Friday, October 12, 2007

Soulja Boy - Souljaboytellem.com






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曲によってダンスの振り付けが決まっていて、「そのダンスの面白いから♪」というアホみたいな理由だけで曲がガンガン売れていくシーンを持つアメリカっていう国はやっぱり単純で、ある意味では健全なんだと思う。踊るために音楽があるのか? 音楽があるから踊るのか? などと部屋の片隅で悶々と考える根暗な人種はきっと0.001%ほどもいないのだろう。日本に生まれて本当に助かった。

それにしても、そんなアメリカの懐の広さと腰の軽さを映し出した風潮もしばらく経つと、その熱すぎる「ダンス欲求」のみでシーンが動くようになるのだから恐れ入る。奇抜な発想で「みんなが聴いたことがない」ビートを作るためだけに延々と音をこねくり回しつづける南部ヒップホップシーンで、今そのライン上に位置するはずの若手トラックメイカーが「ダンス熱」に突き動かされて、生みの親を殺すような音を半ば無意識的にクリエイトしているのだ。そして「ダンスがカッコいいから♪」というダンサー達の低偏差値な回答によって、ヒップホップどころか音楽ですらないようなものが次々と産み落とされ、流行りのポップミュージックとして瞬間的に消費されている。まるでお笑い芸人界のようにシビアな世界がここにあった。

その弱肉強食の過酷な生存競争の中で、みごとに頭のネジがふっとんで極限までおかしなことになったのがGotty Boi Chrisの"Dip Low"だけど、そこで代表となっているイケメン・ダンサー/トラックメイカー/ラッパーのSoulja Boy君のアルバムが更にあっけらかんとぶっ飛んでいたので、彼のあまりの若さ(17歳)も手伝って、大いに驚き、ぶっ飛んだ。単純すぎてもうアバンギャルドなのかどうかさえ定かでないSoulja Boy君の「あばら屋ビート」は、ミドルスクールやボルチモアのそれと似たプリミティブな凶暴ささえも持ち合わせている。たとえば、高音と低音を極端に「大げさ」にして強迫的に鳴らすアイデアはTodd TerryとKenny Dopeがその昔Kaosの"Court's in Session"で提示していたものだし、ありえないくらいに簡素で単調なループをひたすら反復させ続ける大胆さはRod Leeのそれをも凌ぐ。小難しいことは抜きにして、快楽的な音色だけを抜粋し、全てを大げさにでっち上げた「パンク魂」炸裂のビートだ。

荒削りで、単純で、エネルギッシュ。正にアメリカらしい「パワー」を持つSoulja Boy君がこれから先に数多のミドルスクールのラッパーの如く消えてしまうか? その飽くなき「ダンス欲求」をクリエイティブな方向に上手く繋げることができるか? これから部屋の片隅で悶々と考えてみようと思う。

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