの進化というかスピードは物凄くゆるやかなので、家から外出する事を躊躇う位のドープな情報とスピード感が欲しいですね。ただ、それこそインフラが整備されたお陰で外でもドープな情報を入手出来てしまいますから更にスピード感は必要になりましたけどね。<br /> 一連の"Like A Game"リミックスに関しては、もうヒップホップという枠組みなんかは超えてしまって、ただどれだけ面白い事を吐き出せるかを競い合っていますよね。僕がKLOOZさんやAKLOさんを「新しい」と思えるのは、この小さな枠に固執していないからなんです。自身がドープ、フレッシュだと思えるものをスピード感を持ってこちら側へひたすら提供していく。彼らの根源にはもちろん「ヒップホップ」があるのでしょうけれど、それをヒップホップと特に意識しているとも思えない。それが受け手からしたらたまらなく面白いし、僕なんかはドープだと思うんですよね。<br /><br /><object classid="clsid:D27CDB6E-AE6D-11cf-96B8-444553540000" width="400" height="100" ><param name="movie" value="http://bandcamp.com/EmbeddedPlayer.swf/track=3499366097/size=venti/bgcol=FFFFFF/linkcol=4285BB/" /><param name="quality" value="high" /><param name="allowScriptAccess" value="never" /><param name="allowNetworking" value="always" /><param name="wmode" value="transparent" /><param name="bgcolor" value="#FFFFFF" /><embed src="http://bandcamp.com/EmbeddedPlayer.swf/track=3499366097/size=venti/bgcol=FFFFFF/linkcol=4285BB/" width="400" height="100" type="application/x-shockwave-flash" pluginspage="http://www.macromedia.com/go/getflashplayer" quality=high allowScriptAccess=never allowNetworking=always wmode=transparent bgcolor=#FFFFFF ></embed><noembed><a href="http://klooz.bandcamp.com/track/like-a-game-ft-aklo-ban">Like a GAME ft.Aklo Ban by klooz</a></noembed></object><br /><br />――知らない人のために説明すると、"Like A Game"はKLOOZが今年ドロップしたミックステープ『No Gravity』のなかにある曲で、<a href="http://www.youtube.com/watch?v=cD4XelnlPuQ" target="_blank">Scarfaceの"High Powered"</a>のビートを下敷きに自分のラップスタイルを物に例えて、「自分のラップはまるで○○○のようにイカしている(ドープだ)」とセルフボーストするラップ・ゲームです。<br /> Scarfaceのビートを引っ張ってくるセンスも渋いのですが、"ラップでゲームしながらそれを曲にしてしまう"というコンセプトがなによりも新しかった。その新しさは、「ルールは簡単だから、みんな挑戦してくれ!!」とKLOOZが自分のブログでも言っているように、「自分の曲をパクるな」というような排他的なものではなく、「自分がつくったこのゲームに参加してくれ」とアピールするスタンスにもあらわれています。<br /> 昨今のリミックスブームの流れも手伝って、"どれだけ面白い事を吐き出せるか"というこのゲームに参加したアーティストもたくさんでてきました。同じサイコロ一家の<a href="http://www.youtube.com/watch?v=A_WE6TtYWMM" target="_blank">PRISTとsinsi-T</a>や、さっき名前もあがっていた<a href="http://www.youtube.com/watch?v=zjYraUvFnWM" target="_blank">CRIXXのRICK、Match</a>、<a href="http://www.youtube.com/watch?v=iXRz383XI7E" target="_blank">RioR、Morrow</a>、<a href="http://www.youtube.com/watch?v=FRmPxzCihWM" target="_blank">GASFACE、JB</a>、<a href="http://www.youtube.com/watch?v=mk2ygUA71nQ" target="_blank">Ks.da Squad</a>、<a href="http://www.youtube.com/watch?v=Qj7yhqIi2bs" target="_blank">CHIKATETSU</a>…。「どれだけ面白い事を吐き出せるか」を競いあうこのゲームは、それぞれのラッパーの持ち味を引き出すこともできたものだと思います。<br /> しかし、やはり私が最も注目している点は「自分のつくった曲を皆に使ってもらう」というスタンスなんです。これは、いまのお金にならないフリーダウンロード曲ならではのもので、自分の曲をいろいろな人に使ってもらって広めてもらうことで自分の名前を広めてプロップスも上げていくという。今回の"Like A Game"でもなんだかんだで一番名前が広まって、プロップスが上がったのもこのゲームを作ったKLOOZとAKLOですよね。ここがとても重要なポイントだと思うんです。<br /><br />Benzeezy:僕が「ドープだ」と思う方々って本当に動きが速くて、KLOOZさんの"NO GRAVITY"がリリースされた時も<a href="http://twitter.com/MATCH1988/status/12771781340" target="_blank">直ぐにMATCHさんがtwitter上で「Like A Gameやりたい」と反応して</a>実際にREC、作品をドロップ。と、一連の流れがとにかく速い。mikE maTidaさんの<a href="http://www.youtube.com/watch?v=lGOsNLv4b8U" target="_blank">Kanye West "Power"</a>リミックスにいたっては、USでリークされたばかりの段階でのビートジャッキンだった訳で、速さで言うなら世界最速だったのではないでしょうか。インストリーク前だったので、サンプリングビートをチョップした状態でのリミックスでしたが、そのスピード感はやはり凄かったし、ヘッズなら誰もが驚いたと思います。僕のYouTubeアカウントでアップロード公開させて頂いた音源だったのですが、mikE maTidaさんの「スピード感」を無くさない為、同氏からの依頼から公開までを数時間でおさめました。<br /><br /><object width="400" height="25"><param name="movie" value="http://www.youtube.com/v/aCmQd2y94VU&hl=ja_JP&fs=1?rel=0"></param><param name="allowFullScreen" value="true"></param><param name="allowscriptaccess" value="always"></param><embed src="http://www.youtube.com/v/aCmQd2y94VU&hl=ja_JP&fs=1?rel=0" type="application/x-shockwave-flash" allowscriptaccess="always" allowfullscreen="true" width="400" height="25"></embed></object><br /><span style="font-size:85%;">mikE maTida "Power remix"</span><br /><br /> こういう動きって本当の意味で生活にラップが浸透しているからできることだと思うんです。もちろん、KLOOZさんが"Like A Game"参加を呼び掛けた時反応したMCやmikE maTidaさんだけが素晴らしいとは思わないけれど、間違い無く「新しい感覚」を持っている方々だとは思います。また、"Like A Game"では、オリジネイターであるAKLOさんやKLOOZさんと比較して聴く形になりますから、どうしたって彼らのプロップスが上がるのは間違い無いですね。<br /><br />――そうですね。他人がドロップした曲にすぐ反応してそこに乗っかって自分の存在をアピールできる人じゃないとインターネット上ではプロップスを集めにくいかもしれない。<br /><br />Benzeezy:少し前までは”USのヒップホップを昇華できたものが優れた日本語ラップだ”と言う見方だったと思いますが、現在の僕の日本語ラップに対する解釈は違います。もちろんUSのヒップホップは素晴らしいし、現在の日本語ラップがその影響下あるのは間違い無い訳ですが。<br /> 現在の日本語ラップは、ある部分でUSより飛び抜けたドープネスを持っていると感じます。速度感もあります。それを証明するのは各々が持つ所謂「SWAG」であると思っていますが。<br /><br />――Benzeezyさんは現在のUSのヒップホップと日本語ラップに対する解釈は違うとおっしゃってますが、私はまた違う考えを持っています。というのも、USヒップホップと日本語ラップの自国での受け入れられ方や流通のされ方は全然違いますが、やはりインターネットを基盤にした音楽の広がり方というのは似たような道筋をたどっているように見えるからです。<br /> アメリカの場合は、ブッシュ政権から長引く不況の影響もあって、商業ベースでつくられるヒップホップの姿がここ数年で大きく変わりました。"世間で売れる"限られたアーティストだけがメジャーレーベルのコントロール下でセルアウトした曲をつくって数少ないリスナーのパイを食い合っているような状況です。そこから外れてしまった多くのアーティスト達は自分の曲に金をかけてくれるレーベルもなく、作品をリリースすることもできなくなった。しかし、そういう商流からあぶれたアーティストを支え、彼らの曲をリスナーに届けるインフラとなったのがインターネットです。日本の場合は、アメリカほどヒップホップが世間に浸透しているわけではありませんが、マスに対して簡単に作品を流通させることができない状況はほとんど一緒です。そして、多くのアーティストが数少ないリスナーからプロップスを集めていかなければならない。その受け皿が今後何になるのかは明白でしょう。<br /> "POWER"をリミックスしたmikE maTidaやHIGH 5、<a href="http://www.youtube.com/watch?v=E1i8it7e4To" target="_blank">"I Can Transform Ya"</a>をリミックスしたMINT、最近だとKLOOZとAKLOが<a href="http://www.youtube.com/watch?v=r-YWnGwtRZo" target="_blank">"I REP"</a>をリミックスしていましたし、CherryBrown(Lil'諭吉)が<a href="http://www.youtube.com/watch?v=WxHtFboa5w4" target="_blank">Rick Rossの"Blowin Money Fast"</a>をジャックしていました。他にもCherryBrownやMINTを筆頭にミックステープアルバムをネット上にドロップしていたアーティストもたくさんいましたが、こういうインターネットが受け皿となって生まれているものがある以上、それをフォローできていないメディアは「必要ない」とまでは言わないけども、現在のシーンやムーブメントをフォローできてはいない「遅れたメディア」です。<br /><br /><object width="400" height="25"><param name="movie" value="http://www.youtube.com/v/iy8idHerHrk&hl=ja_JP&fs=1&"></param><param name="allowFullScreen" value="true"></param><param name="allowscriptaccess" value="always"></param><embed src="http://www.youtube.com/v/iy8idHerHrk&hl=ja_JP&fs=1&" type="application/x-shockwave-flash" allowscriptaccess="always" allowfullscreen="true" width="400" height="25"></embed></object><br /><span style="font-size:85%;">Klooz x Aklo "I Rep the remix"</span><br /><br /><object width="400" height="25"><param name="movie" value="http://www.youtube.com/v/U3Aljy4zBZg&hl=ja_JP&fs=1?rel=0"></param><param name="allowFullScreen" value="true"></param><param name="allowscriptaccess" value="always"></param><embed src="http://www.youtube.com/v/U3Aljy4zBZg&hl=ja_JP&fs=1?rel=0" type="application/x-shockwave-flash" allowscriptaccess="always" allowfullscreen="true" width="400" height="25"></embed></object><br /><span style="font-size:85%;">Cherry Brown "BMF [Bombing Music Fast]"</span><br /><br />Benzeezy:「遅れたメディア」というのは僕もそう思いますよ。もちろんピック出来ないしがらみ、いわゆる大人の事情があるのは承知していますけど、AKLOさん、Cherry Brownさん含め物凄いスルーですからね。KLOOZさん、AKLOさん、BANさんがYouTube上で発表した"Butterfly City Remix"の再生回数、一晩でたった200回ですよ。僕にはメディアにもアーティストにも「ドープなものはフォローしてもらいたい」。素直にドープだと思うんですよ、"Butterfly City Remix"の楽曲もコンセプトも。しがらみ、私怨は置いてフォローして欲しい。それだけなんですよね。だから、こういった状況を見てしまうと本当にhaterは身近に居るとしか思えないです。それはヘッズも重々感じているはず。<br /> そして微熱さんも挙げた、"I REP THE REMIX"。これは楽曲ももちろん素晴らしいですけど、ヘッズがTwitterを中心に注目させました。メディアが遅れる現在はこれが現在の新しい動きなのだと思います。結局この「"I REP THE REMIX"で誰がプロップスを上げたのか」って事ですよね。僕は自身のFeed Readerだけを信じていますからね。そこで得るドープな情報のアウトプットとして『日本語ラップ.com』のようなサイトを運営して、ヘッズに情報をエスカレーションしています。今後は「ドープな情報を各々で収集して皆で共有する。」そういった形式が主流になって行くと思います。