Futuristic whatever
数ヶ月前にTHE SOURCE日本版vol.2で、90年代後半のアンダーグラウンドヒップホップと現在のミックステープシーンの類似性についての小さい記事を書いた。インターネットとCD-Rの普及によって無名なアーティストがレーベルの力に頼らず自分達だけの力で作品をリリースしてリスナーから発見されていった過程と、オンラインストレージサイトやyoutubeから楽曲をばらまいてリスナーから注目を集めていく構図は"DIYでリスナーを獲得する"という部分でまったく一緒だが、「ヒップホップの主流から逸脱していく」という変態的な特性でも非常に似通っていて、ときどき既視感を覚える。
90年代後半のLAアンダーグラウンドでは、グッドライフカフェ周辺のラッパーが他のMCのスタイルとの違いをつけるために、歌なのかラップなのかわからないような独自のフロウを1人1人身に着けていた。聴き取れないほどの早口スタイルや、つんのめるようなスタイル、ダラダラ気だるく漂うようなフロウ……それは、当時LAアンダーグラウンドシーンが実験精神にあふれ、才能のあるMCが数多くいたからこそ発展していたラップの型だった。同様にいま、多すぎるプレイヤーの中から埋没しないために個性に磨きをかけ、鼻歌とラップの境目のようなへばりつくフロウを練りあげ、かっこいいと蕩れるよりもキモいと眉をひそめるひとの方が多そうな変態的なラップ―「Futuristic Swag」や「Blackboy Whiteboy」と呼ばれるようなスタイルがアトランタから日々開発されている(LA Da Boommanの発声がBusdriverに似ているのも何らかのシンクロニシティだろう)。
アンダーグラウンドヒップホップの中心的な存在だったANTICONは「黒人がつくるヒップホップではない、白人のヒップホップとはどういうものなのか?」という命題へ真正面から向き合っていた。彼らは白人が好んで聴くロックやポップミュージックに接近し、キックもスネアも無いフラットなドローンやノイズに鼻歌をのせたようなものまでもを"ヒップホップ"として成立させてみせ、オーセンティックな"ヒップホップ好き"とは異なる、オルタナティブな音楽を好む層までもをファンに取り込んだ。彼らがつくるヒップホップにはファンクネスが微塵も無いのだけども、実験精神が根底に流れる秀逸なアートとして成立していた。
Yung L.A.やYoung Dro、そしてTravis Porter、Roscoe Dashに代表されるようなアトランタの一部のラッパーがつくるヒップホップにはANTICONと同様に過去の白人音楽が取り入れられている。しかし、彼らは白人文化に「Black Boy Swag, White Boy Tags」という謎のお題目をかかげ、ファッション/スタイルの方向からその音楽を吸収し、ストリートやクラブで鳴るパーティーミュージックに仕立てあげた。決して煌びやかな極彩色のネオンにはなりきれない、16bitのゲーム音楽のように歪に断片化されたファンシーなメロディーとループ。それはHudson MohawkeやNeil Landstrumm, Gemmyなどから芸術性を根こそぎ引き剥がしたようなダサさスレスレの肉感的なビートとなって、ストリートミュージックとしても説得力のある凶暴さと万人が楽しめるコミカルなエンターテイメント性までもをほとんど偶然に獲得できている。
彼らがつくる音楽にはファンクネスというより、実験精神が頻繁に顔をのぞかせるという意味でANTICONとほとんど同じで、もはやヒップホップと呼べるものなのかも極めてあやしいが、ヒップホップ以外にカテゴライズできる場所がない。10年前のアンダーグラウンドシーンと現在のアトランタシーンの違いは、10年前にネットを利用していたアーティストは白人のインテリやナードばかりだったのに対し、いまネットを利用してプロップスを得ようと行動しているアーティストは郊外やゲットーにいるハスラー/ヤンキー/学生/中年親父などにそのバックグラウンドが変わった点だ。その相違点には、アーティスティックな音楽性に惹かれる"オルタナ音楽ファン"が拒絶反応を示す下水溝のように大きな隔たりがあるけども、その下水溝の先にはより猥雑でより尖ったユースカルチャーを追い求めるビートマグロな音楽ファンを魅了できる光が差し込んでいるように思える。
関連ダウンロード
Rich Kids "Money Swag"
http://rapidshare.com/files/318245179/RK_-_MS.rar
Travis Porter "I'm A Differenter 2"
http://www.megaupload.com/?d=X90GLTY4
J. Money "Mr. Futuristic"
http://www.zshare.net/download/5632106227e4ca10/
Young Dro & Yung L.A. "Black Boy White Boy"
http://rapidshare.com/files/181900811/....rar
Yung L.A. "I Think I Can Sang"
http://limelinx.com/files/f1798b0e971b3896c581fec7af20a400
J. Futuristic & Yung L.A. "Batman & Robin (Superhero Language)"
http://rapidshare.com/files/320886882/....rar
Kirby Tha Hottest "I Got White Friends EP"
http://www.megaupload.com/?d=85PQGS8V
DJ Scream & K.E. presents LA Da BoomMan
http://www.mediafire.com/?mmkgtitwyjm
LA Da BoomMan & Roscoe Dash "Southern Takeover"
http://www.sendspace.com/file/o1rvur
Juney Boomdata "Futuristic South Stars"
http://www.sendspace.com/file/ntxmk9
6 comments:
Rich Kidsってボンボンって意味なんですかね?
ボンボン…なんでしょうねぇ。
ちなみに彼等はいろんな学校の一番イケてる人たちが集まって結成された超リア充グループらしいです。ラップの下手さはご愛嬌。
ヒップスター以降のネットラップシーンを追えてなかったのでこのような企画は有り難いです。
こういうのは商業紙では取りあげられないですし。
Rich Kidsって最初Master Pの息子が昔やってたグループかと思いました。。
もっとUSのヒップホップは取り上げたいんですけどね。。面白いこと書けそうに無くてなかなか書けないのです。
似たような名前だとRich Boyとかいますね。
Master Pの息子達のグループはRich Boyzですね!
情報どうもです!
Rich Boyzって全員親類なんですね。Amazonレビューではじめて知りましたw
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