Thursday, November 19, 2009

U2K - NIPHOP & AKLO - A DAY ON THE WAY





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「HIP HOPで一番大切なことは目新しくいることなんだ。新しいなにを買ったとか、まだ誰も聴いたことのない新しいアーティストの曲をiPodに入れて聴いてるとか、そういうことが大事だろ? 逆に言うと、このビジネスで生き残るためには常に誰かのiPodに入れてもらわなくちゃいけないんだ。それには、iPod に入れたいと思わせるだけの価値あるものを作り続けなければいけない」(Jay-Zインタビュー

サイコロ一家のU2Kは自身のMIX CDで、"日本語ラップ"ではない新しい概念"NIP HOP"を旗揚げし、新しい時代のラップとビートのスタイルを模索する。Remmah the Dopest Drug(=Hammer Da Hustler)等のアンバランスだけども緻密なビートと、ルーズだけども端整なラップ、そしてほとんどがヘイター攻撃と"NIP HOP"ボーストという無意味なリリックからは、SEEDAの"エモさ"の部分ではなく"スワッグ"の方に大きく影響を受けていることがわかるという意味で、「リアルな内容の作品=優れた作品」という価値観から外れた、まったく別の価値観を育む世代が現れつつあることを予感させる。新しい概念を立ち上げ、新しいスタイルを模索し、新しい世代である自分を誇るU2Kの価値観とはつまり、「リリックがリアルであること」がヒップホップなのではなく、「新しいスワッグを持っていること」がヒップホップなのだという考えが基点にある。"ラップする内容(叙情性)"ではなく、"スタイルやファッション(叙事性)"にこそヒップホップの本質を見出す。

この11月にフリーのミックステープ"A DAY ON THE WAY"をドロップしたAKLOも同じような価値観を持つ。SEEDAとVerbal両者のフロウを混ぜ合わせたようなラップスタイル。Jay-ZやT.I.やRick RossやDrakeの最新曲/ヒット曲の上でラップしテーマを再解釈して自分の曲に仕立てあげてしまう姿勢。インテリっぽさを漂わせたオルタナティブ方面での経歴。あらゆる面で胡散臭さが鼻につくが、それでも、Hammer Da Hustlerのビートと、AKLO自身の「常にアップデートされる音楽にこそ未来がある」というヒップホップ観がそのイビツさを埋め合わせ、"A DAY ON THE WAY"にUSメインストリームに通じた"スワッグ"を付与する。「アメリカのヒップホップは確かに面白いよ 漫画みたいにいつもアップデートされてさ "やべぇ次、超楽しみ!"みたいな そんな状況を東京でも作っていこうぜ you know what it is man, 闘ってこうぜ i'm a fighter and i'm on fire / 世界中どこ行ったってカッコいいやつはカッコいい 昔カッコよかったやつが今もカッコいいとは限んねえ いつも頭ん中には追求心」("Fighter")

リリックの内容に意味を見出す「リアル志向」の流れから、アップデートされるスタイルを追い求める「ファッション/スワッグ志向」の流れへ。叙情的でリアルな楽曲がリスナーの共感を集めるのに対し、目新しさとカッコ良さを兼ね揃えた楽曲はリスナーへ刺激を与える。

もし、これまで「リアル志向」な楽曲をつくるためにラッパー達が自分の経験を削って表現していたというのであれば、「ファッション/スワッグ志向」のラッパー達は常にアンテナを張って最新のスタイルをキャッチし、自分のスタイルに吸収して曲をつくることになるだろう。US/日本にかかわらず様々な国で発生する流行を自分流に解釈して、新しいスタイルや文脈を常に更新し続ける。カッコよくて面白い物が世の中に発信されてさえいれば表現のネタは永遠に続く。流行のサイクルの早さと共に生存競争も激しくなるかもしれないが、新陳代謝の無いジャンルはいずれ途絶える。「カッコいいは正義!」という彼らの価値観は大変タフなものだけど、これからのジャンル(文脈)を刺激的なものに保つ健全なものには違いない。

「We are yeah i said it we are 新たなmovement 新たな時代 媚売らねえぜ cause i'm just amazin」("Run This Town")