<br /><br /><object width="400" height="25"><param name="movie" value="http://www.youtube.com/v/aknFoJ_dEOU&hl=ja_JP&fs=1?rel=0"></param><param name="allowFullScreen" value="true"></param><param name="allowscriptaccess" value="always"></param><embed src="http://www.youtube.com/v/aknFoJ_dEOU&hl=ja_JP&fs=1?rel=0" type="application/x-shockwave-flash" allowscriptaccess="always" allowfullscreen="true" width="400" height="25"></embed></object><br /><span style="font-size:85%;">Aklo, Ban, Klooz "Butterfly City"</span><br /><br />――"Butterfly City Remix"が出た頃は、まだKLOOZやBANの知名度がそこまで高まっていませんでしたからね。"I REP THE REMIX"がたった2時間で1000回もダウンロードされたことを考えると、彼らを取り巻く状況が少しずつ変わってきているんじゃないでしょうか。仮に、新世代のアーティスト達に対するhaterがいたとして、その人たちがYouTubeの再生回数をコントロールできるわけではありませんから、私にはもともと興味が無かった人たちが新世代のアーティスト達を徐々に注目しはじめてきたように見えます。寧ろ彼らの「自由参加型」のスタイルが少なからずいたかもしれないhaterをも取り込んだという見方のほうがポジティブで、彼らのスタンスにもあっている気がします。<br /> しかしBenzeezyさんと話をしていて痛感するのは、Twitterや『日本語ラップ.com』のように絶えず情報をキャッチして、読者に速い情報を伝えることのできるメディアの需要こそが高まっていくのだろうなということです。自分もレビューブログをやっていますが、日々流れてくる数多くのフレッシュな情報を汲み取ることはできていない。そういう勢いをありのままに伝えることのできるメディアこそがアーティストやリスナーにエネルギーを与え、これからのシーンを支えていくのだと思います。私達が気になる情報のリンク先には、実際の音楽や動画が流れ、アーティストの生の声があって、いつだってそこへ簡単にアクセスすることができるのですから、時間をかけて文章を書いてそれをメディアにのっけて他人の目が留まるのを待つなんていうまどろっこしいことをする必要性をあまり感じなかったりします。<br /><br />Benzeezy:メディアの話だけでなく、「日本語ラップ」という括りで言ってしまうと現状のままでは未来は無いと思います。もちろん「日本語ラップ」そのものが無くなることは無いでしょうが、ますますアングラなものになってしまうのかなと思っています。何故なら、このドープな物を伝え広めるメディアが無いし、そして「日本語ラップ」に誰もpayしていないから。<br /> 良くも悪くもフリーダウンロード配信が常識化した現在、payする事って物凄くエネルギーが必要ですよね。ドープな物はインターネットに沢山転がっていますから。それを考えると、楽曲をひたすら制作してリリースしていくという従来のスタイルは今後無くなると思います。そして今までに無いスキームを持ったアーティストだけが生き残って行くのではないかなと。知名度やリリース量がキャッシュに繋がらない時代になると思いますよ。<br /><br />――インターネットから発信されるヒップホップの姿を突き詰めていくと、結局はアーティストのモチベーションとなる"プロップス"と"金"がどこから産まれてくるのか?というところに行き着くんでしょうけど、CDが売れなくなってレコード屋が閉店し、雑誌が売れなくなってメディアの在り方も変わってきている中で、いままでの音楽やシーンがそのままの姿でありつづけるなんてことは絶対にあり得ない。<br /> 言ってしまえば、金から切り離されて、メディアからも切り離されながら、フォーマットだけを継承して生まれてくる現在の日本語ラップと数年前の日本語ラップは成り立ちから、リスナーへの広がり方まで全く別物ですからね。そこにはっきりと線をひくことができる。いままでの日本語ラップが退屈だと思っていた人こそ、現在の日本語ラップを楽しめるかもしれません。<br /><br />Benzeezy:今までの日本語ラップはCDセールスというわかりやすい指標があったわけです。しかし微熱さんの仰るようにCDも売れなくなる、そしてCDを売っているショップさえも次々と減っていく。そんな中、アーティストはどこにモチベーションを求めるのかといえばそれはインターネット上の情報でしかないと思うんです。だから僕は微熱さんのブログのようにレビューするメディアはアーティストにとって大歓迎だと思いますよ。オフラインに評価してくれるメディアがない今、アーティストは評価される事に飢えていると思うんです。現状のままだと彼らがプロップス体感出来るのはネットワーク上のバイナリファイルの流通だけで、それは余りにもバーチャルなもの。人間(ライター)が分析、判断した言葉はアーティストにとって非常に響くと思っています。<br /><br />――今回の対談インタビューでの私の一番の収穫は、インターネットから産まれる音楽シーンには"速度"や"スタイル(SWAG)"の他に、"人の繋がり"がかなり重要な意味を持つということに気づいたことです。インターネットから産まれる音楽シーンって何も日本語ラップに限った話ではありません。それこそアメリカの地方から産まれるラップのトレンドだってそうだし、UKのGRIMEだってインターネットが支えている面があります。ただ、インターネットを中心とした活動は、簡単に金を得ることができないのは確かです。しかし、それでも彼らは活動を起こし、まがりなりにも"シーン"と呼べるものをつくっている。それはもしかしたら、自分のつくる音楽をブラッシュアップできる仲間との繋がりだったり、自分の曲をジャックして遊んでくれるライバルMCやそれを受け取って広めてくれるリスナーとの繋がりが支えているのかもしれません。勿論、いま自分のやっていることの"先"を見出すことができなければ、活動を続けていくのは相当に厳しいことだと思いますが。<br /> そしてこれは、アーティストの活動だけではなくて、彼らの活動を支える位置にいる『日本語ラップ.com』のような情報発信サイトや情報を発信するリスナーのTwitterやブログにも同じことが言えるでしょうね。アーティストからギフトを受け取って、それを皆に広げることでアーティストにフィードバックしていく。インターネットの片隅の片隅から芽生えるシーンを育てていくためにも、"速度"・"スタイル(SWAG)"・"人の繋がり"の3つにフォーカスを当てて、発信することのできるメディアは必要だと思います。<br /><br />Benzeezy:僕は日本語ラップシーンの中で何かが出来るなんて事は思ってもいませんし、思ったこともありません。ただ現在は数年前の「日本語ラップ」シーンのようにお金を掛けてプロモーションし、ムーブメントをおこすという時代ではない事は理解しています。だから僕は本当に優れたアーティストを僕が提供出来る限りのインフラに乗せて世の中に紹介し、そのアーティストを一人でも多くの人間に知って欲しいという思いで『日本語ラップ.com』を運営してます。この新しい時代の日本語ラップにブームが来ている事は皆さん感じていると思うんです。ただ、もう今までの事をそのままエスカレーションしても何とかなる時代ではない。インターネットという優れたインフラに乗せ、それを有効活用し最終的にはヒップホップ、日本語ラップでお金を得る。そのお手伝いが出来れば僕はそれで満足です。日本語ラップが大好きですからね。<br /><img style="margin: 8px 0px 15px 0pt; float: left; cursor: pointer;" src="http://i220.photobucket.com/albums/dd173/debumegane/hr-2.png" border="0" /><br /><br /><a onblur="try {parent.deselectBloggerImageGracefully();} catch(e) {}" href="http://2.bp.blogspot.com/_hvnQVUZYThc/SW1tAzk_GzI/AAAAAAAAAMA/UmrNy4-a62k/s1600-h/usa.png"><img style="float:left; margin:0 10px 10px 0;cursor:pointer; cursor:hand;width: 42px; height: 21px;" src="http://2.bp.blogspot.com/_hvnQVUZYThc/SW1tAzk_GzI/AAAAAAAAAMA/UmrNy4-a62k/s400/usa.png" border="0" alt=""id="BLOGGER_PHOTO_ID_5291004997842967346" /></a>関連ダウンロード<br /><br />■ Aklo, DJ Uway "A Day on the Way" <a href="http://www.mediafire.com/?tuzhfy0yhee" target="_blank"><span style="font-size:85%;">: download</span></a><br />■ Aklo "2.0" <a href="http://aklo.bandcamp.com/" target="_blank"><span style="font-size:85%;">: download</span></a><br />■ Cherry Brown "Supa Hypa Ultra Fres$shhh 3" <a href="http://www.megaupload.com/?d=QLVA9VJU" target="_blank"><span style="font-size:85%;">: download</span></a><br />■ Cherry Brown "98%ちぇりー" <a href="http://www.megaupload.com/?d=TLO062L8" target="_blank"><span style="font-size:85%;">: download</span></a><br />■ Klooz "No Gravity" <a href="http://klooz.bandcamp.com/" target="_blank"><span style="font-size:85%;">: download</span></a><br />■ Mint "sex, lies, and download file vol.1" <a href="http://www.megaupload.com/?d=K24NQP5Y" target="_blank"><span style="font-size:85%;">: download</span></a><br />■ Yamane "Drink It" <a href="http://www.megaupload.com/?d=SB3BHUPQ" target="_blank"><span style="font-size:85%;">: download</span></a>微熱教授http://www.blogger.com/profile/15083927576509688324noreply@blogger.com2tag:blogger.com,1999:blog-26765657.post-83393297256833123522010-07-14T19:16:00.021+09:002010-07-15T23:46:18.186+09:00Big Boi - Sir Lucious Left Foot: Son of Chico Dusty<a onblur="try {parent.deselectBloggerImageGracefully();} catch(e) {}" href="http://2.bp.blogspot.com/_hvnQVUZYThc/TD8bOe375gI/AAAAAAAAAPw/nlWVmfguKhQ/s1600/bigboi.png"><img style="float:left; margin:0 10px 10px 0;cursor:pointer; cursor:hand;width: 120px; height: 120px;" src="http://2.bp.blogspot.com/_hvnQVUZYThc/TD8bOe375gI/AAAAAAAAAPw/nlWVmfguKhQ/s320/bigboi.png" border="0" alt=""id="BLOGGER_PHOTO_ID_5494140006035088898" /></a>
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<br /><a href="http://www.amazon.com/Lucious-Foot-Chico-Dusty-Explicit/dp/B003TX24OU/ref=sr_1_1?ie=UTF8&s=dmusic&qid=1279204229&sr=8-1" target="_new"><span style="font-size:85%;">listen here</span></a>
<br /><br clear="all">当初のリリース予定から3年も延ばされ、Andre3000と絡んだ曲を入れないことを条件に別レーベルからリリースすることを許されて、ようやく陽の目を浴びることのできたBig Boiの"Sir Lucious Left Foot: Son of Chico Dusty"は彼の律儀な性格が隅々まであらわれた名作だった。その律儀さは何も Andre3000がOutKastの活動をサボタージュしている一方で、こつこつとソロアルバムをつくってレーベルとの折衝に長い年月を費やしながらリリースにこぎつけた姿勢だけにあらわれているものではない。この作品の魅力はそれぞれの楽曲の内容、そしてインターネットから産まれるヒップホップシーンの背景とBig Boiの置かれた立場を踏まえてこそ際立つ。
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<br />ことヒップホップにおいて、インターネットからミックステープの無料配布や楽曲・動画の配信を行って、アーティストの知名度を上げるというプロモーション方法はもはや一般的なものになったが、もともとインターネット上での音源共有は商業流通されている音楽ファイルの違法アップロード/ダウンロードから端を発していることを忘れてはならない。個人対個人で音楽・動画ファイルをやりとりするP2P方式から、WEB上にアップロードされた無数のファイルを誰もが自由にダウンロードできるオンラインストレージ方式へ移るに従い、インターネット上での違法音源のやりとりは爆発的に増えた。
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<br />長引く不況によって、"世間に売れる音楽"をつくる体力しかなくなったメジャーレーベルは自らが契約している多くのアーティストの才能を黙殺し、新たな才能を発掘して世間に認めさせることを放棄した。売れるラッパー、売れるメロディ、売れるゲストを取り込むことのできた楽曲だけが商業の流通に乗って売りに出される世の中になった。他方で、インターネットがインディペンデントなアーティスト達の受け皿となって、彼らの音源や動画をリスナーへ届け、新たな才能を次々に発信しているのは間違いない。しかし、そもそもメジャーレーベルの体力が一部の限られた楽曲しかリリースできなくなるほど落ち込んでしまった原因を考える必要がある。何が"音楽の流通"を殺したのか? ブッシュによる無意味な戦争のせいか? リーマンショックによる恐慌のせいか? それとも、インターネット上ではびこる違法ダウンロードのせいか?
