Friday, January 04, 2013

2012best ~ やる気のないコメント入り

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・Kendrick Lamar / Good Kid, M.A.A.D City
・Schoolboy Q / Habits & Contradictions
・Joey Bada$$ / 1999
・SpaceGhostPurrp / Mysterious Phonk
・Future / Pluto
・Chief Keef / Finally Rich
・Iamsu! / Kilt
・TREE / Sunday School
・Ty Dolla $ign / Beach Hou$e
・TNGHT / EP

2012年はKendrick Lamar『Good Kid, M.A.A.D City』、Schoolboy Q『Habits & Contradictions』、Ab-Soul『Control System』とBlack Hippyの活躍が目についた年でした。

クラウドラップ方面にもリーチした2011年リリースの『Section.80』の話題も冷めやらないなか、ケンドリックのストリートライフから彼の思想を反映させた『Good Kid, M.A.A.D City』が名実共に2012年の顔となるべき作品なのではないでしょうか。彼のストラグルライフがいかに巧みにアルバムに描かれているかはYAPPARI HIPHOPに秀逸なまとめがあるのでこちらへ

LAを拠点としたギャングスタラップの延長にあるBlack Hippy勢の楽曲が非常にクラシカルな方向に落ち着いていることにもあらわれているとおり、サウンド面で聴かせるよりはイーストコーストマナーに則ったオーセンティックで"ラップを聴かせる"ヒップホップに揺り戻っている印象を残しました。

そして、90年代~00年代のアンダーグラウンドヒップホップ回帰という面では、Reflection Eternalの新作だと偽っても違和感がなさそうなRoc Marciano『Reloaded』や17歳注目株Joey Bada$$の『1999』が象徴的。『REV MAG vol.2』の"ヒップホップ時評"では、パープが自分の生まれた年まで遡って影響を受けたのであろうラッパー/プロデューサのタイトルに関する言及がありますが、Lewis ParkerFreddie Joachimといったマニアックにも程があるビートジャックから垣間見れるJoey Bada$$の原点回帰の視点はSpaceGhostPurrpのソレとまったく同じものだと言えるでしょう。

つまり、記事の言葉を拝借すると"リアルタイムで聴いたからどうこうだとか、当時の評価がどうこうではなく、例えば、リリースから10年後に初めて聴いても、イイと思ったものは、”一般的な”(コレもまた曖昧ではあるけれど)評価なんてまったく関係なく、イイわけだし、そこから強い刺激やインスピレーションを受けることがあることを、自分の音楽を通じて正直に打ち明けている"ということで、更に言えばリバイバルにはパープにしろジョーイにしろ彼ら"若いアーティスト"が過去の音源から受け取るインスピレーションが欠かせないものだと思います。また、この一連の流れで2013年にはアンダーグラウンドヒップホップに注目が戻る可能性も少なからずあるような気がします。

一方、Future『Pluto』、Chief Keef『Finally Rich』、2 Chainz『Based On A T.R.U. Story』あたりはそれまでミックステープで支持を集めていたラッパーのオフィシャルリリースとなっていますが、音が聴き易く整理されてそれまでの荒削りでDIYならではの生々しい迫力が失われているように感じられます。しかし、Chief Keefの『Finally Rich』にはプリミティブな音を詰め合わせて砂利道をゴリゴリ進んでいくようなそれまでのミックステープより一匙のフューチャリスティックなビートを絡めて立体的に組み合わせることで、Lil Durk、King Louieといった同郷の他のラッパー達の作品とは一線を画す独特な出来映えになっているし(それでも"Laughin' To The Bank"のセンスはよくわからないが)、Future『Pluto』もDungeon Family直系のプロダクションに擦り寄ることでサウス系ギャングスタラップのフレイヴァ漂わせつつもOutKastの作品群を髣髴とさせるような複雑さと優美さを備えたアルバムになりました。

2012Bestアルバムのリストではオフィシャルリリースが半数以上を占めますが、ミックステープにあったラッパーの魅力を損なわなずに1ステップ押し上げるようなメジャー方面のプロダクションが見れるようになってきたことが2012年のひとつの特色とも言えるかもしれません。

2013年へ飛躍を感じさせる新進気鋭のアーティストは前述したChief Keef、Joey Bada$$の他にはベイエリアからE-40やWiz Khalifaにもフィーチャーされたハイフィシーンの新人Iamsu! 『Kilt』、WeekndからDrakeに回帰したかのような歌物ミックステープをドロップしたTy Dolla $ign 『Beach Hou$e』、シカゴシーンからはプロデュースからラップまで器用にこなし土臭い"SOUL TRAP"なるものをクリエイトしているTREE 『Sunday School』を。

日本のヒップホップのベストはtogetterにコメント含めてまとめてもらったのでこちらから。それでは2013年も宜しくお願いします。

3 comments:

Anonymous said...

いつも楽しく&興味深く拝見させていただいてます。

少し気になることがありましてコメントさせていただきます。【微熱王子氏2012年日本語ラップまとめ】に『① 日本のヒップホップのモードを変えた作品である』とありました。

今年は残念ながら該当する作品は無かったようですが、過去に微熱王子さんが①に該当すると思う作品はどのようなものがありますか?個人的興味の質問で申し訳ありません。お暇でしたらお答えいただけると大変ありがたいです。

今年も微熱王子さんご活躍を楽しみにしています


↑とは全然関係ないですが今回の記事、前作を大絶賛していたEl-P関係(Killer Mikeとか)がなくて「ムム!」と思いましたw

微熱教授 said...

コメント気づかず、放置してました。すみません。

①に該当するものは、例えばシーダの『花と雨』ですね。他のラッパーがその作品の持つ流れに追従していくような作品です。ただ、そういう意味では、こないだレビューを書いた粗悪ビーツやtrinitytiby1の作品は、アクロやチェリーのミックステープのように、結果的に今後のモードになりそうな作品なので①に該当するかもしれません。

エルピーは入れても良かったかもですね。エイサップロッキーも良かったし、日本でもオムスビーツのようにDef Jux系のプロダクションを想起させるものがあって違和感なかったので、リストには入っていないけど実はトレンドかもしれません。

微熱教授 said...

×エイサップロッキー
○エイソップロック

素で間違えました。。w