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<br />結果的に、youtubeやrapidshareといったオンラインストレージサービスが見捨てられた地方にくすぶっていたヒップホップを加速度的に発展させ、次から次へと新しいムーブメントやスタイルを産み出し、絶え間なくリスナーへ刺激を与え続けている以上、それを"悪"だと切り捨ててしまうのはあまりに狭量だ。だがしかし、それらのインターネットツールが音楽の流通を殺して、商業レーベルとそこにぶらさがるアーティスト達の首を絞めているのも確かな事実だ。インターネットツールはメジャーレーベルの血脈をじわじわといたぶりながら、そこから溢れ出てくる無数の才能に光を当て、ヒップホップの更なる発展を促すというサイクルをつくっている。そういう意味では、シングルヒットに恵まれなかったためリリースを延々遅らされ、プロモーションもろくに行われなかった結果初週のウィークセールスが7万枚にも届かなかった"Sir Lucious Left Foot"はまさに"悪い意味で"インターネットツールのあおりを受けたアルバムといえる。
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<br />しかしそれでもなお、リリース1週間前には自らのmyspaceでアルバム全曲をフル公開し、契約上リリースが不可能となったAndre3000との曲("Looking For Ya")を無料配信するBig Boiは(<a href="http://twitter.com/Therealbigboi/status/17855728093">twitterでは「"Looking For Ya"をダウンロードして"Sir Lucious Left Foot"の10曲目に入れてくれ」とも言っている</a>)、自分の被った打撃以上にインターネットから広がっていくファンとシーンの可能性を信じているということではないのか。
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<br /><object style="visibility: visible;" id="audioplayer1" classid="clsid:d27cdb6e-ae6d-11cf-96b8-444553540000" codebase="http://download.macromedia.com/pub/shockwave/cabs/flash/swflash.cab#version=6,0,40,0" height="24" width="360"><param name="data" value="http://usershare.net/flow/player.swf"><param name="FlashVars" value="playerID=audioplayer1&soundFile=http://usershare.net/?dlink=912ii2hepg6o"><param name="quality" value="high"><param name="menu" value="false"><param name="wmode" value="transparent"><param name="src" value="http://usershare.net/flow/player.swf"><embed style="visibility: visible;" id="audioplayer1" type="application/x-shockwave-flash" src="http://usershare.net/flow/player.swf" wmode="transparent" menu="false" quality="high" flashvars="playerID=audioplayer1&soundFile=http://usershare.net/?dlink=912ii2hepg6o" data="http://usershare.net/flow/player.swf" height="24" width="360"></object>
<br /><span style="font-size:85%;">"Lookin for Ya" ft. Andre 3000, Sleepy Brown <a href="http://usershare.net/912ii2hepg6o">: download</a></span>
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<br />ファンク、クランク、トランクミュージックに目配せをしつつ、Lil' WayneやDrakeではなくもっとストリート寄りの"旬"なアーティスト――YelawolfにGucci Maneをゲストに置き、Dungeon Familyを軸に沿えながら"OutKast路線"を踏襲する。"Sir Lucious Left Foot"はBig Boiがファンの目線に立って、"Speakerboxxx / The Love Below"の先に広がるFuturisticな世界観から"Southernplayalisticadillacmuzik"のオールドスクール志向なフレイヴァまでを取り入れ、ファンの求める「いま最もイケているOutKastのアルバム」を見事に構築してみせた作品だ。
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<br />長いキャリアのなかでの初めてのソロ作なのに個人の趣味に走らず、忠実にOutKastとしてのアルバムをつくったBig Boi。音楽業界全体が低迷しほとんど全てのメジャーレーベルがどん底に沈む中で、2度とソロアルバムを流通させることはかなわないかもしれないが、インターネットプロモーションをも活用して律儀に作られた"Sir Lucious Left Foot"の内容と質に魅了されたファンが今後の彼のキャリアを支えていくには違いないのだ。微熱教授http://www.blogger.com/profile/15083927576509688324noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-26765657.post-10466297168346882352010-07-02T20:40:00.017+09:002010-07-02T21:33:36.484+09:00In Alphabetical Order□ サグでなにもない上半期 2010<br /><br /><a onblur="try {parent.deselectBloggerImageGracefully();} catch(e) {}" href="http://3.bp.blogspot.com/_PKx9xu8_4Sg/TC3ZqXvqv3I/AAAAAAAAAQ0/YEDBzUNL3Es/s1600/definitionoffuckshit.png"><img style="float:left; margin:0 10px 10px 0;cursor:pointer; cursor:hand;width: 120px; height: 120px;" src="http://3.bp.blogspot.com/_PKx9xu8_4Sg/TC3ZqXvqv3I/AAAAAAAAAQ0/YEDBzUNL3Es/s320/definitionoffuckshit.png" border="0" alt=""id="BLOGGER_PHOTO_ID_5489282842786185074" /></a><br /><br />Alley Boy, DJ Holiday & The Empire<br />"Definition of Fuck Shit"<br /><br /><a href="http://www.mediafire.com/?jymmtkuymmd" target="_new"><span style="font-size: 85%;">listen here</span></a><br /><br /><br /><a onblur="try {parent.deselectBloggerImageGracefully();} catch(e) {}" href="http://1.bp.blogspot.com/_PKx9xu8_4Sg/TC3ZbDbpMqI/AAAAAAAAAQs/1e_OBO9j-tA/s1600/e40day.png"><img style="float:left; margin:0 10px 10px 0;cursor:pointer; cursor:hand;width: 120px; height: 120px;" src="http://1.bp.blogspot.com/_PKx9xu8_4Sg/TC3ZbDbpMqI/AAAAAAAAAQs/1e_OBO9j-tA/s320/e40day.png" border="0" alt=""id="BLOGGER_PHOTO_ID_5489282579635450530" /></a><br /><br />E-40<br />"Revenue Retrievin' Day Shift"<br /><br /><a href="http://www.amazon.com/Revenue-Retrievin-Day-Shift/dp/B003BB6V8A/ref=sr_shvl_album_1?ie=UTF8&qid=1278073112&sr=301-1" target="_new"><span style="font-size: 85%;">listen here</span></a><br /><br /><br /><a onblur="try {parent.deselectBloggerImageGracefully();} catch(e) {}" href="http://1.bp.blogspot.com/_PKx9xu8_4Sg/TC3Y6YrAb_I/AAAAAAAAAQk/ENk5Yy6HBqU/s1600/e40night.png"><img style="float:left; margin:0 10px 10px 0;cursor:pointer; cursor:hand;width: 120px; height: 120px;" src="http://1.bp.blogspot.com/_PKx9xu8_4Sg/TC3Y6YrAb_I/AAAAAAAAAQk/ENk5Yy6HBqU/s320/e40night.png" border="0" alt=""id="BLOGGER_PHOTO_ID_5489282018401349618" /></a><br /><br />E-40<br />"Revenue Retrievin' Night Shift"<br /><br /><a href="http://www.amazon.com/Revenue-Retrievin-Night-Shift/dp/B003F6TMVY/ref=sr_shvl_album_2?ie=UTF8&qid=1278073112&sr=301-2" target="_new"><span style="font-size: 85%;">listen here</span></a><br /><br /><br /><a onblur="try {parent.deselectBloggerImageGracefully();} catch(e) {}" href="http://2.bp.blogspot.com/_PKx9xu8_4Sg/TC3YkOk22hI/AAAAAAAAAQc/DLXpxMN5o1o/s1600/tenyears.png"><img style="float:left; margin:0 10px 10px 0;cursor:pointer; cursor:hand;width: 120px; height: 120px;" src="http://2.bp.blogspot.com/_PKx9xu8_4Sg/TC3YkOk22hI/AAAAAAAAAQc/DLXpxMN5o1o/s320/tenyears.png" border="0" alt=""id="BLOGGER_PHOTO_ID_5489281637734078994" /></a><br /><br />ECD<br />"Ten Years After"<br /><br /><a href="http://www.myspace.com/finaljunky" target="_new"><span style="font-size: 85%;">listen here</span></a><br /><br /><br /><a onblur="try {parent.deselectBloggerImageGracefully();} catch(e) {}" href="http://1.bp.blogspot.com/_PKx9xu8_4Sg/TC3XYB1tL7I/AAAAAAAAAQU/nSiHUNrye18/s1600/giggs.png"><img style="float:left; margin:0 10px 10px 0;cursor:pointer; cursor:hand;width: 120px; height: 120px;" src="http://1.bp.blogspot.com/_PKx9xu8_4Sg/TC3XYB1tL7I/AAAAAAAAAQU/nSiHUNrye18/s320/giggs.png" border="0" alt=""id="BLOGGER_PHOTO_ID_5489280328645029810" /></a><br /><br />Giggs<br />"Let Em Ave It"<br /><br /><a href="http://www.amazon.co.uk/Let-Em-Ave-It-Explicit/dp/B003O4ZKFE/ref=sr_shvl_album_1?ie=UTF8&qid=1278072916&sr=301-1" target="_new"><span style="font-size: 85%;">listen here</span></a><br /><br /><br /><a onblur="try {parent.deselectBloggerImageGracefully();} catch(e) {}" href="http://4.bp.blogspot.com/_PKx9xu8_4Sg/TC3XL4LN0WI/AAAAAAAAAQM/QKUUQlOSdMs/s1600/zone6.png"><img style="float:left; margin:0 10px 10px 0;cursor:pointer; cursor:hand;width: 120px; height: 120px;" src="http://4.bp.blogspot.com/_PKx9xu8_4Sg/TC3XL4LN0WI/AAAAAAAAAQM/QKUUQlOSdMs/s320/zone6.png" border="0" alt=""id="BLOGGER_PHOTO_ID_5489280119892463970" /></a><br /><br />Gucci Mane, DJ Drama<br />"Mr. Zone 6"<br /><br /><a href="http://usershare.net/gkv3cs5ytq99" target="_new"><span style="font-size: 85%;">download here</span></a><br /><br /><br /><a onblur="try {parent.deselectBloggerImageGracefully();} catch(e) {}" href="http://1.bp.blogspot.com/_PKx9xu8_4Sg/TC3W7oB7bJI/AAAAAAAAAQE/6J_XevvUSB0/s1600/Nogravity.png"><img style="float:left; margin:0 10px 10px 0;cursor:pointer; cursor:hand;width: 120px; height: 120px;" src="http://1.bp.blogspot.com/_PKx9xu8_4Sg/TC3W7oB7bJI/AAAAAAAAAQE/6J_XevvUSB0/s320/Nogravity.png" border="0" alt=""id="BLOGGER_PHOTO_ID_5489279840680635538" /></a><br /><br />Klooz<br />"No Gravity"<br /><br /><a href="http://klooz.bandcamp.com/" target="_new"><span style="font-size: 85%;">download here</span></a><br /><br /><br /><a onblur="try {parent.deselectBloggerImageGracefully();} catch(e) {}" href="http://1.bp.blogspot.com/_PKx9xu8_4Sg/TC3WdsjLPmI/AAAAAAAAAP8/4OfdkOMuPYA/s1600/meekmill.png"><img style="float:left; margin:0 10px 10px 0;cursor:pointer; cursor:hand;width: 120px; height: 120px;" src="http://1.bp.blogspot.com/_PKx9xu8_4Sg/TC3WdsjLPmI/AAAAAAAAAP8/4OfdkOMuPYA/s320/meekmill.png" border="0" alt=""id="BLOGGER_PHOTO_ID_5489279326497750626" /></a><br /><br />Meek Mill, DJ Drama<br />"Flamerz 3"<br /><br /><a href="http://www.sendspace.com/file/w8twkb" target="_new"><span style="font-size: 85%;">download here</span></a><br /><br /><br /><a onblur="try {parent.deselectBloggerImageGracefully();} catch(e) {}" href="http://1.bp.blogspot.com/_PKx9xu8_4Sg/TC3RzOdx5sI/AAAAAAAAAP0/uBFfdi1g90g/s1600/lito.png"><img style="float:left; margin:0 10px 10px 0;cursor:pointer; cursor:hand;width: 120px; height: 120px;" src="http://1.bp.blogspot.com/_PKx9xu8_4Sg/TC3RzOdx5sI/AAAAAAAAAP0/uBFfdi1g90g/s320/lito.png" border="0" alt=""id="BLOGGER_PHOTO_ID_5489274198821037762" /></a><br /><br />Starlito<br />"Terminader Gold 60/Love Letters"<br /><br /><a href="http://www.zshare.net/download/7743180872e12695/" target="_new"><span style="font-size: 85%;">download here</span></a><br /><br /><br /><a onblur="try {parent.deselectBloggerImageGracefully();} catch(e) {}" href="http://3.bp.blogspot.com/_PKx9xu8_4Sg/TC3RQbFS8qI/AAAAAAAAAPs/oQpIBkO1T9Q/s1600/stunnalegendarycover.png"><img style="float:left; margin:0 10px 10px 0;cursor:pointer; cursor:hand;width: 120px; height: 120px;" src="http://3.bp.blogspot.com/_PKx9xu8_4Sg/TC3RQbFS8qI/AAAAAAAAAPs/oQpIBkO1T9Q/s320/stunnalegendarycover.png" border="0" alt=""id="BLOGGER_PHOTO_ID_5489273600912585378" /></a><br /><br />Stunnaman<br />"Legendary"<br /><br /><a href="http://limelinx.com/files/2ea3ed49c4d1ead6135cf69ae5e4db3d" target="_new"><span style="font-size: 85%;">download here</span></a><br /><br /><br /><a onblur="try {parent.deselectBloggerImageGracefully();} catch(e) {}" href="http://3.bp.blogspot.com/_PKx9xu8_4Sg/TC3QrfxSf3I/AAAAAAAAAPk/w5k4iLkM9SA/s1600/causers.png"><img style="float:left; margin:0 10px 10px 0;cursor:pointer; cursor:hand;width: 120px; height: 120px;" src="http://3.bp.blogspot.com/_PKx9xu8_4Sg/TC3QrfxSf3I/AAAAAAAAAPk/w5k4iLkM9SA/s320/causers.png" border="0" alt=""id="BLOGGER_PHOTO_ID_5489272966515687282" /></a><br /><br />Toro Y Moi<br />"Causers of This"<br /><br /><a href="http://www.amazon.com/Causers-This-Amazon-Exclusive-Version/dp/B0030HJT9S" target="_new"><span style="font-size: 85%;">listen here</span></a>ときチェケ♪http://www.blogger.com/profile/13241747281300382653noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-26765657.post-34841456834712036172010-06-16T21:59:00.035+09:002010-06-17T21:32:52.996+09:00ECD - TEN YEARS AFTER<a onblur="try {parent.deselectBloggerImageGracefully();} catch(e) {}" href="http://3.bp.blogspot.com/_hvnQVUZYThc/TBoOnzl7aSI/AAAAAAAAAPo/HnBxJvwdBrg/s1600/tenyears.png"><img style="float:left; margin:0 10px 10px 0;cursor:pointer; cursor:hand;width: 120px; height: 120px;" src="http://3.bp.blogspot.com/_hvnQVUZYThc/TBoOnzl7aSI/AAAAAAAAAPo/HnBxJvwdBrg/s320/tenyears.png" border="0" alt=""id="BLOGGER_PHOTO_ID_5483711573303978274" /></a><br /><br /><br /><br /><br /><a href="http://www.myspace.com/finaljunky" target="_new"><span style="font-size:85%;">listen here</span></a><br /><br clear="all">23歳まで万引き常連。37歳まで童貞。コカインはダメで酒にはしって、気がついたらアル中。金はあるだけ遣って、気がついたら貯金ゼロのバイト暮らし。<br /><br />インタビューでECDは「そういうのがラップなんじゃないか」と言っているけども、50歳のラッパーが力いっぱい声を張り上げてただただどうしようもなかった自分のことをラップしているということがまずアヴァンギャルド過ぎる。割れてひずみながら耳に鋭く差し込むサウンドと、一言一言はっきり力強く進むラップ。そして自分のいままで歩んできた道筋と、現在の自分の生活。そのすべての表現は"ヒップホップ"に他ならないのに、それでも聴いた後に言いようの無いしこりが残るのは、それをラップしている本人があからさまに冷めていて、自己愛みたいなものと全く無縁なところにいるからだろう。自己肯定もなければ、自己否定もない。どこか遠くに放り出されたECDのことを、ECDがラップしている。<br /><br />サウスを消化した不安定なメロディを持つビートが『TEN YEARS AFTER』が持つ不気味さを引き立てているところも見逃せない。その不気味さの核になっているのは、「とーくには行けないわけがある」("I Can't Go For That")や「軽くしたいとは考えないのは放り出したらまたひとりだから」("Alone Again")や「家から職場職場から家 / その往復は仕事とは言え / あまり楽しくは、ならやめちゃえ」("今日の残高")などの言葉の裏に垣間見れる"すべて投げ出して独りでどこかに行ってしまう"ことへの憧憬だ。妻と子供が支えるECDのポジティブ、そしてその端々に見える生活のリズムの不安定さの絶妙なバランス。なによりECDが表現する家庭の不気味な"重さ"は『TEN YEARS AFTER』に欠けた自己愛の重さに代わり説得力を帯びさせる。<br /><br />金・仕事・家庭・音楽そして自分の存在――ECDを取り囲むすべての関係と意味合いが大きく変化を遂げた。つまるところ、『TEN YEARS AFTER』の素晴らしさは、過去の自分を冷めた眼で観察し、対比させながら、現在の不安定な環境で懸命にバランスを取っているECDの姿がそこに鮮明にあらわれているところにある。視点の冷たさ。不安定なバランス。生の重さ。それらすべてを描き切るのには、冷徹で、イビツで、荒々しく、重々しいサウンドとラップこそが相応しく、50歳ラッパーのECDは『TEN YEARS AFTER』で音とビートとラップと言葉のすべてを"ヒップホップ"としてハーモナイズさせることに成功している。微熱教授http://www.blogger.com/profile/15083927576509688324noreply@blogger.com3tag:blogger.com,1999:blog-26765657.post-37809233178269912862010-05-18T18:16:00.021+09:002010-05-21T23:50:55.541+09:00微熱メモ vol.9 - Alley Boy "Definition Of F*ck Sh!t"とKLOOZ "NO GRAVITY"などミックステープその他諸々について<a onblur="try {parent.deselectBloggerImageGracefully();} catch(e) {}" href="http://3.bp.blogspot.com/_hvnQVUZYThc/S_aN-Ttt2wI/AAAAAAAAAPg/fbCGU3829jY/s1600/definitionoffuckshit.png"><img style="float:left; margin:0 10px 10px 0;cursor:pointer; cursor:hand;width: 120px; height: 120px;" src="http://3.bp.blogspot.com/_hvnQVUZYThc/S_aN-Ttt2wI/AAAAAAAAAPg/fbCGU3829jY/s320/definitionoffuckshit.png" border="0" alt=""id="BLOGGER_PHOTO_ID_5473718498698844930" /></a><a onblur="try {parent.deselectBloggerImageGracefully();} catch(e) {}" href="http://4.bp.blogspot.com/_hvnQVUZYThc/S_aN6uZVKXI/AAAAAAAAAPY/LtgMuqxl90c/s1600/Nogravity.png"><img style="float:left; margin:0 10px 10px 0;cursor:pointer; cursor:hand;width: 120px; height: 120px;" src="http://4.bp.blogspot.com/_hvnQVUZYThc/S_aN6uZVKXI/AAAAAAAAAPY/LtgMuqxl90c/s320/Nogravity.png" border="0" alt=""id="BLOGGER_PHOTO_ID_5473718437141621106" /></a><br /><br clear="all"><br />大半のビートを手がけるArkatech Beatzの渋めでメロウなビートがダークな色合いとざらついた叙情性を醸し出し、同じくLil Nealがプロデュースするトーンの低いFuturistic系トラックが抑えられた凶暴さを演出する。どこからともなくあらわれては消えていくミックステープアーティストの中で、いつの間にか"次のミックステープが待たれるラッパー"になっていたAlley Boyと、2010年上半期ベストと名高いミックステープ"Definition Of F*ck Sh!t"について詳しい人は一体どれくらいいるのだろうか? Alley Boyとは一体何者なのか?<br /><br />Gucci ManeやYoung Droといったアーティストとのコネクションを持っているにせよ無名のAlley Boyがここまで"次のミックステープが待たれる優れたラッパー"となったのには、アトランタから発信される音源に精通しフックアップするブログの力が大きい。毎日のように何曲もアップロードされる音源やPVを追い、何人ものアーティストのミックステープをウォッチするブログの記事は、ほとんど毎日アップローダーやYouTube、Vimeoのリンクで更新され、その情報は物凄い勢いでOlder Postへながれていく。その激しい情報のフローの中でインパクトを残し、頻繁に顔を出すことのできるアーティストこそが"次のミックステープが待たれるラッパー"になる条件だ。<br /><br />結局のところ、「Alley Boyとは一体何者なのか?」を取り上げるメディアなんか無くても、そしてそんな情報を得る場が無くても、ブロガーが織り成す"情報のフロー"を追い求めるリスナーは次のミックステープを待ち望む。「刺激的な音源を発見してダウンロードをする」ことが目的ならば、アーティストや作品やシーンの動向を掘り下げてナレッジを提供するメディアは必要ない。ただネットを繋いだときに最新の情報がデスクトップにあらわれて、その情報の先に音源がPVがリンクされていればいい。<br /><br />日本でも海外と同じようにミックステープを無料配布するアーティストがあらわれてきたけども、彼等をリアルタイムでフックアップできている有力なメディアがネットを含めてどこにも存在しない。少なくともKLOOZやAKLOやCHERRY BROWNのミックステープアルバムをリアルタイムで追ってダウンロードしているリスナーの情報元は既存のメディアではない。<br /><br />彼等のミックステープ情報を得られる場はネット上に限られている。しかも本当にリアルタイムで知りたいのであれば、Twitterを活用している必要がある。いままでは雑誌やウェブの"場の情報"に自らアクセスする必要があったけども、いま何か最新の情報を得たいのならばTLに好き勝手にながれる"情報のフロー"を眺めているのが一番効果的なのは間違いない。<br /><br />きっといまのミックステープシーンの動向を知らないリスナーはたくさんいるだろうし、KLOOZ、AKLO、CHERRY BROWNといった新世代の面々の名前を知らない人もいるだろう。彼等のニュースは"場の情報"としてではなく、個人個人のTwitterに発信されて、TLの"情報のフロー"の一部から認知されていっている。いままでの"場の情報"よりもかなり小さく限定的なところに流れる"情報のフロー"をとらえることができているか否かが、彼等にアクセスできるかどうかの分かれ目になっている。言うまでも無くそこにアクセスできる人とできない人では、情報の見え方がまったく異なっている。<br /><br />雑誌やWebZineなどの"場の情報"から、動画や音源のリンクが乱立するブログやTwitterの"情報のフロー"へ。きっとブログやTwitterのフローの速度に従い、シーンへの共通認識もどんどん薄れて拡散していく。なぜなら、いまTwitterで私達が見ている"シーン"のかたちは、自分個人のものでしかないし、自分とまったく同じ情報を享受できている人など本当にごく一部に限られているのだから。<br /><br /><img style="margin: 8px 0px 15px 0pt; float: left; cursor: pointer;" src="http://i220.photobucket.com/albums/dd173/debumegane/hr-2.png" border="0" /><br /><br /><a onblur="try {parent.deselectBloggerImageGracefully();} catch(e) {}" href="http://2.bp.blogspot.com/_hvnQVUZYThc/SW1tAzk_GzI/AAAAAAAAAMA/UmrNy4-a62k/s1600-h/usa.png"><img style="float:left; margin:0 10px 10px 0;cursor:pointer; cursor:hand;width: 42px; height: 21px;" src="http://2.bp.blogspot.com/_hvnQVUZYThc/SW1tAzk_GzI/AAAAAAAAAMA/UmrNy4-a62k/s400/usa.png" border="0" alt=""id="BLOGGER_PHOTO_ID_5291004997842967346" /></a>関連ダウンロード<br /><br />Alley Boy "Definition of Fuck Shit"<br /><a href="http://www.mediafire.com/?jymmtkuymmd" target="_new">http://www.mediafire.com/?jymmtkuymmd</a><br /><br />Klooz "No Gravity"<br /><a href="http://klooz.bandcamp.com/" target="_new">http://klooz.bandcamp.com/</a>微熱教授http://www.blogger.com/profile/15083927576509688324noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-26765657.post-31638512947925995662010-04-03T20:25:00.018+09:002010-04-04T23:43:20.505+09:00Lil B<a onblur="try {parent.deselectBloggerImageGracefully();} catch(e) {}" href="http://1.bp.blogspot.com/_hvnQVUZYThc/S7deT5So2mI/AAAAAAAAAPQ/O98z8ntgNIU/s1600/6Kiss.png"><img style="float:left; margin:0 10px 10px 0;cursor:pointer; cursor:hand;width: 120px; height: 120px;" src="http://1.bp.blogspot.com/_hvnQVUZYThc/S7deT5So2mI/AAAAAAAAAPQ/O98z8ntgNIU/s320/6Kiss.png" border="0" alt=""id="BLOGGER_PHOTO_ID_5455933169472166498" /></a><a onblur="try {parent.deselectBloggerImageGracefully();} catch(e) {}" href="http://1.bp.blogspot.com/_hvnQVUZYThc/S7deQYAWauI/AAAAAAAAAPI/61ZbmkLLcGk/s1600/thraxx.png"><img style="float:left; margin:0 10px 10px 0;cursor:pointer; cursor:hand;width: 120px; height: 120px;" src="http://1.bp.blogspot.com/_hvnQVUZYThc/S7deQYAWauI/AAAAAAAAAPI/61ZbmkLLcGk/s320/thraxx.png" border="0" alt=""id="BLOGGER_PHOTO_ID_5455933108997483234" /></a><a onblur="try {parent.deselectBloggerImageGracefully();} catch(e) {}" href="http://3.bp.blogspot.com/_hvnQVUZYThc/S7deLCqVcdI/AAAAAAAAAPA/LDIvr22aozk/s1600/based.png"><img style="float:left; margin:0 10px 10px 0;cursor:pointer; cursor:hand;width: 120px; height: 120px;" src="http://3.bp.blogspot.com/_hvnQVUZYThc/S7deLCqVcdI/AAAAAAAAAPA/LDIvr22aozk/s320/based.png" border="0" alt=""id="BLOGGER_PHOTO_ID_5455933017368654290" /></a><br /><br clear="all">どんな音楽にも作家性は宿る。作詞/作曲がされていなくても、歌やラップがのっていなくても、雑音だろうが無音だろうが、音楽作品として世の中に出されて作成者の名前がクレジットされている以上は、そこからクリエイターの意思と個性を読み取ることができる。音楽の持つ"作家性"をそう捉えれば、レコ箱に埋もれている楽曲をつなぎ合わせて作られるビートにだってもちろん作家性は宿っているし、曲をつくらないDJのミックスにも同じものがあるはずだ。トラックメイカーからビートをもらってそこにラップをのせる時、ラッパーがクリエイトしているのは何もラップだけではない。ラップをのせるビートはトラックメイカーの作品かもしれないけども、ビートをチョイスして世の中に発表するのはそのラッパーに他ならず、そこに彼のセンスが加わっている以上は、ラップだけでなくその下で鳴っているビートにも彼(ラッパー)の作家性は宿る。<br /><br />他の時代に他の場所で他の誰かがつくった曲を切りはがして、他の材料と貼り付け直すことで新しい音楽を生み出す"サンプリング"がヒップホップの革新的な発明のひとつだという言い分を、ヒップホップに少しでも興味がある人であれば1度は聞いたことがあるだろう。「音楽理論を知らず、楽器をひくこともできない」プロデューサーたちがつくっていた音楽は、逆に言えばレコードと機械があってボタンの押し方さえわかれば、楽器をひける必要も、楽譜を読める必要もない音楽だった。そして、そのサンプリングの"敷居の低さ"こそが、老若男女問わず様々な地域から才能を呼び込み、多様なベクトルの音楽性をその懐に取り込んで、ヒップホップの表現に大きな可能性を与えたのだ。だとすれば、同じく数多のアーティストが毎日のようにローコストで製作して、ネット上にアップロードしているミックステープの"敷居の低さ"にも何かしらの可能性があるのではないか。<br /><br />たとえば、ミックステープ"Based Blunts vol. 1"を発表するまでの間、既に1000以上の曲をつくり、100を超えるmyspaceに楽曲をアップしていたLil B。膨大な数の曲をまとめた幾つかのミックステープで垣間見ることのできるLil Bの音楽性はまさにカオスそのもので、ガバやロックの上でラップをしたかと思えば、Dose Oneがつくるようなノンビートのアンビエント・アルバムを2作立て続けに無料で発表し、その一方で他人のトラックでラップした正真正銘のミックステープを有料で配信したりする奔放っぷり。<br /><br />そもそも90分以上あってCDに収めることもできないミックステープをiTunesに平然とリリースしたり、ソロアルバムをリリースすることには目もくれずmyspaceに楽曲をアップしまくったり、ミックステープをつくったはいいけど曲順が決められていなかったり、楽曲をつくる以上にPVを撮りまくっているような姿勢に「ヒップホップをクリエイトする」という概念そのものを覆そうとするLil Bの意図を深読みすることもできるが、それ以上にきっと多くのリスナーはミックステープやmyspaceで聴くことができる"捉えどころのないスタイル"に興味を惹かれるはずだ。<br /><br />テクノ、ロック、ソウル……あらゆる音楽をジャックして自分のスタイルにしてしまうLil Bは、ヒップホップのビートだけでなくアンビエントのメロディまでを自身でつくりだすことのできる才能にも、Clams CasinoやSquadda BやEmyndといった先鋭的なビートをつくるトラックメイカーにも恵まれているが、果てしなく膨張していく彼のスタイルはLil Bとその仲間がプロデュースした楽曲が幹になっているというよりは、ジャンルどころか地域性も時代性も選ばない「どこかの誰かがつくった音楽」すべてを源泉として、それを乗っ取ってしまうことで確立されている。<br /><br />"楽器をつかって演奏"したり、"機械をつかってビートを作る"のだけが音楽をつくる方法ではない。"他の誰かの曲を乗っ取ってしまう"方法でも同じように自分の音楽をつくることができる。他の誰かがつくったドープな曲は勝手にジャックして自分の曲にしてしまえばいいし、それが飽きたら別のものに乗り換えればいい。ラップをのせるための楽曲を「イケている」と思って選んだのならば、その曲には自分のスタイル(作家性)が顕れている。自分のスタイルを表現することへコストをかける必要は無いし、昨日までのスタイルを使い捨てする行為に勿論罪は無い。<br /><br />存在を世の中にアピールしつづけなければならないアーティスト達は日常的に新しいスタイルをジャックして、自分のスタイルが他の誰かにジャックされるサイクルに身を置いているため、楽曲のモードがどんどんシフトしやすく流動的になっている。いままでのスタイルを保守する、あるいは構築/発展させていくというポリシーを持った鈍い動きのアーティストがいる一方で、スタイルを使い捨てて乗り換えていくモード志向のアーティストがこれから先もどんどん現れてくるだろう。ミックステープというフォーマット特有の構造と、アップローダーやコミュニティサービスから成るネットワーク・インフラはアーティストのスタイルを"守る"ものから"乗り換える"ものへ概念を大きく変えている。<br /><br />何も「革新的」という言葉は、ラップやビートの音楽性やアプローチに対してだけに使われる言葉では無い。少なくともLil Bは、Anticonが多様な音楽性をヒップホップへ取り込んで育んだ"白人のヒップホップ"のスタイルよりも、さらに幅広い音楽性をジャックして攪拌させたような複雑に入り組んだスタイルを獲得できている。<br /><img style="margin: 8px 0px 15px 0pt; float: left; cursor: pointer;" src="http://i220.photobucket.com/albums/dd173/debumegane/hr-2.png" border="0" /><br /><br /><object width="444" height="276"><param name="movie" value="http://www.youtube.com/v/ZG6zsHUCum4&hl=ja_JP&fs=1&"></param><param name="allowFullScreen" value="true"></param><param name="allowscriptaccess" value="always"></param><embed src="http://www.youtube.com/v/ZG6zsHUCum4&hl=ja_JP&fs=1&" type="application/x-shockwave-flash" allowscriptaccess="always" allowfullscreen="true" width="444" height="276"></embed></object><br /><br /><object width="444" height="276"><param name="movie" value="http://www.youtube.com/v/0ZmJU5pgvSQ&hl=ja_JP&fs=1&"></param><param name="allowFullScreen" value="true"></param><param name="allowscriptaccess" value="always"></param><embed src="http://www.youtube.com/v/0ZmJU5pgvSQ&hl=ja_JP&fs=1&" type="application/x-shockwave-flash" allowscriptaccess="always" allowfullscreen="true" width="444" height="276"></embed></object><br /><br /><object width="444" height="276"><param name="movie" value="http://www.youtube.com/v/uw_rSAgFNNI&hl=ja_JP&fs=1&"></param><param name="allowFullScreen" value="true"></param><param name="allowscriptaccess" value="always"></param><embed src="http://www.youtube.com/v/uw_rSAgFNNI&hl=ja_JP&fs=1&" type="application/x-shockwave-flash" allowscriptaccess="always" allowfullscreen="true" width="444" height="276"></embed></object><br /><img style="margin: 8px 0px 15px 0pt; float: left; cursor: pointer;" src="http://i220.photobucket.com/albums/dd173/debumegane/hr-2.png" border="0" /><br /><br /><a onblur="try {parent.deselectBloggerImageGracefully();} catch(e) {}" href="http://2.bp.blogspot.com/_hvnQVUZYThc/SW1tAzk_GzI/AAAAAAAAAMA/UmrNy4-a62k/s1600-h/usa.png"><img style="float:left; margin:0 10px 10px 0;cursor:pointer; cursor:hand;width: 42px; height: 21px;" src="http://2.bp.blogspot.com/_hvnQVUZYThc/SW1tAzk_GzI/AAAAAAAAAMA/UmrNy4-a62k/s400/usa.png" border="0" alt=""id="BLOGGER_PHOTO_ID_5291004997842967346" /></a>関連ダウンロード<br /><br />Digital Dripped - Lil B Archives<br /><a href="http://www.digitaldripped.com/lilb.htm" target="_new">http://www.digitaldripped.com/lilb.htm</a><br /><br />Lil B "Based Blunts vol. 1"<br /><a href="http://www.megaupload.com/?d=AH5128EY" target="_new">http://www.megaupload.com/?d=AH5128EY</a><br /><br />Lil B "Paint"<br /><a href="http://limelinx.com/files/07a359ce5df56a5a2b7e0c905ea73988" target="_new">http://limelinx.com/files/07a359ce5df56a5a2b7e0c905ea73988</a><br /><br />Lil B "Dior Paint"<br /><a href="http://limelinx.com/files/1b7117ecdf02bfbafd50b5f4063427b4" target="_new">http://limelinx.com/files/1b7117ecdf02bfbafd50b5f4063427b4</a><br /><br />Lil B "Based God" (Unofficial)<br /><a href="http://www.zshare.net/download/707414460ee0ba7b/" target="_new">http://www.zshare.net/download/707414460ee0ba7b/</a>微熱教授http://www.blogger.com/profile/15083927576509688324noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-26765657.post-88286740986241934082010-02-26T21:22:00.004+09:002010-02-26T22:43:37.947+09:00AKLO - 2.0 & RHYMESTER - MANIFESTO<a onblur="try {parent.deselectBloggerImageGracefully();} catch(e) {}" href="http://2.bp.blogspot.com/_hvnQVUZYThc/S4fIVnp6uuI/AAAAAAAAAO4/fseAO8rX0KQ/s1600-h/20.png"><img style="float:left; margin:0 10px 10px 0;cursor:pointer; cursor:hand;width: 120px; height: 120px;" src="http://2.bp.blogspot.com/_hvnQVUZYThc/S4fIVnp6uuI/AAAAAAAAAO4/fseAO8rX0KQ/s320/20.png" border="0" alt=""id="BLOGGER_PHOTO_ID_5442538948448140002" /></a><a onblur="try {parent.deselectBloggerImageGracefully();} catch(e) {}" href="http://3.bp.blogspot.com/_hvnQVUZYThc/S4fIRYLkXgI/AAAAAAAAAOw/inE44AJzMvs/s1600-h/manifesto.png"><img style="float:left; margin:0 10px 10px 0;cursor:pointer; cursor:hand;width: 120px; height: 120px;" src="http://3.bp.blogspot.com/_hvnQVUZYThc/S4fIRYLkXgI/AAAAAAAAAOw/inE44AJzMvs/s320/manifesto.png" border="0" alt=""id="BLOGGER_PHOTO_ID_5442538875574836738" /></a><br /><br /><br /><br /><a href="http://www.mediafire.com/?hwt0nhyajwf" target="_new"><span style="font-size:85%;">download here</span></a><br /><a href="http://diskunion.net/clubh/ct/detail/100126HH005" target="_new"><span style="font-size:85%;">+ listen here</span></a><br /><br clear="all">前作"A DAY ON THE WAY"からわずか3ヶ月、AKLOがドロップした新しいミックステープ"2.0"は恐ろしくエコなつくりだった。Lil Wayneのミックステープ"No Ceilings"(<a href="http://www.mediafire.com/?mlm5ndwk1jg" target="_blank">→ダウンロード</a>)からほとんどのビートを拝借し(しかも本人曰く原曲を聴いてすらいないのもある!)、そのまま曲タイトルをAKLOなりに解釈したラップを載せただけ。USミックステープ文化を踏襲してつくったローコストでインスタントな内容だけども、そこには日本人が直訳してしまうことで生み出されたウッカリした面白味が溢れていた。<br /><br />その面白さは、"Forever"での1人4役ラップ挑戦みたいなものより、CMだらけのメディアに「貧乏臭い」と形容してみせるところや、女をはべらせながら酒やシロップやコカインやマリファナで時間を無駄遣いするパーティー賛歌"Wasted"を「DJがつまらないから悪酔いするんだ」と悪態つきながらナンパにあけくれるクラブライフをボースティングするリリックに変えてしまうような、"カッコいいものとダサいもの"を完璧に区別してコントロールできているような万能感の中にある。FatBoiやKEの刺激的なビートに日本語のラップが載っているだけではない、日本人の感性とアメリカ人の感性が交錯したようなスワッグ――クールでカッコいいのだけども果てしなく馬鹿馬鹿しい感じのスタイルが、いままでには無い目新しい武器となってリスナーを魅了する。いまUSで鳴っているビートとラップを日本語ラップに置き換えてしまえばまだまだ広げられる表現の幅がある。おおよそ考えて作りこまれたとは思えないこの"2.0"はUSヒップホップの延長でしかないような簡素なつくりだからこそ、日本語ラップが持っている"余白"をより際立たせて見せてくれる。<br /><br /><br />"MANIFESTO"の中心テーマは、先行シングルの"ONCE AGAIN"が示すとおりのものだった。アルバム全体を通して、40代に差し掛かろうとするベテラン中年ラッパー達が日本語ラップという音楽表現へ真正面から挑む、ちょっと感動的な内容。そのため"ONCE AGAIN"や"ラストヴァース"といった曲に象徴的な、中年親父が日本語ラップに持つ想いや夢をそのままリスナーへの応援歌にしてしまったようなアツい印象がアルバムを覆うが、このアルバムの持つ「前向きさ」は寧ろ"再挑戦"する彼らが自分達のキャリアを振り返り振り返りながら進んでいく姿を通してこそ強調されている点に着目したい。<br /><br />この作品の随所に見られる"キャリアを振り返りながら前に進んでいく"姿勢は、「大切なのは創意工夫を続けることだ」だとか「ぐだぐだ言う前に何かをやれ」というともすればオッサン臭い説教になりかねないメッセージを、自分達の経験から来る教訓として万人へ伝えるための術となり、自分達の見てきた景色や感じてきた想いを単なるノスタルジーではなく、前に進むための"通過点"としてポジティブなビジョンに変えるフックとなる。"自分の過去や経験を振り返る"、"他人へ自分の意志や想いを伝える"という一見すればとても簡単なことを日本語ラップというフォーマットから幅広い人々に受け取ってもらうためにはどうすべきか。キャリアを積んだベテラン達がその一点の課題に心血を注いだであろうこの"MANIFESTO"には日本語ラップを世に広めていくための"余白"を埋める方法が色々な形で織り込まれている。微熱教授http://www.blogger.com/profile/15083927576509688324noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-26765657.post-16830969576616133112010-01-17T13:22:00.032+09:002010-01-20T23:44:37.282+09:002009 wastedあいかわらず09年もダサさとカッコよさが表裏一体となった作品が多かったがその中から最高にクールで最高に馬鹿げた人たちを4人。<br /><br /><a href="http://s220.photobucket.com/albums/dd173/debumegane/?action=view¤t=gucci4.png" target="_blank"><img src="http://i220.photobucket.com/albums/dd173/debumegane/gucci4.png" border="0" alt="Photobucket"></a><br clear="all">■ Gucci Mane "ぜんぶ" <a href="http://www.amazon.com/State-Radric-Davis-Deluxe-Explicit/dp/B002YSP240/" target="_new"><span style="font-size:85%;">:listen</span></a><br /><br />"we don't get fucked up no more we get wasted"と言うように金と時間と才能をひたすら無駄遣いするGucci Maneの魅力とは多様化して一筋縄ではいかなくなったヒップホップの姿を、彼のラップだけで体現できてしまっているところにある。大量のミックステープやリミックスワークにクロスオーヴァーするどんな難解なビートもGucciのラップの前ではすべてコントロールされ、先鋭的なビートはより先端を行くヒップホップミュージックとなる。歌詞も同様、その辺のコンシャスなラッパーよりも複雑なライミングやシリアスなストーリーテリングができようとも、そのほとんどを「俺の時計はダイヤだらけで時間も確認できねえ」みたいなどうでもいいジュエリーやドラッグの話に費やし、無意味なダサさとファッショナブルなクールさが同居した数々のパンチラインを産み落とす。その馬鹿馬鹿しいカッコよさはオールドスクールのヒップホップにも通じるが、不思議なことに他のどんなラッパーからの影響も感じさせない。<br /><br /><a onblur="try {parent.deselectBloggerImageGracefully();} catch(e) {}" href="http://4.bp.blogspot.com/_hvnQVUZYThc/S1b25zogKrI/AAAAAAAAAOg/3a01XTlNJy8/s1600-h/wakaroscoe.png"><img style="float:left; margin:0 10px 10px 0;cursor:pointer; cursor:hand;width: 220px; height: 110px;" src="http://4.bp.blogspot.com/_hvnQVUZYThc/S1b25zogKrI/AAAAAAAAAOg/3a01XTlNJy8/s320/wakaroscoe.png" border="0" alt=""id="BLOGGER_PHOTO_ID_5428797873814776498" /></a><br clear="all">■ Waka Flocka Flame, Trap-A-Holics "Salute Me or Shoot Me 2" <a href="http://www.megaupload.com/?d=ZN5S84EB" target="_new"><span style="font-size:85%;">:download</span></a><br />■ LA Da BoomMan & Roscoe Dash, DJ Millz "Southern Takeover" <a href="http://www.sendspace.com/file/o1rvur" target="_new"><span style="font-size:85%;">:download</span></a><br /><br />母親がGucciのマネージャーだからというだけのコネでGucciにラップを教わり、ラップをはじめてたった一年で地元をロックしているWaka Flockaは短期間でスターになったその初期衝動と高揚感で巨大なフラストレーションを爆発させる。錯乱したアルペジオ、痙攣したスネアロール、電波ソングの合いの手のようなアドリブ、Thug FamilyのTOPのようなシンプルでナンセンスなフック、どこを切り取ってもぎゅうぎゅうに音がせめぎあっていてまるで落ち着きが無い。そんな Waka Flockaの暴虐的なスタイルに感化されたかどうかは知らないが、Rosce DashとLA Da Boommanのスプリットミックステープでは、K.E.自らがカラフルな万華鏡のような広がりを持つFuturistic系の音をレーザーのように鋭角的に圧縮し、よりシャープなストリート感を持つビートに作り上げた。そんな鋭いビートの上で、Rosce Dashが調子に乗って女こどもに向けてリア充自慢を繰り広げる歌は不愉快さと紙一重な感情を掻き立て、その不愉快さを相殺するためにはさまれるLA Da Boommanのラップは何故かただひたすらにキモい。両極端に鬱陶しい2人のラッパーの自己主張は他のFuturistic系の人たちが人畜無害に思えてくるほど。<br /><br /><a onblur="try {parent.deselectBloggerImageGracefully();} catch(e) {}" href="http://3.bp.blogspot.com/_hvnQVUZYThc/S1b2y8rHUkI/AAAAAAAAAOY/66UAZ8exI_E/s1600-h/butter.png"><img style="float:left; margin:0 10px 10px 0;cursor:pointer; cursor:hand;width: 110px; height: 110px;" src="http://3.bp.blogspot.com/_hvnQVUZYThc/S1b2y8rHUkI/AAAAAAAAAOY/66UAZ8exI_E/s320/butter.png" border="0" alt=""id="BLOGGER_PHOTO_ID_5428797755982565954" /></a><br clear="all">■ Hudson Mohawke "Butter" <a href="http://www.amazon.com/Butter-Hudson-Mohawke/dp/B002N7FM10" target="_new"><span style="font-size:85%;">:listen</span></a><br /><br />一年間これといった進展がなかったビート(Wonky)シーンでは、Hudson Mohawkeが従来の小奇麗で厳粛なWonkに80'sのR&Bやヘヴィメタルのシャープなドラム、Just Blazeのスピード感といった大味でダサいテクスチュアを織り合わせ、荒唐無稽な音楽を作ることでその存在感をアピールした。そんなHudson Mohawkeのカラフルにゆがんだメロディは、アトランタのFuturistic系やブリストルのダブステップとの不思議なシンクロニシティを遂げ、"ダサい"と"カッコいい"が両立することを多角的に証明してみせる。<br /><br /><br /><a onblur="try {parent.deselectBloggerImageGracefully();} catch(e) {}" href="http://2.bp.blogspot.com/_hvnQVUZYThc/SW1tAzk_GzI/AAAAAAAAAMA/UmrNy4-a62k/s1600-h/usa.png"><img style="float:left; margin:0 10px 10px 0;cursor:pointer; cursor:hand;width: 42px; height: 21px;" src="http://2.bp.blogspot.com/_hvnQVUZYThc/SW1tAzk_GzI/AAAAAAAAAMA/UmrNy4-a62k/s400/usa.png" border="0" alt=""id="BLOGGER_PHOTO_ID_5291004997842967346" /></a><span style="font-size:90%;">関連ダウンロード</span><br /><br />■ Gucci Mane, DJ Holiday "Writing on the Wall" <a href="http://www.zshare.net/download/60139881819a9c59/" target="_new"><span style="font-size:85%;">:download</span></a><br />■ Gucci Mane "The Gooch" <a href="http://www.zshare.net/download/625562314da88e1c/" target="_new"><span style="font-size:85%;">:download</span></a><br />■ Gucci Mane, DJ Drama "The Burrprint" <a href="http://rapidshare.com/files/291189175/DJ_Drama___Gucci_Mane_-_The_BurrrPrint__The_Movie_3D_.rar" target="_new"><span style="font-size:85%;">:download</span></a><br />■ Gucci Mane, DJ Drama, DJ Scream, DJ Holiday "The Cold War" <a href="http://www.mediafire.com/?x5chyjmn2wy" target="_new"><span style="font-size:85%;">:download</span></a><br />■ Gucci Mane × Mad Decent "Free Gucci" <a href="http://maddecent.com/freegucci/" target="_new"><span style="font-size:85%;">:download</span></a><br />■ Waka Flocka Flame, Trap-A-Holics & DJ Ace "Salute Me or Shoot Me" <a href="http://rapidshare.com/files/276500580/Waka_Flocka_Flame-Salute_Me_Or_Shoot_Me-_Bootleg_-2009-SIF.rar" target="_new"><span style="font-size:85%;">:download</span></a><br />■ Waka Flocka Flame "Official Trap Label" <a href="http://www.sendspace.com/file/f9sehp" target="_new"><span style="font-size:85%;">:download</span></a><br />■ Various Artists "ATL RMX" <a href="http://www.adultswim.com/music/atl-rmx/index.html" target="_new"><span style="font-size:85%;">:download</span></a><br /><img style="margin: 8px 0px 15px 0pt; float: left; cursor: pointer;" src="http://i220.photobucket.com/albums/dd173/debumegane/hr-2.png" border="0" /><br /><br /><a href="http://s220.photobucket.com/albums/dd173/debumegane/?action=view¤t=pillgibbsgsidetre.png" target="_blank"><img src="http://i220.photobucket.com/albums/dd173/debumegane/pillgibbsgsidetre.png" border="0" alt="Photobucket"></a><br clear="all">■ Pill, DJ Skee & The Empire "4075: The Refill" <a href="http://www.pill4180.com/4075TheRefillNODJ.zip" target="_new"><span style="font-size:85%;">:download</span></a><br />■ Freddie Gibbs, DJ Skee "Midwestgangstaboxframecadillacmuzik" <a href="http://www.zshare.net/download/64675581f61ba07e/" target="_new"><span style="font-size:85%;">:download</span></a><br />■ G-Side "Huntsville International" <a href="http://limelinx.com/files/b4c32a89f19512d3cf6556637b23b7f5" target="_new"><span style="font-size:85%;">:download</span></a><br />■ Playboy Tre "Liquor Store Mascot" <a href="http://www.megaupload.com/?d=LS4T1R04" target="_new"><span style="font-size:85%;">:download</span></a><br /> <br />07,8年のLil Wayneの猛攻から無名だったDrakeの成り上がり、Gucci Maneの果てしないプロップスの拡大まで、"サウスの音楽性+ミックステープの流通システム"の方程式は何にも欠かせないものになりつつある。それに伴い、有名無名の多くのプレイヤーがそのトレンドになだれこんだが、その中でも音楽性云々というより社会的テーマを意識的に作品に落とし込み、それをオーセンティックに表現できていたアーティスト4組をピックアップ。彼等は夢も希望も見出し難いどうしようもない状況の中でもがきつづける。莫大な予算が宇宙事業に注ぎこまれる町の片隅に放置されたゲットーに暮らすG-Side、映画館もショッピングモールも何もない廃墟と化した犯罪都市インディアナ州ゲイリーからInterscopeと契約したものの何もリリースできずに契約を解除されたFreddie Gibbs、T.I.等にフックを売りながら日銭を稼ぎ酒を飲みながら身の周りのやりきれないゲットーの様子をぼやく中年のPlayboy Tre、ヤク中の母親の死に直面しながらもどうにかドラッグディールで糊口をしのぎ知人の家を転々としてギリギリの生活を営むPill。ミックステープという媒体だからこそ辛うじて世間から注目を浴びるようになった四者四様のタフなプロダクションとハードなリリシズムはこの時代にこそ生まれる"クラシック"といっても過言ではない。<br /><br /><br /><a onblur="try {parent.deselectBloggerImageGracefully();} catch(e) {}" href="http://2.bp.blogspot.com/_hvnQVUZYThc/SW1tAzk_GzI/AAAAAAAAAMA/UmrNy4-a62k/s1600-h/usa.png"><img style="float:left; margin:0 10px 10px 0;cursor:pointer; cursor:hand;width: 42px; height: 21px;" src="http://2.bp.blogspot.com/_hvnQVUZYThc/SW1tAzk_GzI/AAAAAAAAAMA/UmrNy4-a62k/s400/usa.png" border="0" alt=""id="BLOGGER_PHOTO_ID_5291004997842967346" /></a><span style="font-size:90%;">関連ダウンロード</span><br /><br />■ Pill, DJ Burn One "4180: The Prescription" <a href="http://www.pill4180.com/4180ThePrescriptionNODJ.zip" target="_new"><span style="font-size:85%;">:download</span></a><br />■ Freddie Gibbs "The Miseducation of Freddie Gibbs" <a href="http://www.zshare.net/download/603291879cd9be3a/" target="_new"><span style="font-size:85%;">:download</span></a><br />■ Playboy Tre "Goodbye America" <a href="http://www.zshare.net/download/5151654806eaae70/" target="_new"><span style="font-size:85%;">:download</span></a><br />■ Rob Breezy "Huntsville Alabama 2 – The Return" <a href="http://www.southernhospitality.co.uk/blog/?p=4324" target="_new"><span style="font-size:85%;">:download</span></a><br /><br /><img style="margin: 8px 0px 15px 0pt; float: left; cursor: pointer;" src="http://i220.photobucket.com/albums/dd173/debumegane/hr-2.png" border="0" /><br /><br /><a onblur="try {parent.deselectBloggerImageGracefully();} catch(e) {}" href="http://3.bp.blogspot.com/_hvnQVUZYThc/S1b2ipksyVI/AAAAAAAAAOQ/KtrHfyxOZsI/s1600-h/drake_so_far_gone.png"><img style="float:left; margin:0 10px 10px 0;cursor:pointer; cursor:hand;width: 110px; height: 110px;" src="http://3.bp.blogspot.com/_hvnQVUZYThc/S1b2ipksyVI/AAAAAAAAAOQ/KtrHfyxOZsI/s320/drake_so_far_gone.png" border="0" alt=""id="BLOGGER_PHOTO_ID_5428797475977480530" /></a><br clear="all">■ Drake "So Far Gone" <span style="font-size:85%;">:download somewhere</span><br /><br />インターネット上でのミックステープ配布でシングルチャート2位までのし上がったDrakeは、その"軽さ"では他の誰より勝る。ラッパーとしてはKanye WestとLil Wayneの劣化コピー以上の何物でもないし、ヒップホップや音楽の造詣に詳しいとも思えない。それでも、このミックステープにおけるLykke Li、Peter Bjorn & John、Santogold、DJ ScrewといったトラックのセレクションやアルバムにSadeを呼びたいという発言、"Forever"での豪華なマイクリレー企画の発案に、アーティストぶらない立ち振る舞い、これら全ては、Drakeが「何を仕掛ければ他人から趣味が良いと褒められるか」を熟知しているが故のもの。知識やスキルなどといった"深さ"の部分ではない、センスとフットワークの"軽さ"こそが大衆の心を掴むものだということを理解しているDrakeは、輪郭のぼやけたパッドと鈍く持続する808キック/サブベースに包まれた"軽く"て優れたポップミュージックを産み落とし、フリーのミックステープという"軽い"媒体を使って短期間で世界中の人々へその音楽を認めさせた。<br /><br /><img style="margin: 8px 0px 15px 0pt; float: left; cursor: pointer;" src="http://i220.photobucket.com/albums/dd173/debumegane/hr-2.png" border="0" /><br /><br /><a onblur="try {parent.deselectBloggerImageGracefully();} catch(e) {}" href="http://4.bp.blogspot.com/_hvnQVUZYThc/S1b3BUJ6vsI/AAAAAAAAAOo/lkNeFLLS3hA/s1600-h/u2kaklocherry.png"><img style="float:left; margin:0 10px 10px 0;cursor:pointer; cursor:hand;width: 320px; height: 107px;" src="http://4.bp.blogspot.com/_hvnQVUZYThc/S1b3BUJ6vsI/AAAAAAAAAOo/lkNeFLLS3hA/s320/u2kaklocherry.png" border="0" alt=""id="BLOGGER_PHOTO_ID_5428798002803949250" /></a><br clear="all">■ U2K, DJ BUN "NIPHOP" <a href="http://www.myspace.com/u2k3156" target="_new"><span style="font-size:85%;">:listen</span></a><br />■ AKLO, DJ UWAY "A Day on the Way" <a href="http://www.mediafire.com/?tuzhfy0yhee" target="_new"><span style="font-size:85%;">:download</span></a><br />■ Cherry Brown, Lil'諭吉 "Supa Hypa Ultra Fres$shhh 3" <a href="http://www.megaupload.com/?d=QLVA9VJU" target="_new"><span style="font-size:85%;">:download</span></a><br /><br />大豊作だった08年は日本語ラップ作品のなかでもベストを絞り込むのが難しかったため、日本語ラップ枠を別に設けて10枚セレクトしたのだけども、09年は一転してこの3つで充分と判断。この3つに共通するのは現行のUSメインストリームに通じるプロダクションの新しさと、若い才能が+αのエネルギーとなって露出している点。リアル志向の作品も目新しさが無くなり、アーティスト個々の少しの差異に物語を見出さなければならなくなった09年は「深いリリックが書けて、共感できる内容になっている」かどうかよりも、「イケてるビートをチョイスして、カッコいいラップが載せられている」ことの方に目配せできている作品こそが新鮮に映るになった感がある。それは同時に日本のトラックメイカーの力量が問われるタームになってきたということでもあり、Hammer Da Hustler、Lil'諭吉、B.T.REOあたりの動向は10年もチェックしていきたい。微熱教授http://www.blogger.com/profile/15083927576509688324noreply@blogger.com5tag:blogger.com,1999:blog-26765657.post-27718194825192981652009-12-29T18:51:00.065+09:002010-01-03T16:54:40.877+09:00Futuristic whatever<a href="http://s220.photobucket.com/albums/dd173/debumegane/?action=view¤t=futuristiccopy.png" target="_blank"><img src="http://i220.photobucket.com/albums/dd173/debumegane/futuristiccopy.png" border="0" alt="Photobucket"></a><br /><br />数ヶ月前にTHE SOURCE日本版vol.2で、90年代後半のアンダーグラウンドヒップホップと現在のミックステープシーンの類似性についての小さい記事を書いた。インターネットとCD-Rの普及によって無名なアーティストがレーベルの力に頼らず自分達だけの力で作品をリリースしてリスナーから発見されていった過程と、オンラインストレージサイトやyoutubeから楽曲をばらまいてリスナーから注目を集めていく構図は"DIYでリスナーを獲得する"という部分でまったく一緒だが、「ヒップホップの主流から逸脱していく」という変態的な特性でも非常に似通っていて、ときどき既視感を覚える。<br /><br />90年代後半のLAアンダーグラウンドでは、グッドライフカフェ周辺のラッパーが他のMCのスタイルとの違いをつけるために、歌なのかラップなのかわからないような独自のフロウを1人1人身に着けていた。聴き取れないほどの早口スタイルや、つんのめるようなスタイル、ダラダラ気だるく漂うようなフロウ……それは、当時LAアンダーグラウンドシーンが実験精神にあふれ、才能のあるMCが数多くいたからこそ発展していたラップの型だった。同様にいま、多すぎるプレイヤーの中から埋没しないために個性に磨きをかけ、鼻歌とラップの境目のようなへばりつくフロウを練りあげ、かっこいいと蕩れるよりもキモいと眉をひそめるひとの方が多そうな変態的なラップ―「Futuristic Swag」や「Blackboy Whiteboy」と呼ばれるようなスタイルがアトランタから日々開発されている(LA Da Boommanの発声がBusdriverに似ているのも何らかのシンクロニシティだろう)。<br /><br />アンダーグラウンドヒップホップの中心的な存在だったANTICONは「黒人がつくるヒップホップではない、白人のヒップホップとはどういうものなのか?」という命題へ真正面から向き合っていた。彼らは白人が好んで聴くロックやポップミュージックに接近し、キックもスネアも無いフラットなドローンやノイズに鼻歌をのせたようなものまでもを"ヒップホップ"として成立させてみせ、オーセンティックな"ヒップホップ好き"とは異なる、オルタナティブな音楽を好む層までもをファンに取り込んだ。彼らがつくるヒップホップにはファンクネスが微塵も無いのだけども、実験精神が根底に流れる秀逸なアートとして成立していた。<br /><br />Yung L.A.やYoung Dro、そしてTravis Porter、Roscoe Dashに代表されるようなアトランタの一部のラッパーがつくるヒップホップにはANTICONと同様に過去の白人音楽が取り入れられている。しかし、彼らは白人文化に「Black Boy Swag, White Boy Tags」という謎のお題目をかかげ、ファッション/スタイルの方向からその音楽を吸収し、ストリートやクラブで鳴るパーティーミュージックに仕立てあげた。決して煌びやかな極彩色のネオンにはなりきれない、16bitのゲーム音楽のように歪に断片化されたファンシーなメロディーとループ。それはHudson MohawkeやNeil Landstrumm, Gemmyなどから芸術性を根こそぎ引き剥がしたようなダサさスレスレの肉感的なビートとなって、ストリートミュージックとしても説得力のある凶暴さと万人が楽しめるコミカルなエンターテイメント性までもをほとんど偶然に獲得できている。<br /><br />彼らがつくる音楽にはファンクネスというより、実験精神が頻繁に顔をのぞかせるという意味でANTICONとほとんど同じで、もはやヒップホップと呼べるものなのかも極めてあやしいが、ヒップホップ以外にカテゴライズできる場所がない。10年前のアンダーグラウンドシーンと現在のアトランタシーンの違いは、10年前にネットを利用していたアーティストは白人のインテリやナードばかりだったのに対し、いまネットを利用してプロップスを得ようと行動しているアーティストは郊外やゲットーにいるハスラー/ヤンキー/学生/中年親父などにそのバックグラウンドが変わった点だ。その相違点には、アーティスティックな音楽性に惹かれる"オルタナ音楽ファン"が拒絶反応を示す下水溝のように大きな隔たりがあるけども、その下水溝の先にはより猥雑でより尖ったユースカルチャーを追い求めるビートマグロな音楽ファンを魅了できる光が差し込んでいるように思える。<br /><img style="margin: 8px 0px 15px 0pt; float: left; cursor: pointer;" src="http://i220.photobucket.com/albums/dd173/debumegane/hr-2.png" border="0" /><br /><br /><a onblur="try {parent.deselectBloggerImageGracefully();} catch(e) {}" href="http://2.bp.blogspot.com/_hvnQVUZYThc/SW1tAzk_GzI/AAAAAAAAAMA/UmrNy4-a62k/s1600-h/usa.png"><img style="float:left; margin:0 10px 10px 0;cursor:pointer; cursor:hand;width: 42px; height: 21px;" src="http://2.bp.blogspot.com/_hvnQVUZYThc/SW1tAzk_GzI/AAAAAAAAAMA/UmrNy4-a62k/s400/usa.png" border="0" alt=""id="BLOGGER_PHOTO_ID_5291004997842967346" /></a>関連ダウンロード<br /><br />Rich Kids "Money Swag" <br /><a href="http://rapidshare.com/files/318245179/RK_-_MS.rar" target="_new">http://rapidshare.com/files/318245179/RK_-_MS.rar</a><br /><br />Travis Porter "I'm A Differenter 2"<br /><a href="http://www.megaupload.com/?d=X90GLTY4" target="_new">http://www.megaupload.com/?d=X90GLTY4</a><br /><br />J. Money "Mr. Futuristic"<br /><a href="http://www.zshare.net/download/5632106227e4ca10/" target="_new">http://www.zshare.net/download/5632106227e4ca10/</a><br /><br />Young Dro & Yung L.A. "Black Boy White Boy"<br /><a href="http://rapidshare.com/files/181900811/Young_Dro_And_Yung_LA-Black_Boy_White_Boy-_Bootleg_-2009-HMS_INT.rar" target="_new">http://rapidshare.com/files/181900811/....rar</a><br /><br />Yung L.A. "I Think I Can Sang"<br /><a href="http://limelinx.com/files/f1798b0e971b3896c581fec7af20a400" target="_new">http://limelinx.com/files/f1798b0e971b3896c581fec7af20a400</a><br /><br />J. Futuristic & Yung L.A. "Batman & Robin (Superhero Language)"<br /><a href="http://rapidshare.com/files/320886882/DJ_Spinz_J.Futuristic___Yung_L.A._-_Batman___Robin__Superhero_Language_.rar" target="_new">http://rapidshare.com/files/320886882/....rar</a><br /><br />Kirby Tha Hottest "I Got White Friends EP"<br /><a href="http://www.megaupload.com/?d=85PQGS8V" target="_new">http://www.megaupload.com/?d=85PQGS8V</a><br /><br />DJ Scream & K.E. presents LA Da BoomMan<br /><a href="http://www.mediafire.com/?mmkgtitwyjm" target="_new">http://www.mediafire.com/?mmkgtitwyjm</a><br /><br />LA Da BoomMan & Roscoe Dash "Southern Takeover"<br /><a href="http://www.sendspace.com/file/o1rvur" target="_new">http://www.sendspace.com/file/o1rvur</a><br /><br />Juney Boomdata "Futuristic South Stars"<br /><a href="http://www.sendspace.com/file/ntxmk9" target="_new">http://www.sendspace.com/file/ntxmk9</a>微熱教授http://www.blogger.com/profile/15083927576509688324noreply@blogger.com6tag:blogger.com,1999:blog-26765657.post-5434905712347923092009-12-02T19:28:00.026+09:002009-12-09T00:59:51.598+09:00Pill - 4075: The Refill<a onblur="try {parent.deselectBloggerImageGracefully();} catch(e) {}" href="http://1.bp.blogspot.com/_hvnQVUZYThc/Sx53IJ7cgEI/AAAAAAAAAOA/o3TlTZpalj4/s1600-h/4075.png"><img style="float:left; margin:0 10px 10px 0;cursor:pointer; cursor:hand;width: 120px; height: 120px;" src="http://1.bp.blogspot.com/_hvnQVUZYThc/Sx53IJ7cgEI/AAAAAAAAAOA/o3TlTZpalj4/s320/4075.png" border="0" alt=""id="BLOGGER_PHOTO_ID_5412894784133824578" /></a><br /><br /><br /><br /><br /><a href="http://www.pill4180.com/4075TheRefillNODJ.zip" target="_new"><span style="font-size:85%;">download here</span></a><br /><br clear="all">景気が悪くなるとヒップホップが活性化する――その言い伝えが本当ならば、黒人若年層の失業率が34.5%となった現在のアメリカのヒップホップは生気に満ち溢れているはずだ。しかし、景気の悪化で音楽がまったく売れなくなってしまった結果、商業レーベルは「確実に売れる安全な」アーティストの作品を欲し、ヒット曲の存在しないアーティストはアルバムを発売することさえ許されなくなった。気がつけば、ストリートからトレンドを発展させてヒップホップの"若さ"を保つ好循環は断ち切られ、向上心を捨てた豪華客演陣に頼りきりの妥協の産物がチャートの上位を占めるようになっていた。Jay-ZはAlicia Keysと手を組み「ニューヨークはお前を輝かせる」という観光PRのような曲を1位に送り込み、Rick Rossは"Deeper Than Rap"で童子-Tの"12 Love Stories"に匹敵する己の存在感を無に帰した着うたラッパーの完成形を見せ、Gucci Maneはファンの誰もが望んでいないUsherやKeyshia Coleとの共演を強制させられ、アルバムというフォーマットはアーティストの評価を固めるものではなく金を得るためだけの道具に成り下がった。<br /><br />かくして、才能を持った数多のアーティストが作品を流通させる術を失った。せっかく曲を作っても、きちんと広告を打ち、パッケージを売り出してくれるレーベルは無い。そうすると彼らは、何よりもまずは自分の名前を売るためにネット上にフリーの楽曲をアップロードするようになった。無料で自分の曲を切り売りし、自分の存在を一人でも多くの人に認めてもらうことが最優先の課題となった。時代のトレンドとリスナーの欲求を貪欲に模索し、コネクションを駆使しながらいち早く自分なりの新たなスタイルを発信する。自分が作り上げた新しいスタイルがうまいことリスナーにキャッチされれば、"次のアクション"がようやく取れるようになる。リスナーとアーティストの新陳代謝が狭い(しかしオープンな)オンラインストレージサイトで活発に行われるようになり、当然、細胞が腐り落ちた商業シーンから発表される作品よりも、高いクリエイティビティとクオリティを持った作品がネット上にあふれはじめた。<br /><br />たとえば、コネクションと初期衝動を武器にクランクを暴走させたWaka Flocka。Yung L.A.とJ. Futuristic(J. Money)はレトロゲームじみたカラフルなポルタメントを猥雑にたゆたい、Rich Kidsなどのさらに若い世代がその後を追う。『景気が悪くなるとヒップホップが活性化する』、確かにヒップホップの更新は音楽"業界"からは途絶えてしまったが、貧困層のパーティーミュージックは地元とネットという水面下で圧倒的な物量でもってヒップホップを少しずつ更新しつづけている。毎日のように新たなヴァースが流出/発表されるGucci Maneの魅力は、正規のアルバムを聴いただけでは10%もつかめないのだ。<br /><br />そして、ただのパーティーミュージックではない社会的な視点と高い美意識を持った音楽を作っているのが、Pillやその事実上の相方となっているFreddie Gibbs、Playboy Tre、G-Sideなどだ。見捨てられたフッドの姿をそのまま映した"Trap Goin Ham"のPVで一躍有名になったPillは、アトランタの他のラッパーに比べると非常に保守的だと言っていいだろう。サンプリングを主体としたオリジナルのトラックに、Geto BoysやNas、Kanye Westなどのトラックを織り混ぜ、そのラップスタイルにはTalib Kweliのような端整さ、MJGのようなラフさ、T.I.のようなしなやかさが垣間見られる。Pillは、90年代サウス/NYから00年代ロカフェラ/トラップミュージックまで、ここ20年のヒップホップの"流れ"を一直線につなぎ、その魅力をあまさず包み込む。<br /><br />ヒップホップの伝統を継承しつつも現代のスタイルを体現するPillにとって、ヒップホップと社会/生活(ストリート)の問題は切っても切り離すことはできない。幼少のころから父親はおらず、母親はクラックに溺れて死に至った。しかし、それでも自分の腹を満たすため、明日の生活のために穴の開いた靴でドラッグを売り歩き、寝床を求めて拳から血が出るまで友人知人の家の扉をノックしつづける。彼にしてみれば90年代の"ヒップホップの黄金期"と呼ばれる時代と、目の前に広がる景色は何も変わっていない。<br /><br />ビート、ラップ、詩――商業の流通から消え去った現代のヒップホップの姿が地元とネットという水面下で生きながらえている。下のPillの姿とJay-Zの姿をあわせて見れば一目瞭然だろう。<br /><br /><object width="444" height="276"><param name="movie" value="http://www.youtube.com/v/se_4-k0RCwE&hl=ja_JP&fs=1&color1=0x3a3a3a&color2=0x999999"></param><param name="allowFullScreen" value="true"></param><param name="allowscriptaccess" value="always"></param><embed src="http://www.youtube.com/v/se_4-k0RCwE&hl=ja_JP&fs=1&color1=0x3a3a3a&color2=0x999999" type="application/x-shockwave-flash" allowscriptaccess="always" allowfullscreen="true" width="444" height="276"></embed></object><br /><br /><object width="444" height="276"><param name="movie" value="http://www.youtube.com/v/0UjsXo9l6I8&hl=ja_JP&fs=1&color1=0x3a3a3a&color2=0x999999"></param><param name="allowFullScreen" value="true"></param><param name="allowscriptaccess" value="always"></param><embed src="http://www.youtube.com/v/0UjsXo9l6I8&hl=ja_JP&fs=1&color1=0x3a3a3a&color2=0x999999" type="application/x-shockwave-flash" allowscriptaccess="always" allowfullscreen="true" width="444" height="276"></embed></object>微熱教授http://www.blogger.com/profile/15083927576509688324noreply@blogger.com9